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 気がつくとあの老人が四十歳くらいのスーツ姿の男と遥の側でもめていた。  老人が言いつのる。 「あんたが色づかせなければ意味がない。あんたが自分の体と目で確かめなければ」 「この子はそんな状態ではないでしょう」 「そんなことわかっとる。だが、わしが針を持てる間でなければ、完成はせん。あんたはすべてを無に帰すおつもりか。この子にこれを背負わせた責任は、すべて我ら一族にあるのだ。その長たるあんたには中途半端は許されん。この子の亡くなったお父上にも申し訳が立たん」  男が低い声で言った。 「私には経験がありません」 「この子だとて同じだ。無垢だからこそ選んだのだ。今更四の五の言うな。――仕度をしろ」 『何をする気だ?!』  動かせぬ舌で遥が叫ぶと、二人が遥を見た。そのどちらも痛ましげな目をしている。  遥の中で何かが危険だと叫んでいた。しかし、頭はやはりもうろうとしていて、本来自由に動くはずの手指すら重い。  駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ!  老人から命じられた弟子達が遥の回りに寄ってきたのがわかった。そして遥の足首の拘束を解き、下腹から下の台が取り払われた。  いきなり足の角度が変わって苦痛が走った。  上半身は相変わらず残された台の上に縛り付けられたままだ。  細長い黒い布が目に当てられ、頭の後ろで結ばれたのがわかった。 『やめろ!』  遥の叫びは一切無視される。  誰かが遥のさらされている尻に手をかけ、開いた。  遥がぎょっとする間もなく、細い管のようなものが肛門に差し込まれ、温められた何らかの液体がたっぷりと体内へ注ぎ込まれた。  体が更に少し重くなった気がした。力が抜けたようなその状態で、注がれた何かを垂れ流すのはいやで、必死に腹から尻に力を込める。  その遥の努力を嘲笑うかのように、何かがぷつりと突っ込まれた。その異物が指らしいとわかった瞬間、屈辱と羞恥に体がかっと熱くなった。  指は円を描いて締まりのきつい肛門を開こうとする。すると中へ注がれたものがとろりとゆっくり腿へ伝いおちる。その不快感に身を震わせた時、指先が体内でうごめき始めた。  やめろ!  声が出なかった。  ぐにぐにと生き物のごとく指が固く閉じようとする輪の奥を探っている。  遥は更に恐ろしいことに気がついた。先ほどの液体が触れた部分が熱いのだ。体内から、垂れた腿まで、ぞわぞわと何かが変わり始めている。  何だこれは?  なぜ体が熱くなっているんだ?  指が増やされ、とろみのついた液体が更に注がれる。  思わず尻がうごめいてしまい、ショックを受けた。中をこねるように這い回る指が気持ちいいのだ。  注ぎ込まれた粘液に原因があるのは察しがついた。  ちくしょう!  ひどい屈辱だった。それでいながら、息が乱れ始めている。なんとか猿ぐつわをかみしめ、こぼれそうになる熱い吐声を必死に食い止める。  指はついに三本に増やされ、広げられた後孔の輪は熱く燃えるような体内に冷たい空気をもたらしていた。

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