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クラブ「COSMIC TUNE」・4

「オープンは何時からです?」 「午後九時だ。で、朝五時に終わる」 「そんな時間に騒いでて、皆いつ寝るんだか」 「寝ないとハイになるからな、普段の嫌なことは全部忘れて、週に一度くらいスカッとしたいんじゃねえの」 「理解できないな……」 「まあそう言わずに。取り敢えず今からぼちぼち行って、向こうで色々説明するよ」  そうして事務所を出た俺達は、ビルの裏手にある駐車場へ行って理人の車に乗り込んだ。左ハンドルの外車を右ハンドルにカスタマイズしたというややこしい大型の車は、理人が命の次に大事にしているものだ。当然車内は禁煙だから、沈黙がやけに気になってしまう。 「理人」 「うん?」 「クラブって、どういう目的で行く所なんですか?」 「結構一人で来る奴もいるんだぜ。曲に乗って体揺らしてるだけでも楽しいし、踊らないならソファで飲んだりすればいい。そうこうしてるうちに自然と知り合いもできるしさ」  そんな場所に一人で行くなんて罰ゲーム以外の何物でもない。そもそも俺は知らない人間が苦手だから、自分から友達を増やそうなんて考えたことすらなかった。  俺が人見知りをするのは、相手の心が読めてしまうこの能力のせいだけではない。 昔から集団に溶け込めずいつも隅の方でぼんやりしていた。たまに誰かから話しかけられ、言葉に詰まって恥ずかしい思いをすることもしょっちゅうだった。それで益々、他人を避けるようになる。物心ついた時からずっとだ。 「煌夜くらい美人だったら、あちこちから声かけられちまうんじゃねえかな」 「いくら何でもそういう場所で男をナンパする男なんていないでしょ」 「大丈夫、いても俺がきっちり警護してやる」  笑いながら言われても説得力がない。かと言って真面目な顔で言われても困ってしまうが。 とにかく、少し見て帰るだけ。俺はそう心に決めて窓の外へ視線をずらした。

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