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毒・5
「上質なシルクのシーツへ裸に剥いたお前を転がして、この肌を存分に愛でてやりたい。浮いた鎖骨に舌を這わせて、桜色の乳首をたっぷりと舐ってやりたい。……臍から下を丹念に撫でて、お前の精を含み、嚥下してやろう」
「……遠慮しておきます。俺にそんな価値はありません」
「その後で時間をかけて、俺のモノを使ってやる。何度もお前の中を突き刺して引き抜いて、また突き刺して――最後にはお前の腹に俺の優秀な子種をぶちまける」
「孕みませんよ、俺は」
とんだ変態野郎だ。悠吾は俺の胸元に唇を押し付けながら、自分の台詞に興奮しているようだった。弄る手のひらは熱く、息が荒くなっている。
理人は俺を凝視していた。悠吾に対する殺気を色濃くさせながら、感情のないその顔で俺に語り掛けていた。
――聞こえるか、煌夜。聞こえてるだろ。
――嫌なら何か合図を出せ。俺が何とかしてやる。
声に出さず、理人は何度も繰り返していた。膝の上で握りしめた拳を震わせ、見開いた目を獣のようにぎらつかせ、噛んだ唇の端から血を滲ませながら。
――煌夜。頼む。何か反応してくれ。
俺に未来は見えないが、理人の考えていることなら何となく想像がつく。理人はこの場で殺されても、或いは殺されるよりも惨たらしい目に遭わされても、俺が乞えば何も考えず悠吾の顔面に拳を叩き付けるつもりだ。
例えその拳が届く前に、背後にいる黒服達の銃が火を噴くと分かっていても。
理人はそういう男なのだ。目先のことしか考えられない直情型の破滅型。だからこそ俺は理人の「第三の目」として、彼に別の道を示してやらなければならない。
「お前の肌は白く輝いて見える。含んだらさぞ美味いだろうな」
悠吾の指先が胸の中央から臍の辺りへ移動し、理人が自分の右拳を左手で押さえた。
……悠吾の背後で、黒服の男が腕時計にちらりと視線を落とす。
「声を出してもいいぞ」
「悠吾さん」
「っ、……」
俺がその名を呼んだことで、臨戦態勢にあった理人の体がピクリと反応する。
「どうした?」
俺は自分の肌に触れていた悠吾の手に人差し指を添え、ゆっくりと、拒絶ではなく焦らす動作でそこから引き剥がした。
「生憎ですが、今日の俺は仕事としてここに来ています。まだやらなければならないことがありますので、日を改めて頂けると有難いのですが」
「今のお前の仕事は、ここに居ることだ」
「光栄です。でも悠吾さん、俺のせいで取り返しのつかないことになったら、悠吾さんにもご迷惑がかかると思うので」
悠吾が俺の目を間近に覗き込む。
「悠吾さんが純粋に俺を欲してくれているのは分かります」
「ああ、俺は好きな時に好きな物を食う主義だからな」
「分かりますよ、俺もあなたと同じタイプです。波長は合うけど、お互い交じり合えない存在だと思いませんか」
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