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壮真理人の葛藤・3

「んっ、ん――悠吾様、ぁ……」  目の前に俺がいるのも気にせず、悠吾にパンツの中を弄られている青年が身をくねらせながら声をあげている。左側の青年も嬉しそうに笑いながら悠吾の肩に頭を乗せ、相方の痴態を見つめていた。 「もちろん説明はしてあるさ」  悠吾が脚を組み、こんな場所でも相変わらずソファの後ろに立っていた黒服に向けて片手を挙げた。  背後から渡された冷絞(つめしぼ)で体液塗れの手を拭き、次いで渡されたタブレットを操作し始める悠吾。 「ほれ、これが契約内容」  タブレットの画面には『一夜の商品となる貴方へ』というタイトルが表示されている。  一晩限りの仕事だということ、落札金額の一割が自分のマージンになること、落札者には絶対服従すること、ただし命の危険を感じた時にはすぐに柳田グループの専属SPが救出に向かうため安心して良いということ。  他にも様々な注意事項が書かれているが、文書の至る所に『安心して』という言葉が散りばめられていて、読んでいるうちに本当に安全で簡単な仕事のように思えてくる。 「契約違反はしねえ。今回のはマジで商品の身の安全を第一にしてるからな」  そうでもしないと、「本番」で上質な商品が集まらないからだ。俺はタブレットを悠吾に返し、「商品」についての説明を求めた。 「今回は全部で十人だ。ウチの傘下にある売り専から引っ張ってくる奴もいるし、組員の愛人もいる。スカウトしたのはこの辺で、後は金に困って志願してきた素人の奴もいるぞ。もちろん、全員契約内容には同意してる。署名もしてもらったしな」 「相場は幾らなんですか」 「天井はねえが……たった一晩の仕事だ、一本まではいかねえだろ。せいぜい五百、六百くらいじゃねえの」  競りには詳しくないが、恐らくそんな額では終わらないだろう。契約書には「落札者には絶対服従」とあった。すなわち、命に危険が及ばなければ何をしても良いということなのだ。ジジイ共の汚らしい玉をしゃぶらされる程度じゃ済まされない。  命さえ無事ならば、何度気を失い、何度許しを乞うても、誰も助けになんて来ない――。 「落札後はどこへ移動するんですか」 「ウチでプレイルームを用意している。一部屋が二十畳、ベッドとシャワー室完備。大人のオモチャとローション、スキンはサービスだ」 「SPの数は」 「一部屋につき屈強な兄ちゃんが二人。部屋の前で時間まで待機してる。どうだ、完璧だろ?」  無言で額に手をあてると、悠吾が身を乗り出して言った。 「何も心配いらねえって。社長、何をそんなに渋ってる」 「……『落札者』側の契約書も見せてもらえますか」

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