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始動・4

「俺達がリオと会ったのはあくまでコッチの仕事の都合でだし、人探しなら探偵に言った方が早いんじゃねえか」 「店長の話では、一昨日の七時に最後についた客がいるんだ。そいつさえ分かれば……」  一昨日か、と理人が煙草を咥えて天井を仰いだ。 「一昨日、リオちゃんの予定では出勤じゃなかったんだよ。俺はいつも店からリオちゃんの一週間分のスケジュールをメールで貰って、都合が合えば行くようにしてたんだ」 「うーん」  そういう職種だから、スケジュール通りに行かないこともあるというのは知っている。だけどリオのタイプ的に、出勤を急遽休みにはしてもその逆はあまり無いのではと何となく思った。 「ああ、もしかしたら……」  理人が何かを思い出した様子で、俺に視線を寄越してきた。 「何だ社長っ、何か知ってるのか?」 「東京BMCも確か、元締めは柳田グループだったよな」 「ああそうだ。ウチのオヤジも柳田んとことは繋がりがあるから、俺はそれで店を紹介してもらったんだ」 「………」 「理人、まさか」 「……ああ」 「何だよっ? 何がまさかなんだ!」  俺も理人から聞いて知っている。脳裡に過ぎったのは、来月中旬に行なわれる柳田悠吾主催の人身オークションだ。  出品される青年の何人かは、柳田の傘下にある売り専から引き抜くらしいと理人が言っていた。  完全会員制の売り専、そこのナンバーワンであるリオ──選ばれる理由としては申し分ない。例えリオが拒否したとしても、あの柳田悠吾なら恐らくどんな手を使ってでもそれを覆すだろう。 「説明してくれ! 頼む!」  理人が煙草を揉み消し、國安に向かい合う。 「予想でしかねえが」  そして、全てを隠さずに話した。  オークションのこと。リオが出品物としてそれに選ばれたかもしれないこと。競り落とされたリオがどんな目に遭うか、記憶していた契約内容も全て。 「そんな……」  流石に國安もショックを受けている。だが次の瞬間彼が口にしたのは、こちらの予想を遥かに超えるものだった。 「知ってる。……知ってるぞ、そのオークション。二年前にオヤジの知り合いが招待されたんだ」 「えっ?」 「ほ、本当ですか」 「ああ間違いねえ。オヤジと話してるのを聞いただけだけど、悪趣味すぎてその人は途中で帰ったんだってよ。競りに出された奴らが哀れで見てらんなかったって」 「………」 「一人ずつステージで裸にされて、……首輪を繋がれて、客が何か言えばその通りのことをやらされてよ。その人が見てて一番腹立ったって言ってたのは、パフォーマンスとアピールの一環でケツに酒だか水だか入れられて、……」  言いながら居ても立ってもいられなくなったのだろう、國安の腰がソファから浮いた。 「ちょっと待て、ふざけんな。そんなクソみてえなことにリオちゃんを……!」  俺は理人と視線を合わせ、頷いた。 「知り合いがそんな目に遭うのは寝覚めが悪りいな。……仕方ねえ、作戦変更だ」

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