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5.中間テストと夜の寄り道2

「優介さん、ありがとう」 「おう、また来いよ。ナゴは明日も頼むな」 「うん。じゃあまた明日」  20時半頃、店を出た。  店の客足が落ち着いたので、予定よりも30分の早上がり。来た時と違い外はすっかり暗くなっていたが、人通りは少なくはない。むしろ、帰宅する人たちが駅から出て来ているので、夕方よりも多い気がする。 「ごめん、お待たせ」 「ううん、大丈夫!ちょっと勉強出来たし」  二人並んで歩き出す。お店の制服ではなく、学校の制服に着替えた良くみる普段の姿。さっきまでのシュッとした姿も良かったが、こちらの方が安心する。  なんて、自分はいつから彼の外見をこんなにも意識するようになったのだろうか。心が通じ合った後、ずっと気持ちが満たされた時間が続くのだろうと思っていたが、それは間違いだ。もっと彼の色々な姿が見たい。もっと声が聞きたい。もっと彼を知りたい。一緒に居たい、と更に欲が出る。気持ちが満たされる、というのはその時、その瞬間の一時的なもの。 「うん?どうかした?」  じっと見つめられていたことに気付いたのか、大原が少し照れくさそうにしていた。柔らかい、優しい声だった。関係が変わってから、大原に変化があった。元々、無愛想ではないが表情がコロコロ変わる方でもなかったが、ここ最近、彼の表情は柔らかくなった。  一緒に帰る、といっても店から駅はかなり近いのですぐ着いてしまう。それは最初から分かっていたことだが、何だか離れがたくなってしまい、わざとゆっくり歩いた。  きっと、その早川の気持ちは大原にも伝わった。 「寄り道、しよっか」  何のこともない、ただの寄り道。  学校帰りにカラオケやゲームセンターに行ったり、ファミレスでお茶するのと全く同じ意味合いなのに。夜、大原と二人きりだと言うだけで、何かすごいイケナイことをしている気持ちになり、とてもドキドキした。  別に、きっと彼は変な意味で誘ったわけではないというのに、自分は何を期待してしまったのだろうか。  駅に向かっていたはずなのに、駅と逆方向に歩き出す。だんだんと人通りが少なくなって来た。だから、手を繋いだ。  驚いた大原の顔。しかし、すぐに眉をハの字にして困ったように笑う。これは、彼が幸せを感じている時の分かりやすい合図。大原も手を握り返して来た。

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