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ーーカランコロン、とドアのベルが鳴った。
「ごめんなさい、うちまだ開店前なんで……って、これは珍しいお客さんだな」
とある日の昼過ぎのこと。大型連休で世間は騒いでいるが、この店は連休なんて関係無しに通常通り営業中。開店はいつもどおり夕方。準備中、という札をドアに掛けてあるにも関わらず、40代前後の男が3人、店に入ってきた。
「よっ、優介。デカくなったなあ」
「おいおい、やめてくれよ。たぶん前にあんたと会った時と変わってないぜ。いつまでガキ扱いするんだよ?」
「俺らにとっちゃあ、お前らはいつまでも子供なんだよ!なあ、佐野?」
「…まあ、そうだな」
3人のうちのひとりは、大原や神崎、そして岸田弟が暮らす家の主、佐野だった。佐野はもちろん、他の2人も優介の顔見知りのようで親しげに話している。優介が3人にカウンター席に座るように促すと、男たちはそれに従った。
「店の方はどうだ?うまくいってるように見えるけど」
「まあ、ぼちぼちかな。お客さんもいい人ばっかりだから、楽しくやってるよ」
「そうかそうか!安心だ!」
「まあね……でも佐藤さん、こんな話しに来た訳じゃないだろ?」
佐藤、と呼ばれた先ほどから話の中心になっている人物。優介にそう言われると、バレたか、と苦笑いした。
開店準備のために動かしていた手を止めて、カウンターの中にある古びた椅子を引いて彼らの正面に座る。和やかだった午後の空気が、この一瞬でぴりっと引き締まった気がした。
「あんたが来るってことは、何か心配事があるってことだよな?」
「まあそうだよな〜、バレるよな〜」
「…優介は佐藤が思っているほど子供じゃない。すぐバレると言っただろう」
「でもよお、せっかくこの町まで来たし、優介に会って行きたかったんだよー」
佐野が佐藤に向かって大きなため息を吐く。隠す気ないだろ、と言われ佐藤は助けを求め、もうひとり黙っている男の方へ視線を投げる。
「鮫島も優介に会いたかったろ?」
「…………」
「な?やっぱりそうだよな!」
「…鮫島、君は佐藤に甘すぎる。もっと厳しくていいんだぞ」
「…………」
「全く…お人良しだな」
鮫島と呼ばれた人物は全く言葉を発さない、というより、発せないのだ。過去に大きな事故に巻き込まれ、声帯を失ってしまったと優介は聞いている。喋ることは出来ないが、付き合いの長い佐藤と佐野はこの鮫島がなにを言いたいのか汲み取る術を持っている。丸で読心術だ。素直にすごいと思う。
「優介、お前はもう大人だ。すごく迷ったが、お前にも話しておくべきだと思って来たんだ」
先程までのおちゃらけた空気とは一変、佐藤は真面目なトーンで話し出す。
「永太郎の父親がこの町にいる可能性がある」
「……ちょっと待て。どういうことだ?」
ありえない、と優介は驚きを隠せない様子だ。
「あいつの父親は、死んだはずだろ?」
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