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9.名前の呼び方と独占欲3

 玄関に脱いだ靴も揃えずに、すぐ様大原の部屋がある二階へ行く。部屋に入ってすぐ、制服の上着も、ジャージの上に着たウインドブレーカーも何も脱がずにキスをした。背の高い大原のネクタイを引っ張って、少し強引に重ねた唇。大原は少し驚いていたが、すぐに早川に応えてくれる。  早川が口を開くと、ぬるりと大原の舌が侵入した。ぴちゃぴゃと鳴る水音も気にせず、懸命に舌と舌を絡ませ合う。 「……っ、ん…」  ねっとりと舌先で歯列をなぞられ、鼻に掛かった声が出てしまう。  さらにキスが激しくなり、早川は大原に壁に押さえつけられる。頭を打たないようにと後頭部に手を回されたが、その手のお陰でがっちりと頭を固定され、角度を変えながら何度も何度も貪られる。  ここまで激しいキスは、初めてだった。この前、自分の家でしたキスはもっと甘いものだった。今日のは互いが互いを求める、野性的なキス。ゾクゾクして堪らなかった。  すっかりと熱くなり、勃ちあがり初めてしまった自分の芯。腰を引いて膝をくっ付けて擦り合わせていると、両脚の間に大原の脚が割って入り、膝で早川の芯をグッと押し上げた。 「んっ、んうっ!んっ…」  押し上げてられる度に声が漏れてしまう。彼の膝に弄ばれ完全に立ち上がってしまった自身が、じわじわと先走りで下着を濡らす感覚がした。  自身への刺激と濃厚なキスに、腰が抜けて膝が笑う。 「んっ、はあ……も、むりっ出したい…!」 やっと唇が解放された。二人を結ぶ銀糸がぷつりと切れる。  下着、そしてジャージのズボン越しに膝で与えられる刺激は、絶頂に達するには少し物足りない。 「なご、おねがい……さわって…?」 上目遣いでおねだりすると、ごくりと大原の喉が上下に動いた。  あの時みたいな刺激が欲しい。  自身の立ち上がったモノを、恥じらいながら大原の太腿に押し付けた。  下着の中に大原の手が侵入する。先走りですっかり濡れた早川のものを握って優しく上下に扱く。やっと味わえる直接的な刺激に、早川は腰を震わせた。もう少しで出せる、けれども、まだ足りない。 「…ちがっ、それじゃ、ない」 「…こう、か?」 「んっ、あ、あぁ……っ」  ぐりぐりと親指の腹で先端を弄られ、早川は呆気なく精を放つ。  力の入らない下半身が限界を迎えて、そのままぺたりと床に座り込んだ。背中を壁に預け脚を開いたまま上がった息を整える。  息が整うと、だんだん冷静になってくる。下着もジャージも履いたまま出してしまったことに今更ながら気付いた。そのせいで下着の中は自分のものでぐちょぐちょしていて気持ちが悪い。5日間、溜まりに溜まっていたせいでめちゃくちゃ出してしまった気がする。足の間を確認すると、やっぱりジャージにじんわりとシミが出来ている。  それを自分の正面で大原が見ている。粗相をしてしまったみたいで恥ずかしくなり、ぎゅっとジャージの裾を引っ張って隠す。足は力が入らず開いたままだった。 「み、見るなよ…」  顔を赤くしながら自分より高い位置にいる大原を、達したばかりなせいで生理的な涙が浮かんだ目で睨みつける。早川は睨んだつもりでも、大原から見たらこれはただの上目遣い。  片手で額を抑えながら、大原がはあーっ、と大きなため息をついた。 「…………据え膳」 「え、なに?」 「…いや、何でもない」  大原の呟きは、早川には届かない。  床に座り込んでしまった早川を軽々と大原が持ち上げ、ベッドに運んだ。 「もうやめるの…?」 「ん?駿太はどうしたい?」 「……もういっかい」  今度はナゴも一緒に、と小さな声で言った。 大原はいつも早川の言うことを聞いてくれる。言うのが恥ずかしいコトも言わせようとする。わざとなのか素なのかは分からないけど、前者だったらタチが悪い。  けれども、口に出して伝えるとちゃんと早川の望み通りに応えてくれる。 「うん、わかった」    大原が制服の上着を脱いで床に放った。  早川をベッドに座らせて、大原が下着ごとジャージを脱がず。先ほど放ったものでぐちゃぐちゃになった下着と早川のモノが露和になる。白い液体でベタベタになったそれに、大原の視線が突き刺さる。恥ずかしくて膝を擦り寄せた。   「あんま、じろじろ見んなよ…!」 「ごめん。でも、閉じたままじゃ触れないよ」 「うう…」 ゆっくりと足を開いた。恥ずかしくて、ぷいと顔を背けた。自分から足を開くのはこんなにも恥ずかしいのかと思ったが、大原の手によって与えられる快楽が待ち遠しくてドキドキした。   「うん、えらい。よく出来たな」 「子供扱いすんなって……んっ、う」  片手で頬を撫でられ、もう片手の掌で自身のモノを優しく包まれ上下に扱かれる。ついさっき精を放ったばかりなのに、大原に触れられるとそこはすぐに芯を持ち始める。  早川のモノが半分ほど立ち上がると、大原はまたひょいと早川を持ち上げ、胡座をかいた自分の上に座らせた。  何をするか察した早川は、彼の制服のベルトをカチャカチャと音を立てながら外し、彼の下着から充分に勃ち上がった彼自身のモノを取り出した。ぴっとりと裏筋同士をくっつけて、上下に腰を揺らした。 「ふあっ、ナゴ、きもちいい?」 「…っ、良いよ。俺も手、もっと動かしていい?」 「んっ、もっと…さきっぽ、さわって」  二人のものを包んだ大原の手の動きの速さが増した。それぞれの先からダラダラと先走りが垂れ、それがくちゅくちゅといやらしい音を立てている。その先走りを先端に塗り込むように指の腹で撫でると、早川が背中を逸らしながら身体を震わせた。 「駿太…これ好き、だよな?」 「っ、うん、すき……も、ヤバい、かも」 ぴりぴりと電流が走った様な快感が全身を巡る。限界が近かった。 「…なご、は?まだ?」 「ん…もうちょい。先に出していいよ?」 「んーんっ、一緒に、イきたい…っ」  嫌々と首を横に振る。力の入らない片手でぎゅっと大原にしがみ付き、もう片手は大原のものに触れる。力が抜けて上手くできないが、彼の真似をして上下に扱きながら先端をくるくると撫でる。引っ付いた彼が息を飲むのがわかった。 「…っ、駿太」 「うっ、あ、あぁ……!」 「くっ…」 熱い吐息が混じった声が、耳元で名前を囁いた。ゾクゾクと身体中に快感が巡り、ビクビクと身体を跳ねさせながら早川が精を放つ。ほぼ同時に大原も欲を吐き出した。  大原にしがみ付いていた手を離し、ぽすん、とベッドに背中から倒れた。まだ快感が身体を支配していて、座っているのがしんどかった。大の字になってベッドに転がりながら上がってしまった呼吸を整える。  すごく情けない姿をしていると思うが、久々に欲という欲を放出し切った体は倦怠感が酷く、今は動かす気になれなかった。  自分たちの放ったもので汚れた下半身と、ぐちゃぐちゃに汚れたジャージと下着。このままでは帰るときに着るものがない。どうしようかと考えていると、ぎゅるる、と早川の腹が鳴った。 「……お腹すいた」 「…腹減ったな」 本当はこんなことするのではなく、一緒に夕食に行くという約束をしていたことを、今更ながら思い出した。  

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