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まだ日が昇ったばかりの早朝。
一本の電話で同じ部屋で寝ていた3人は飛び起きた。
「……ああ、わかった。すぐ行く」
鳴ったのは佐藤の"仕事用"携帯電話。会話は30秒程度で終わった。
「行くぞ、鮫島。仕事だ」
「…………」
「ああ、俺もそう思うよ?なんでこんな朝早くなんだよなあ、昨日のうちに電話しろよなあ?!」
ふあ、と大きなあくびをしながら佐藤はガシガシと頭を掻く。文句を言いながらも、布団から出て立ち上がった。鮫島も同じだ。起き抜け5分だというのに、もう2人の頭の中は仕事モードに切り替わっているようだ。
「待て、話が読めない。何かあったのか?」
一緒に叩き起こされた佐野が、今にも家を出ていきそうな2人に問いかける。
「ニュースにもなってたけど、昨日の夕方、隣町の高校付近で2件、通り魔があったの分かるだろ?」
「ああ、知っている」
「それぞれの時間の容疑者として逮捕された男が2人いるんだが、奴に特徴が似過ぎてるんだ」
「奴……永太郎の父親が」
正解、と佐藤はパチンと指を鳴らす。この早朝に叩き起こされたくせに、何故か随分と機嫌が良い。
「同じ日、同じ時間帯、同じ通り魔……これだけでも変だってのに、容疑者までそっくりとキた。変だろ?こんな違和感だらけなのは…奴が関わってるに決まってる」
佐藤の言う通り、確かに違和感しか感じない。
「やっとだ……やっと奴の情報が入った。逮捕したくてウズウズしてるぜ」
「…………」
「ああ、刑期を終えてもまた騒ぎを起こす奴は起こす。奴は絶対そうだと思ってマークしてたら、これだ」
「2人というのが引っかかるな…前科持ちなら、指紋を調べれば一発だろ。なんで奴だと特定できないんだ?」
「もう両方調べてあるが……一致しないらしい」
佐野が驚いた顔をした。そんな彼に構わず、佐藤は話を続ける。
「本人だったら、俺たちが見てすぐ分かる。前回逮捕したのも俺たちだからな。ただ、本人じゃ無かったら……俺らを引き離すための罠かもしれない」
「…後者だったらどうするんだ?」
長い間追っていた奴がそう簡単に捕まるのだろうか、と佐野は思う。明らかに罠の可能性の方が高い。
「これは推測だが…朝は人目が多い。昼は学校だ。だから、奴が永太郎に接触するのは夕方以降だと思う。俺たちもなるべく早く戻る。だから、それまでは頼む。なるべく永太郎をひとりにしないでくれ」
佐藤の真面目な顔は久しぶりに見た。子供たちの前でも、自分たちの前でもそんな顔を見せることは滅多にない。それだけ奴の逮捕に必死なのだ。
「何にせよ、近くで事件が起こったばかりだ。明日は全員で登校させるようにする」
「ああ、助かるよ……悪いな、警察を辞めたお前にまで頼っちまって」
「別にいいさ、嫌で辞めたわけじゃないんだ」
申し訳なさそうに言う佐藤に、佐野は首を横に振った。大事な子供たちのためになるのなら、いくらでも手伝うつもりだ。
「俺たちには、あの子たちを守る義務がある。そうだろう?」
佐野の言葉に、佐藤と鮫島はしっかりと頷いた。
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