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14.寂しさと止まった時間1
ポッカリと心に空いてしまった穴は、そう簡単には塞がらない。
膝の手術をして、リハビリがスタートした。1ヶ月の入院期間を終えて、自宅療養になった。いつの間にか突入していた夏休みが終わって学校が始まった。夏が終わって、秋が来た。
朝起きて学校へ行き、学校が終わると部活には行かずに病院へ行って歩行練習。それが終わると家に帰って寝るだけ。そんな色のない毎日の繰り返し。
あの時間から3ヶ月も経ったのに、早川はまだ自力で歩くことすら出来ない。松葉杖をついてやっと移動が出来るようになっただけ。
誰かの助けがないと、日常生活すらままならないのがもどかしい。
「…早川、次、生物室だから。教科書とノート、持つよ」
「うん、ありがと」
同じクラスの神崎には、迷惑をかけっぱなしだ。色々と事情を知っている彼は、早川のことを気に掛けてくれているようだった。
大原について知っていることは、学校を辞めて遠くへ行ってしまったということだけ。一緒に住んでいた神崎や岸田、3年生の優菜にも聞いてみたが、誰も彼の連絡先を知らないし、どこへ行ったかも知らなかった。
急な別れは、早川の心に深い傷を負わせた。
学校にいる時は良かった。クラスメイトたちとは仲が良いので、話をしたりして気が紛れる。
辛いのは放課後、陸上部の仲間たちがグラウンドで練習しているのを見た時。本当なら、自分もあの中で練習しているはずだったのに。
あとは、ひとりでいる時。ひとりになると、彼の事を思い出す。毎日当たり前のように会っていたのに、どこにいるのかすら分からない。当たり前のように常に連絡を取り合っていたのに、一向に返ってくる気配はない。
考えないように、思い出さないようにしても気付いたら彼のことを考えてしまう。辛くて苦しくて、寂しかった。
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