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18.広い海と南の島1
……ーープルルル、プルルル、ガチャ。
「あ、もしもし優介?」
『……もしもし』
「あれ、なんで光?悪い、間違え……」
『……あってる。今、風呂』
「は?ああ、泊まってたのか」
『……うん』
昼の12時を回っている今現在。どうしてこんな時間に風呂なんて入っているんだという疑問が浮かぶが、この二人のの事情にとやかく口を突っ込むのも気が引ける。
神崎が一緒にいるという事と、電話口の気怠げな声でなんとなく察してしまったが。
『………用件』
「いいよ、後で掛け直す」
『……今、出てきた』
実際大した用事ではなかったので、後でもよかった。二人の邪魔をしないようにと電話を切ろうとした時、電話の向こうから持ち主の声が聞こえた。
『もしもしナゴ、悪いな、待たせた。どうした?』
「いや、大丈夫。大した話じゃないんだけど、佐藤さんたち今日そっちに行くから、店で使う酒とか、こっちにしかない物で欲しいものないかって」
『ああー、あるある。泡盛を数本貰おっかなあ。銘柄は、請福と八戸泉と……』
「あ、ちょっと待って」
優介がスラスラと酒の銘柄を言っていくので、急いで近くにあった適当な紙にメモを取る。正直、酒の話はほとんど分からない。店にある人気なものはだんだん覚えてきたが、まだまだ分からないことが多い。自分も成人して飲めるようになれば、優介のようになれるのだろうか。
『…ーー、うん、そんなもんかな。よろしく』
「わかった。じゃあ」
『ちょっと待てって。今日、早川くんそっちに行くんだろ?』
「えっ、知ってたの?」
『昨日だか一昨日、店に遊びに来てくれてさ。めちゃくちゃ楽しみだって言ってたよ』
相変わらず仲良いな、と茶化すように優介が笑う。
楽しみ、だなんて嬉しいに決まってる。大原も昨夜寝付けないほど楽しみにしているのだ。子供っぽいと笑われそうだから絶対言わないが。
彼の到着は午後5時。まだ1時にもなっていないから、まだまだ時間がある。待ち遠しくて堪らない。
『あ、そうだ。お前に大事なこと言い忘れてたわ』
「えっ、なに?」
『ゴムとローション、ちゃんと買っとけよ』
「…………切るぞ」
大原は頭を抱えた。昔からこの人は自分を揶揄って遊ぶのが好きなのだ。
『いやいや、マジで大事なことだからな。おにーさんからのアドバイス!じゃあな!』
ブツリ、と電話が切れた。はあ、と大原は大きなため息をついた。あの人は自分のことを何だと思っているのだろうか。
だいたい、顔を合わせること自体が久しぶりなのだ。きっとそんな余裕なんてない。
一緒に食事をして、ドライブをして、観光をして。やりたいことはいっぱいある。
そもそも、会えるだけで充分だ。一緒に居られるだけで充分なのだ。それだけで幸せ。これ以上求めるときっとバチが当たってしまう。だからそんな物、必要ない。
ーーー本当に、必要ないのだろうか?
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