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19.触れる体温と重なる心音4

 触れようとして伸びてきた手に頬をすり寄せた。真っ赤で熱い顔に、ちょっとだけひんやりとした彼の掌が気持ち良い。両の頬を大きな掌で包まれると、そっと触れるだけのキスをされた。ほんの、一瞬だけ、瞬きしている間に離れてしまった柔らかい感触。違う、求めているのはそんなに優しいものじゃない。  もっと、と強請る前に片方の手が後頭部に回されて、今度はしっかりと押し付けるようなキスをされた。ちゅ、と音を立てて啄むキスをされた。こちらからも返してやれば、下唇を甘噛みされる。擽ったくて息が漏れた。その隙に、唇の隙間から大原の舌が侵入して来た。舌の付け根から裏側、歯列や上顎顎をねっとりとなぞられると堪らない。 「ン、ふう……」  気持ち良くて上手く息が出来なくて、鼻から抜けるような声が出た。ぞわぞわと快感が身体中を駆け巡り、頭がぼうっとする。早川も、大原が与えてくれる刺激に応えるように懸命に舌を絡ませるが、応えるのがやっとで、彼を自分のように気持ち良くさせることは出来ない。  息が苦しくてキスから逃げるように顔を離そうとしたが、後頭部に回された手がそれを許さない。もう片方の手で耳を撫でられると、ぴくりと身体が跳ねた。 「…は、ふぅ…んんっ、ンう…」  耳を塞がれると、くちゅくちゅとした音がダイレクトに響く。深いキスの音と自分の鼻にかかった声だけがしっかりと聞こえて、恥ずかしくて、息が苦しいけど気持ち良くて、堪らない。どんどん腰に溜まっていく熱を感じてもぞもぞと膝をすり合わせた。  キスは気持ち良いし好きだけど、これ以上は酸欠でヤバいかもしれない。頭が熱くてクラクラする。きゅ、と大原のシャツを引っ張ると、それに気付いた彼はやっと唇を解放してくれた。 「ぷはっ……はあー…はあー…」 「は……ごめん、苦しかった?」 「ん、へーき…」  息も絶え絶えな早川に対し、余裕のありそうな大原。なんでこんなに違うんだと、少しだけむっとした。  胸を上下させて息を整えていると、首筋にちゅ、とキスを落とされる。くすぐったさに身を捩ると、シャツの裾から大原の手が侵入してきた。掌で優しく脇腹、背中、胸を撫で上げる。胸に到達すると、きゅっと指の腹で乳首を摘まれた。 「ひゃっ、あっ、」  胸を弄られただけで、まるで自分のでは無いような情けない声が出てしまったことに驚きが隠せない。  そこには、前に一度だけ触れられたことがあるような気がする。あの時は射精する直前で余裕が無くて、擽ったいとか気持ち良いとかよく分からなかったが、今はわかる。少し擽ったいが、早川の身体は確実にソコで快感を拾っている。  それは大原にも伝わったようで、早川の乳首を摘んだまま、くりくりと捏ね回す。彼は、早川の両の胸が出るようにシャツをめくると、何もされてないもう片方の尖りに、ちゅっと口を付けた。 「なごっ、それ、やだ……恥ずかしい、よお…」 「……でも駿太、気持ち良さそう」 「ひ、んっ…ああっ」  片方はカリカリと爪で引っかくように刺激され、もう片方は舌先でクリクリと捏ねられ、ちゅっと吸い上げられる。いつの間にか両方とも硬くなってぷっくりと立ち上がっていた。  やっと乳首の焦ったい快感から解放されると、大原の手がそろそろと下腹部に伸びた。すっかりと勃ち上がってテントを張っている早川の中心を、ズボンの上からつう、と撫で上げる。 「ふ、あっ……まって、なごっ、待って…!」  きゅっ、と脚を閉じて、力の入らない手で大原の腕を掴み静止する早川。触って欲しかったんじゃないのか、と大原は首を傾げた。 「も、俺…すぐ出そうだから…」 「…何か問題あるのか?」 「駄目なの!それじゃ……今までと、変わんないじゃん…!」  大原は再び首を傾げた。何も問題ないように聞こえる。早川が何を言いたいのか、彼には全く伝わっていないようだ。 「……俺、高校卒業したよ」 「……?ああ、そうだな」 「なご、覚えて無いかもしれない、けど……」 「うん?」 「………………、……った」 「ごめん、なんて?」  早川が俯きながら真っ赤な顔で言った言葉は、とっても小さな声で大原には聞き取れなかった。 「…………俺が、高校卒業したら、えっち、するって」 「…………」 「最後まで、するって、言った」  顔から火が出そうなほど真っ赤にして、恥ずかしそうに、涙目になりながらそう言った早川に、大原はくらりとした。  確かに、そう言った。そんなことを言った記憶はあるのだ。  想いが通じ合ってから、大原が初めて早川の家に泊まりに行った時。あの時はまだ性的な知識も浅く、さらに周りの友人たちから煽りに煽られて恐怖や緊張ですっかり縮こまってしまっていた早川を安心させようとして、そう言った。 「俺、ちゃんと準備したし……ちょっとだけ、練習した……ひとりじゃ上手くできなかったから、ちょっとだけ……」  あの時の、眠気で頭が上手く動いていなかった大原の些細な言葉を、早川はしっかりと覚えていて自分の為に準備までしてきたと言っている。なんて、愛おしいのだろうか。  大事な愛おしい人が、男としての尊厳やプライドを捨てて、真っ赤になりながら自分に抱かれる準備をしてきたと、涙目で訴えてくる。ぐらり、と理性が揺れた。  早川が嫌がるなら必要ない、と思っていた。しかし、こんな事を言われて手を出さないほど、大原は枯れてもいないし朴念仁でもない。

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