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19.触れる体温と重なる心音6
「なご、も、いい、からぁっきて…!」
「けど、まだ……」
「ん、大丈夫……大丈夫、だから!」
きっとこのまま、彼の手でぐずぐすに溶かされていたら挿れる前に限界を迎えてしまう。早川はそう思った。
早川を気持ち良くするばかりで、大原はまだ気持ち良くなっていないのだ。ここで終わるなんて、絶対に嫌だ。
早川は力の入らない手で大原の着ているシャツを引っ張り、脱がせようとした。その意思は伝わったようで、彼は着ていたシャツを床に脱ぎ捨てた。露和になった彼の素肌に抱き付くと、温かい。しっとりとした肌同士をくっ付ける。温かくて、胸がいっぱいになった。
二人の腹の間で、勃ち上がったそれぞれの物が触れ合った。大原のはズボン越しだったが、しっかりと熱をもっているのが分かる。
「なご、勃ってる……でっかい…」
「…っ、は…、触るとヤバいから、待って」
今まで触ってもいないのに、大原のしっかりと反応している。早川の淫らな姿を見て、ちゃんと興奮してくれている証拠だ。下着ごとズボンをズラし、大原の立派なそれを取り出した。つう、と指でなぞると彼は苦しそうに息を吐く。
「ねえ、なご……挿れて…、もう我慢、しなくて、いいから」
「…………辛かったら、すぐ言えよ?」
「…っ、うん」
ようやく大原が折れた。ゆっくりと後孔から指が引き抜かれる。急に質量を失ったそこがヒクヒクと動いているのがわかる。まるでそこが彼のことを誘っているように思えて、なんだか恥ずかしくなった。
ローションと一緒に取り出して放置されていたスキンの箱に手を伸ばし、雑に箱を破って中身を取り出す。早川が持ってきた物も鞄の奥に入っていたが、それは必要ないようだ。
袋の端を加えて、ビリッと破って中身を取り出す。その姿がなんだか普段の彼と違って野性的で、少しドキッとした。
袋を被った大原の物が、先端で早川の孔にキスをする。ローションを出してぬるぬると何度か擦り付けてから、ぬぷり、とゆっくり侵入してきた。
「く、うぅっ、は、あ……、は、あ……!」
「…っ、く、駿太、力抜けるか?」
「う、あぁ!む、りぃ…」
指とは比べ物にならない質量が腸壁を掻き分けて、奥へ奥へと向かって入ってくる。身体が驚いて、無意識に中にいる彼をぎゅうぎゅうと締め付けてしまう。
以前から思っていたが、大原は大柄な体躯に見合ったモノを持っている。早川のより全然大きなソレを初めて見た時は驚いた。その凶暴な大きさの彼のモノが、今自分の中に入ろうとしている。
「駿太、息止めるな」
「はあ、ぁ……ふぅ……はぁ…、っ、あ」
「吸って、履いて……そう、上手。良い子だ」
頭を優しく撫でられ、顔中にキスを落とされる。まるで子供をあやすように、優しく、優しく。
「なごぉ……くちに、して…ん、んぅ」
唇が重なる。呼吸が重なる。深い、深いキスをされる。その間も、大原の熱がじわじわと奥へ奥へ進んでいく。痛い、苦しい、気持ち良い。色々な感覚が一気に押し寄せ、頭がくらくらする。
与えられるキスに夢中になっていると、ぴたりと臀部に肌の当たる感覚。
「っ、ぜんぶ、はいった…?」
「…ああ、入った。頑張ったな」
ついに、繋がった。やっと、やっとだ。
身体は辛いのに、胸は温かい。身体全てで直接感じる体温と、ひとつになってしまったのではないかと思うくらい重なる心音。こんなに苦しくて大変なのに、すごくすごく幸せだ。
「ココに、なごの、入っているんだ…」
するりと自身の腹を撫でながら呟くと、ぴくりと自分のナカで彼のものが脈打つのを感じた。
そのほんの少しの刺激に驚いて、身体に力が入ってしまう。きゅう、と締め付けてしまったようで、彼が低く呻いた。
「んっ、あ、ごめん……」
「うっ、大丈夫、だけど……そろそろ、限界、かも…」
ぽたり、と大原の額から汗が落ちる。
覆い被さる彼の顔を見上げると、ぐっと何かに耐えるような顔をしている。ここまでくるのに自分のことで精一杯で、大原のことを気にする余裕なんてなかった。彼は、ずっと我慢しているのだ。今もじっと動かずに、早川が慣れるのを待ってくれている。
「…なご、動いて」
もう大丈夫だから、ぜんぶちょうだい。
許しを得た彼は、早川の良いところを目掛けて、ゆっくりと腰を動かし始める。
「…うっ、あ、もっと…もっときて、いいから」
「ん、大丈夫か?痛くない?」
「ふう、へーきっ、ちゃんと、気持ち良い、から」
しっかりと丁寧に、じっくり時間をかけて開かれたおかげで、早川の身体はちゃんと感じるように作り替えられた。
たくさん気持ちよくなった。だから、今度はずっと我慢していた大原に気持ち良くなって貰いたい。
ぎゅっと大原の身体に抱きついて、彼の動きに合わせて腰を揺らすと、またビクンと彼のものが脈打つのを感じた。
早川のナカを突く動きも速くなってきた。どうやら限界が近いようだ。
ふと、急にに大原の手が早川の前に触れ、上下に扱き始めた。
「う、あっ、前だめ…う、ああ、でる、でちゃ、う、ぅう〜…」
「俺も……、一緒に、いこう、な?」
「う、んっ、ああ、ぁああ…っ!」
「く、う……っ!」
ぐり、と先端を擦られると堪らなかった。ビクビクと身体を震わせて、早川は自身の腹に精を吐き出した。早川のナカでしっかりと大原のものが脈打った。ゴム越しに感じる生暖かい感覚。ああ、ちゃんと彼も気持ちよくなってくれたようだと安心した。
「はあ、はあ………うっ、え?」
早川が息を整えていると、首筋に顔を埋めるようにして、力の抜けた大原が覆いかぶさってきた。
急なことに早川は驚いたが、大原の身体は完全に力が抜けきっているわけではない。彼の両腕は早川の背中にまわり、しっかりと力が込められている。
彼が無言でこんな不可解な行動を取ることはかなり珍しい。甘えているのだろうか。にしても、あまりに下手な甘え方だが。
どうしたら良いかわからず、そろりと彼の背中に手を回す。すると、じわり、と彼が顔を埋めている首筋に温かいものが広がるのを感じた。と、同時にぐずぐすと鼻をすする音。
「え……ナゴ、泣いてる?」
あまりの珍しさにぎょっとした。もしかしたら、彼の泣いているところに遭遇したのなんて初めてかもしれない。
「どうしたの?なんで、ナゴが泣いてるんだよ?」
泣くのは自分の方なのでは、と早川は思う。痛さとか、生理的な涙の方で。
「……っ、……………い」
「え?」
何か言おうとしている。涙まじりの小さな声。
「……幸せだ。しあわせすぎて、こわい」
やっと顔を上げてくれたと思ったら、彼の顔は涙でべしょべしょに濡れていた。濡れていたけど、眉を八の字にした困ったような不器用な笑顔。
早川が大好きな、大原の笑顔。
「…俺も、めちゃくちゃ幸せ!」
ずっと、この満たされた時間が続けばいいのに、と思わずにはいられなかった。
もう怖いなんて言わせないほど、愛して愛して、幸せにしてあげたい。
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