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20.長い昼寝とふたりで見る星3
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最初の日の夜に行った大原御用達店でたらふく食べて、失った体力を回復した。美味い割に安いし、ひとつひとつの料理の量がおおいのでコスパ最強だと、大原が絶賛している。
次この島に来た時にまた食べに来たい、そう思えるくらい早川もこの店が好きだった。
夕食の後、大原が行きたいところがあると大原が言った。身体もだいぶ回復したし、早川もこのまま家に帰るのは勿体ないと思っていたので了承した。
車に乗って港町から遠ざかり、街頭も無く他の車もいない真っ暗な道を進んだ。適当な場所に車を停めると、背の高い木に囲まれた短いトンネルのような道を進む。スマートフォンのライトを使って進まないと暗くて何も見えない。さすがに少し怖くなって、大原の服の裾を掴んだ。それに気付いた大原が、裾を掴んだ早川の手を取ってぎゅっと握った。
ほんの数メートルの木で出来たトンネルを抜けると、そこは砂浜だった。ちゃぷちゃぷと小さな波が砂浜に押し寄せる音が聞こえる。
トンネルの先は、街頭やライトなどは何もないのに明るかった。明かりをつけた船が走っているわけでもないし、電灯代わりにしていた大原のスマートフォンのライトはいつの間にか消えていた。
じゃあ何で明るいんだろうか。キョロキョロと辺りを見回すが、あるのはトンネルを作っていた背の高い木と、波に乗ってきた貝殻や木の枝、海藻など海の植物だけ。
辺りを見回すついでに上を見た。
「うわぁー……すごい………」
あまりの凄さに、言葉が出ない。
明かりの正体は、空一面に散らばる星だった。
「な!すごいよな」
「うん、俺こんなの初めて見たかも…」
「そうだと思って、見せたかったんだ」
早川と大原の育った街は、夜遅くまで電車もバスも走っているし、24時間営業の飲食店やカラオケ店も並んでいる、明かりが絶えない街だ。街灯や建物の明かりに掻き消されて、星なんてほとんど見えなかった。
「こういうのって、プラネタリウムじゃないと見れないと思ってたけど、見れるもんなんだね」
子供の頃に行った、とある科学館のプラネタリウムを思い出す。あの時は初めてみる人工の星空に感動したけど、実際空を見てもどこにも綺麗な星空は無くて、ガッカリした記憶がある。
「この島に来た初日に見て、駿太と一緒に見たいと思ったんだ」
「…そうなんだ」
「あの時は……頭の中ぐちゃぐちゃで、どうしたら良いのか分からないことだらけで……駿太と離れるって決めたのに、結局離れても最初に考えるのは駿太のことで。本当、未練しか無くて、情けないよな」
もう数年前の事だ。あの時は、大原が居なくなって辛かった。涙が枯れるほど泣いた。嫌われたかと思って悲しかった。けれども、そうではないらしい。
離れた場所でも大原は自分のことを想い続けてくれていたようだ。安心はしたが、でもやっぱり、彼にどんな事情があろうとも、辛かったし寂しかった。
「……そんなに俺のこと好きなら、居なくならなきゃよかったのに」
「……うん、そうだよな。ごめん」
「俺やさしいから、もう許したけどね!」
「……はは、ごめんな」
あの時、彼に選択肢が無かったのは分かっているが、つい拗ねたような口調になってしまう。大原から謝罪が返ってきたが、彼は幸せそうに笑っていた。
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