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20.長い昼寝とふたりで見る星5
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次の日、島で過ごす最後の日は、朝から雨だった。ざあざあ、ばちばちと家の窓ガラスを叩く音がいつまでも止まらない。
雨の日は嫌いだ。良いことがなくて、気が滅入ってしまう。雨が降ると外で遊べなくなるし、何より大好きだった部活が出来なくなることが嫌だった。高校生じゃなくなった今、部活はあまり関係無いが。
何かをする、という気も起きなくて大原とふたり、ソファに座ってダラダラと適当にテレビを見る。昼になったら雨が止むだろうと思っていたのだが、全く止む気配はない。雨が止んだら出かけようという話をしていたのに、これでは出掛けるのは無理そうだ。
最近流行りの恋愛ドラマを流しているが、全然頭に入ってこない。おかしいな、話題作なのに。考えてしまうのは、今日が最後だということばかり。
頭に入ってこない、という点は大原も同じだったようで、話が終わってもリモコンを持ったままぼうっとしていた。先程までは、終わったらさっさと次の話を再生してくれていたのに。
「ナゴ?どうしたの?」
「……えっ、ああ!ごめん、次の見るか!」
心ここにあらず、という感じだったが、名前を呼んでやると我に返った様子だった。この様子では、ドラマの内容なんてさっぱりなのだろう。それは自分も同じであるが。
「……いいや、もう見るのやめよ」
大原の手からリモコンを取り上げて、テレビの電源を消す。適当にリモコンを放って、隣に座る大原の肩に頭を預けて寄り添う。静かになった部屋に、窓を叩く雨音が一際大きく聞こえるようになった。
「ちょっと休憩」
「いいのか?」
「うん、いいの。ちょっとだけ、このままで居させて」
ちょっとでもいいから、彼にくっ付いて居たくなった。今日が終わればしばらく離れ離れなのだから、これくらいの我儘にくらい、許して欲しい。
大原の肩に押し付けた頭を、彼は優しく撫でてくれた。さらさら、さらさらと髪を撫でて居た手は、いつの間にか頬に添えられて居た。
「……駿太」
熱の籠もった声で呼ばれた名前。これから何をされるのかすぐに分かって、目を閉じて顔を上げる。吐息を感じるくらい顔を近づけて、互いの唇を重ねようとした、その時。
ーーピンポーン。
ビクリ、と驚きで肩が跳ねた。インターホンが鳴ったのだ。別に悪いことをしていたわけではないし、誰かに見られていたわけでもないのに、バクバクと心臓が爆発しそうなほど音を立てていた。
大原はというと、見たことがないくらい顔を顰めていた。間が悪すぎる、と小さくため息をついてソファから立ち上がった。
「ごめん、待ってて」
「あ、ううん。いいよ、大丈夫」
ピンポーン、ともう一度インターホンが鳴る。来客は家の中で何が行われようとしてたかなんて知らないのだ。
一体何の来客だ、と玄関に行った大原の後をついて覗いてみると、どうやら荷物が届いただけのようだった。宅配に、すっかりムードを壊されてしまった。
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