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21.最後の夜と大事な借り物5

*  少し早めの時間に家を出て車で空港まで送ってもらう。出発までいくらか時間があったので、適当にお土産を見て回る。  楽しい時間はあっという間だ。ここに来たのは5日も前だというのに、ついさっき来たばかりだったのではないかと錯覚する。   『出発便のご案内をいたします。…ーー東京行き、12時10分発、…ーー便は、ただいま皆様を機内へとご案内中でございます……』  場内アナウンスが鳴る。もう保安検査所を通過しなければならない時間になってしまったようだ。いよいよこの島と大原と、お別れしなくてはならない。 「もうそろそろ、行かなきゃ」 「ああ、もうそんな時間か……」  大原は保安検査所の前まで送ってくれた。それほど広い空港ではないのですぐに着いてしまったが。   「色々、ありがとう。楽しかった」 「ああ、俺も楽しかった。また来いよ」 「うん、絶対来る!」  帰りたくない、帰らなくてはいけない。まだ一緒に居たい、連れて帰りたい。寂しい、ひとりは嫌だ。大原と、離れたくない。  気を抜いたら泣きそうだった。最後くらい明るくして、心配かけないようにしたい。だから涙をぐっと堪えた。 「じゃあ、ナゴ、元気でね」 「…………」 「ナゴ?どうかした?」 「……いや、その……ごめん」  保安検査所に向かおうとした、その時だった。大原が何か言いたそうにしていることに気付いた。朝からずっと穏やかに笑っていたのに、今は何だか悲しそうだ。

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