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22.無償の愛で咲いた花

『すぐに引っ越せるわけじゃないけど……盆にそっちに行くから、ついでに家を探そうと思って』  大原はきっと、早川が涙を流しているのに気付いていない。いつもより生き生きとした声で、嬉しそうに話を続けている。  早川が思った以上に話が進んでいる。大原の心は、もうずいぶんと前から決まっているようだ。 『だから、その……もし、駿太が嫌じゃ無ければ……』  急に歯切れが悪くなってしまった。電話口から何か緊張している様子が伝わる。小さく深呼吸した音が聞こえた。 『一緒に暮らさないか?』  ずっと大原に気付かれないようにしていたけど、ついに我慢出来なくて、嗚咽が漏れる。 「…良いに、決まってるだろ〜〜!」 『……っ!よかった……断られたら、どうしようかと思った……』 「ゔうっ、うっ、なごぉ……っ!」 『えっ、駿太、泣いてるのか?』 「だって……ナゴが、ナゴが帰って、くるって……!」  一度ばれてしまうともうどうでも良くなって、ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、嗚咽を我慢することなく思い切り泣いた。これは嬉し涙だから、いくら泣いたっていいのだ。大原は電話の向こうで困っている様だったが、早川が落ち着くまで静かに待っていてくれた。 『本当に、今まで辛い思いをさせてごめん』 「……っ、うん」 『寂しい思いをさせて、ごめん』 「うん、うん…」 『たくさん泣かせて、ごめん』 「……うん」 『こんな駄目な俺なにの……ずっと信じてくれて、ずっと待っててくれて、ありがとう』  彼を諦めなくてよかった。  人を想うことが、こんなにも寂しくて辛いものなのかとひとりで胸を痛めた日もあった。こんなに辛いなら、好きになんてなるのではなかったと泣いた日もあった。けれども、ついに幸せになれる日がやって来る。彼をずっと想い続けていて良かった。好きになって良かった。愛して良かった。  もう彼が幸せになることに怯えて暮らすことが無い様に、幸せが怖いなんて言わせないように。たくさん愛して、たくさん愛を受け止めて、愛し合って生きて行きたい。 「……っ、おれ、ナゴのこと、幸せにするっ!!」 『……ふふ、ああ、幸せにしてくれ』  電話の向こうの大原は、今どんな顔で笑っているのだろうか。これからはそんなことを気にする必要が無い。隣で、向き合って、一緒に笑い合う。想像しただけで胸が温かくなる。  ああ、楽しみで仕方がない。  

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