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22.無償の愛で咲いた花
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次に目を覚ました時、まだ部屋の中は薄暗かった。ちゃんとした遮光カーテンを設置したのだから、暗いのは当たり前だ。
体や頭はスッキリしているので、結構寝てしまったのだろうか。しかし、まだスマートフォンで設定したアラームは鳴っていない。11時にセットして、鳴る前に起きたのだから、まだ時間には余裕があるはずだ。そう思ってスマートフォンを手に取った。
「……えっ、ええーーー!なんで?!」
早川は飛び起きた。
時刻は11時30分。設定した時間を大幅に過ぎていた。寝ぼけていたせいか、ちゃんとセット出来ていなかったようだ。なんてことだ、と頭を抱えたくなったが、今の自分にそんな時間は無い。
とりあえずシャワーを浴びようと慌てて浴室へ向かう。その前に大原に連絡を入れた方が良いかと、スマートフォンを見ると、何件かメッセージの通知が溜まっていることに気付いた。
『早川くん、昨日は来てくれてありがとう!相手できなくて申し訳なかった。今度、もう1人従業員が増えるからもう少し余裕出ると思うから、また遊びに来てな。弟のこともよろしく』
『早川、昨日は楽しかった。また飲もう』
『おはよう。今からそっちに向かう』
『駿ちゃん、お友だちとの暮らしはどう?ちゃんとやってる?何か足りないものない?必要なものがあるなら送るから言ってね』
『おはよう!昨日言い忘れたんだけど、来週か再来週あたり、今度はナゴも誘って飯行こうぜ。俺らも久々に会いたしさ!
ってことで、暇な日教えて!』
『予定通り、12時前に駅に着くよ』
『何か食べたいものあれば買っていくけど、ある?』
『おーい』
『もしかして、寝てる?』
なぜ今日に限ってこんなに、というほど色々な人からメッセージが来ていた。大原だけでなく、岸田や神崎、優介、そして母親からも来ている。今は返している暇はないから、あとで返そう。大原から来たメッセージにだけ既読をつけて、急いで返信のメッセージを打ち込んだ。
『ごめん、ちょっと遅れーーー…』
そこまで文字を打ち込んで、やっぱりやめた。
こんな大事な日に遅れて行くなんて、格好が付かない。
『起きてるよ!大丈夫、間に合わせる!』
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