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大原と早川3
そう言って連れて来られたのは、12月にオープンしたばかりのスーパー銭湯。夜中の4時まで営業しているのがありがたい。
「ここ来てみたかったんだよなあ。寒いし、仕事終わりに温泉なんて最高だろ?」
「ああ、悪くない」
バイクに乗ってすっかり冷えてしまった体を今すぐ温めたい。指先なんて、凍ってしまうのではないかと思うくらい冷たい。やはり、手袋をして来るべきだった。
「優介、寒い。早く行こう」
「わかったわかった」
時間帯のせいか、中はガランとしていて人が少ない。人が多すぎるとゆっくりと寛げないので、これはありがたい。食堂やレストランはもう閉店してしまっている。
大人券を2枚、券売機で買ってさっそく風呂へ直行する。
とにかく早く温泉に浸かりたい。適当なロッカーに荷物を入れて、服を脱いだ。
「……へえ、おまえもちゃんとやる事やってんだな」
にやにやと、優介が揶揄うように言った。彼の視線は、大原の背中に向いている。
「は?」
「いや〜、おまえ淡白そうだし、早川くんは性欲強そうだし。上手くやれんのか心配だったけど、ちゃんと仲良くしてんだなあ」
「……ん?なんでそんな話になるんだ?」
確かにちゃんとやる事はやっているが。なぜ身体を見ただけでわかるのだろうか。キスマークは付けていないはずだ。
兄のような存在である彼に、早川とのことを突っ込まれるのは正直照れ臭くて苦手だ。話を逸らそうととぼけてみたが、この手の話が好きな優介はそれを許してはくれない。
「背中の引っ掻き傷」
「…………」
「おまえ、結構激しめにヤんだな」
「勘弁してくれ……」
早川が実家に帰ってしまうということもあって、確かに昨晩は盛り上がった。盛り上がったこと自体は良いのだが、それが他人にバレてしまうのはなんだか気不味い。
こちらも負けるかと、優介のそういう部分を探す。引っ掻き傷のような派手なものはなかったが、首筋、ちょうど優介が自分では見つけられないだろう位置に、うっすらと噛み跡があった。
「優介、首のところ……」
「ん?ああ、これか……」
してやったり。飄々としている優介の照れた顔がやっと見れる、とわくわくしながら指摘してやる。
しかし彼は、大原の予想とは全く違い、堂々と得意げな顔をして、その痕を見せてきた。
「俺、愛されてるだろ?」
指摘なんてするんじゃなかった、と大原は肩を落とした。
この痕を付けた人物を大原は知っている。弟のように可愛がってきた彼は、どうしてこんな男に惚れてしまったのだろうか。
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