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大原と早川4

*  目が覚めた時、そこは自分の家のダブルベッドの上だった。今日は広いダブルベッドにひとりで寝ているのに、自然と端によって、もうひとり寝られるスペースを作ってしまう。ひとりなんだから、今日くらい真ん中に寄ってもいいはずはのに。  時計を見ると、午前11時。もうすぐ昼になる。  昨夜、年を越してから優介と神崎の家を出た。みんな泊まって行くから泊まっていけばいいのに、と神崎は不満そうな顔をしていたが、早川が帰ってくる時にちゃんと出迎えてあげたいから、と言って帰ってきた。岸田兄弟がヒューヒューと口笛を鳴らしていたことを思い出して若干腹が立つ。あの兄弟、いくつになっても変わらないな。  彼らの家を出たのは真夜中だったし、歩いて帰ったので、寝たのはもうすぐ朝だと言っても過言ではない時間。早川が帰宅する予定は夕方なので、もう少し寝ている予定でいたが、目が覚めてしまった。  早川が帰ってくるまで特に予定もないし、やる事もない。強いて言えば、夕食の準備だが、それをするにはまだ早すぎる時間帯だ。  せっかく早く目が覚めたのだからと、とりあえずベッドから出る。朝食にトーストを適当に焼いて、テレビを見ながら食べた。  元旦だからか、どのチャンネルも着物を来た司会者のバラエティ番組が流れている。  普段、自分からテレビを見ようとしないので、なにを見たら良いかわからない。正月は面白い番組がたくさんある、と早川が実家に戻る前にたくさん録画予約していたので、後で一緒に見ればいいか。    ひとりで過ごす元旦は味気ない。元旦をひとりで過ごすのは、もしかしたら初めてかもしれない。  佐野のところで共同生活をしていた時は、それはもう賑やかな元旦だった。朝早く起きてみんなで神社へ初詣に行って、昼は佐野が作ったお節料理をみんなで囲む。必ず毎年というわけではないが、佐藤と鮫島も家に来てくれた。夜はみんなの好きなものを出前取って、好きなだけ食べて騒いで。以前は当たり前だったが、あれは特別な時間だった。  沖縄に居た時も、なんだかんだで佐藤と鮫島が一緒に居てくれたので、ひとりでいることは無かった。  ひとりでテレビを眺めていても退屈だったので、せっかくなら掃除でもしようかと動き始めた。しかし、年末に一通り掃除をしてしまったので、さほど時間もかからずに終わってしまう。洗濯機をまわして洗濯物も干し終わったし、やれそうな事は全部終わってしまった。それでも時間はまだ2時を回ったばかり。早川の帰りを待つ時間は、どうしてこんなにも長く感じるのか。  早川と一緒に買ったテレビゲームでもしようと思ったが、早川が居ないとなんだかやる気が出ない。たまにひとりでやることもあるが、今日はそんな気になれなかった。  こういう時、自分は本当につまらない人間なんだと思う。学生の時はバイトと勉強の両立で、趣味が無いことを悩む暇なんて無かったが、今は違う。早川が居る時は良いが、居ないと何もできないし、何にも興味を持てない。  ソファに寝転がりながらテレビを眺めていたら、ふと眠気が襲ってきた。暇だし、特に抵抗する事はない。昼寝でもしようと思い、ゆっくりと目を閉じた。

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