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永太郎と早川家4

「本当に、良いご家族ですね」 「ん?良い家族に見えたなら嬉しいけど、ごくごく普通の家族だよ」 「いえ、俺にとっては、理想の親子です」  だって、自分はこんな風に一緒にアルバムを見た事がない。母親の顔を覚えていない。父親の顔は思い出したくない。  もし自分が早川のような家に生まれていたら。何度そう考えたことか。 「じゃあ、大原くんもうちの子になる?」 「…はい?」 「だって駿太とそういう仲だし、結婚ってわけにはいかないけど……こういう場合って、養子縁組とかするのかな?」 「……養子?!」 「あれ、嫌だった?」 「えっ、嫌ではないですけど…ちょっと待ってください」  何かとんでもない方向に話が飛んでいった。きっと冗談でこのような話をしているのだろうが、内容が内容なだけに、頭が追いつかない。  そんな様子の大原を見て、彼はくすくすと笑っている。 「ごめんごめん、急にする話しじゃなかったね」 「いえ、そんな…驚きはしましたけど」 「はは、そうだよね。でもね、丸っ切り冗談というわけじゃないから」  少しは本気だ、と早川の父は言った。 「以前、君が遠くに行ってしまった時の駿太は、見ていられないほど元気がなくて。本当に悲しんでいて、なんて声を掛けたらいいか分からなかったんだ」 「……っ、あの時は、本当にご迷惑をお掛けして……」 「ううん、君は悪くないんだから」  謝らなくていい、と彼は早川と同じことを言ってくれる。早川のこの言葉に何度救われたことか。 「あの時にね、普通の友達相手に、こんなに悲しむかと。こんなに感情を剥き出しにして悲しむことがあるのかと思ってね。よくよく考えたら、君の話をよくしていたし、駿太は君に友達以上の感情を抱いていたんだって気付いたんだ」  親は自分の子のことは何でも分かると聞くが、本当にそうなんだ、と大原は感心した。  早川の話では、つい最近カムアウトしたと聞いていたが、彼の両親にはとっくの昔にバレていたのだ。彼らからしたら大原が家に来るのに覚悟も何も要らなかった。ずっと前から受け入れてくれていたのだから、変に構える必要なんてなかったのだ。

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