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02 『政峰』、それは欲望に忠実な男の名前。
ギッギッ、ギィ…
「……ちっくしょう、何だよリコのやつ「性欲大魔神」って……オレ、別に普通だもん…大魔神じゃないもん…たぶん」
ぐすんっ…となりながら、昼休みも残りわずかとなったにも関わらず、教室には戻らず――まぁ、『元』彼女は同じクラスなので戻りづらいのもあるのだろうが――錆びついてボロボロとなっている屋上の入り口上の屋根部分に、慣れた足取りで上がっていく政峰。
…どうやら、次の授業をばっくれる気満々らしい。
さて、先ほどからの会話の端々で何となく察せられると思うが、彼が彼女に振られた理由。
それは、
「ほんっと、思春期真っ盛りの高校生男子なら、一日にセックス五回×(かける)週五日なんて普っ通のことじゃんかよ~っ」
…この突っ込みどころ満載の独り言からもわかる通り。
政峰の性欲が、大魔神との名に相応しいほど……ものすごぉく高かったためである。
幼少期の頃には既に胸の大きな先生に隙あらば抱き着き、
顔をぐりぐり無意識に埋め喜ぶ日々を送っていた政峰。
小学生高学年、精通を迎えれば、
クラスの発育の良い女子の服の中を想像してはオナニー三昧。
中学に入学すると、一気に体つきも逞しくなり。親に感謝と言わんばかりの女生徒受けの良い見た目に成長したため、自ずと女子の方から声をかけてくる頻度があがったのをこれ幸い利用せんと、成長するにつれパワーアップしてきた性欲、欲望のまま早々と中学一年生にして童貞を卒業。
――と、ここまではまだよかった…のだと思う。
無事童貞を卒業した相手の女生徒は、政峰より一つ上の二年生。学年は違ったが、政峰の初の彼女・恋人同士としてそれなりに楽しい日々を政峰自身は送れていると思っていた。
……しかし、彼女の方は違った。
「~もうっ!! 政峰君ってデートすれば必ずエッチ、エッチ!! 私はもっと中学生らしい恋人生活が送りたかったのに! もう無理っ政峰君とは付き合えないよっ…!!」
「……????」
放課後デートをすれば、家で両親が仕事でいないのをいいことにセックス。
休日デートも、映画館の暗闇に乗じて触り放題。デートの最中、毎回隙を見てはギリギリのボディータッチ。
テスト期間が近づき勉強会ともなれば、勉強そこそこに結局セックスセックス。
……彼女も政峰が好きだからこそ、ソレを受け入れていたものの。モノには限度というものがあって。
とうとう限界に達した彼女は、そう言って泣きながら走り去っていき。
何が悪かったかがわからないまま、
政峰少年の初めての恋人生活は――こうして、虚しく幕を閉じた。
だが、己の性欲に幼少期から素直に向き合ってきた政峰がこれに懲りるはずもなく。
見た目に騙されて寄ってくる女生徒の告白はすんなり受け入れ、時には自分からもアタックして恋人を作っては、すぐさまその溢れんばかりの性欲を相手に日々ぶつけ続けていた。
そうして、そんな政峰の強すぎる化け物のような性欲に最初は答えていても……長々と耐えられる子なんて者はおらず。
月日の流れた今日この日。
またも政峰は、その『性欲大魔神』ぶりが原因で、恋人から別れをきりだされてしまったのである。
ここまでほぼ同じ理由で振られていることに対し、
先ほどは「何でだようぅっ…」とは言ったものの。
政峰とて中学一年のあの頃とは違い、己の性欲が一般的な人より高いのだろうということは一応、理解はできるようになった。
ただ、高いとは言っても……あくまで「ちょっと」だけ。
「はぁ~…何かもうショックで落ち込むと同時にムラムラもしてきたっ、今すぐ超ヤりたいっ!!」
政峰自身は、決して自分の性欲がそこまでおかしいとは未だ思っておらず。
……結局彼は、『恋人の為にその有り余る性欲をどうにか抑えて、健全な恋人ライフを送ろう!!』という愛ある強い意志が持てない――どこまでも己の欲望に忠実なダメすぎる男なのだった。
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