3 / 15

03 セックスとは、人をバカにする。

「うがぁ~ヤりたいヤりたいっ汗だくセックスしたいよ~!! リコのバカやろ~!!」 ぐるぐるぐるぐる。時計周りのように身体を回転させながら、とっくにチャイムがなり午後の授業が始まったのなんか気にも留めずに、屋上の入り口の屋根上でジタバタと足をバタつかせ場にそぐわない言葉を叫ぶ政峰。 「…ううっ、くそう…この高ぶりまくったオレの気持ちと身体、一体どうしてくれん…」 涙目になりながら、恨みがましく呟いたその瞬間。 「ちょっとっ!!! もう別れるってどういうつもりだよっつーくん!!!」 「だ、うおぅっ…!!?」 最後の言葉をしっかり言い終わらないうちに、いきなり下の方からそんな激しい怒声が政峰の元まで聞こえてきた。 「なっなんだなんだぁっ!?」 ひょっこり。顔だけ出して下を覗くと、そこにはスマホを耳にあてこちらに背を向け立っている、一人の男子生徒の姿がいつのまにか健在しており。 「? …あいつもサボりか? …誰だろ」 上から覗いている政峰にはまったく気づいてないようで(当たり前っちゃ当たり前だが) 「だぁかぁらぁ何ソレっ!? そんな理由でオレと別れたいって、つーくんはそう言ってるワケっ!!?」 気にせず、電話相手へと怒声を浴びせていた。 …ただ、その話してる内容から政峰は (もしかして…あいつも別れ話かっ…!) とピンっ! となりはしたのだが。 ……ん? でもつーくん…って、ん? 彼女のあだ名…かなんかなのか? いや、でもつーくん…? 『つーくん』と電話相手の名のだろうか、先ほどから発しているそのあだ名らしきものに少々疑問を覚え首を傾げる政峰。 しかし。 「…っああ~~っ! そうですかっそんなにオレの性欲が強すぎて、セックス大好きすぎて耐えられないって言うんなら、お望み通り恋人解消してやんよ!! じゃあなっこのフニャチン粗チン野郎がっ!!!」 ……!!? ええええっフニャチン粗チンって、ええええっ相手おっ男ぉぉぉっ!!? と、まさかの彼のキレ台詞から飛び出た単語によって恋人らしき相手の性別判明に驚くと同時に。 ……ん、いや待って…その前に、もっとなんか…何か聞き覚えのある台詞が、何か…… っ!!! 「あっアンタもっ、セックス大好き男なのかっ…!!?」 「なっ!? ………はっ?」 おそらく自分と同類の存在を見つけてしまった興奮からか。 気づけばとんでもない言葉を、会話を終えた彼 ――宮前奏多(みやまえかなた)、十六歳に、 大声で放ってしまっていたのだった。 そして、 「……え、何…アンタいつからそこに…っていうか、なに聞いて…いや、それよりも今、セックスって…え、」 振り向いた先。誰もいないと思っていた空間に突如として現れた存在、 政峰に「えっえっ…?」と困惑声を出す奏多。 すると屋根上にいた政峰は「…そうだっ! だったら…!!」と何かナイスアイディアっ! とでも言うかのようなテンションでパアァっと顔を明るくしたと思ったら、ギッギッ音を立てながら備え付けの階段を性急に降りだし。 パシリっ!! 「…だったらさぁアンタっ、 ――オレとセックスしてみませんかっ!!」 「―――…へっ?」 ……人はセックスをしすぎるとバカになってしまうのか。 何をとち狂ったか、先ほどスマホ越しに恋人だと思われる相手とおそらく喧嘩別れをした彼、宮前奏多のスマホを持ったままの手を両手で握りしめながら――こちらも先ほど恋人に振られたばかりのはずの男、田所政峰がキラキラ輝く瞳とルンルンな声色でそうのたまい。 「………っ、するっ!! オレっあんたとセックスするよっ!!」 ……やはりこちらもセックスのしすぎか。 一瞬ポカンとしたのちに、しかしすぐさま顔を高揚させながら――宮前奏多もまた、ぎゅううっと政峰の手を強く握り返し、嬉しそうに声を弾ませ了承したのだった。 日差しの照り付ける、 午後の授業絶賛真っただ中の出来事である。     

ともだちにシェアしよう!