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2-02-1 初夢(1)
「ふぅ。今年のお正月も穏やかだなぁ」
僕は、部屋のこたつに入りつぶやいた。
今日は、一月一日、元旦。
本当に、今年のお正月はのんびり。
ふぁーあ。
あくびが出る……。
いや、のんびりすぎる!
それもそのはず、本当は、雅樹とお正月を過ごしたかったのに一人ボッチなのだ。
その理由は、年末の事。
今年最後のデートということで映画を見にいった。
その帰り路、雅樹は話を切り出した。
「めぐむ、クリスマスの時に言っていたことを覚えている? 来年の抱負ってやつ」
「えっと……たしか、チャレンジするっていうやつ?」
「そうそう」
「それで?」
「俺のチャレンジっていうのは、実はバイトなんだ!」
「えっ! バイト? 急に、どうして……?」
僕は、驚いて尋ねる。
「うん。実は、やりたいことが有ってさ。どうしてもお金がいるんだ」
「お金が……やりたいことって何なの?」
「へへへ。それはまだ秘密。でも、めぐむにも関係することさ。一応、夏まで頑張ろうと思っている。部活もあるからな」
雅樹は、そこまで言うと顔を曇らせた。
「それで……めぐむと会える時間が減っちゃうんだよ……」
雅樹が決めたことだ。
僕がとやかく言うのはおかしい。
それに、いまの雅樹の目は何かをやろうとしている男の目だ。
カッコいいし、素直に応援したい。
「そっか……しかたないよ。雅樹がしたいことがあるなら、僕は応援するよ!」
「ありがとう、めぐむ!」
うちの学校は一応進学校。
だから、宿題もそこそこ多めにでる。
それに加えて、雅樹はバスケ部という運動部に入っている。
それに、バイト。
たしかに、僕と会える時間は減っちゃうよね……。
でも、一度応援するっていったからには、僕はちゃんと応援するんだ。
と、いうことで、元旦から一人退屈にしているのだ。
時計を見る。
初詣に出かけた両親はまだ帰ってきそうにもない。
そこへ、ベランダの窓ガラスがトントンと音がなった。
「ん? なんだろう?」
こたつを出て窓ガラスを開けると、すっと、何かが部屋に入ってきた。
「あっ! シロ!」
白猫のシロだ。
ここは、マンションの2階だけど、木を伝わって入ってこられるのだ。
「にゃー」
「えっ? 新年の挨拶にきたって? お若いのに、律儀なんだから! もう、シロさんたらぁ!」
「にゃー!」
「気持ち悪い言い方するなって? そんな事言わないでよ!」
僕は、シロを胸に抱き、さっそく頭を撫でる。
「にゃー!」
「いいじゃん! 頭を撫でるぐらいさ!」
シロは、僕の腕をすり抜けて、こたつの中に潜った。
「ぷっ! なんだ。寒かっただけじゃん! 挨拶とかいってカッコつけてさ!」
「にゃー」
そんな事ない、か。
まぁ、確かに外は寒いもんね。
「いいよ、シロ。好きなだけ、僕のところであったまっておいき」
「あっ! そうだ! シロ、おせちの残りあるからあげるよ!」
「にゃ?」
「あはは。イカ焼きはないよ。でも、まってて!」
「たしか、たくさん余っていたはず……」
僕は、キッチンに入ると、冷蔵庫からかまぼこを取り出す。
部屋に戻ると、シロはおとなしく僕を待っていた。
「ほら。これ。かまぼこっていうんだよ。いつもの魚肉ソーセージみたいなやつだよ」
「にゃ! にゃ!」
「ふふふ。どう? 美味しい?」
シロはお腹が空いていたのか、ガッツいて食べる。
あっという間に平らげてしまった。
手足を舐めながら身繕いを始める。
僕は、そんなシロの頭を撫でながら、うっとりと見つめていた。
「ふあーあ」
大きなあくびが出た。
「シロを見てたら、なんだか眠くなってきたよ」
「にゃあーあ」
「シロも? ちょっとお昼寝しようか? こたつって人をダメにするよね。ふあーあ」
僕は、こてっと横になると、深い眠りに落ちていった……。
「おい、小娘! 大丈夫か?」
僕は、誰かの叫び声で目が覚めた。
「あれ? 雅樹?」
「なに言ってやがる? 頭でも打ったのか?」
目の前には、お侍? いや浪人姿の雅樹の姿があった。
着流しで胸元が少しはだけている。
やばい、胸板が……。
僕は、急に恥ずかしくなって目を背けた。
あれ? ちょっと待てよ。
ここは、どこだろう?
キョロキョロして周りを見回す。
道路もないし、ビルもない、信号もない。
あるのは古い町並みと、着物姿の人々。
時代劇のセットの中?
「ねぇ、雅樹。ここはどこ?」
「お前な。そのマサキってなんだ? 俺の名は、小次郎 だ。相当、頭の打ちどころでも悪かったとみえる」
「コジロウ? そんな、まさか……」
確かに、顔や声は雅樹そのもの。
でも、雅樹はこんな乱暴な話し方はしない。
もしかして、他の世界?
「まったく。町娘風情がこんな遊郭にくるから、トラブルに巻き込まれるんだよ。もう、助けてやらないから。早く帰れ。小娘!」
「って、僕は小娘じゃない!」
「はっ? 何いってるんだ? お前、本当に頭、大丈夫か?」
僕は、手に持っていた手提げ袋の中から小さな手鏡を見つけた。
覗いてみる。
あっ!
そこには、女の子の姿が……。
しかも、時代劇に出てくるような着物を着た娘だ。
っということは……。
僕は、慌てて、自分の胸を触った。
ない!
そして、股間を恐る恐る触る。
あっ、あった!
ホッと、肩をなでおろす。
良かった。
僕のままだ。
「いい! 小次郎って人! 僕は、こう見えても……」
そこまで言って、足首に激痛を感じた。
「痛い!」
「どうした、小娘? ん? 足首を捻挫しているじゃないか! ちっ、仕方ないな……」
小次郎は、僕をひょいっと持ち上げると、軽々と抱っこした。
「ちょ、ちょっと。いいよ、そんなことをしなくても。はっ、はずかしいよ」
「おいおい、暴れるなって! 別に恥ずかしくねぇからよ。で、お前の家はどこだ?」
小次郎が言う通り、誰も僕達の事を変だと思う人はいないようだ。
町ゆく人たちはそれぞれ足早に通りすぎていく。
大柄のお侍と、小柄な町娘。
抱っこしているぐらいじゃ、人の目には止まらないのかも。
ああ、でも……。
こうやってお姫様抱っこされていると、あの時の事を思い出す。
初恋の記憶。
僕は、目を閉じて雅樹、いや小次郎の胸に体を預けた。
はっと、目を開けると、ここは小屋らしい建物の中。
小次郎は着物の前がはだけたまま、ガーガーといびきをかいている。
この人の家かな?
小次郎って人は、乱暴だけど、そんなに悪いひとじゃないのかもしれない。
雅樹そっくりだから、そう思っちゃうのかもだけど。
そっくりと言えば……。
僕は、小次郎の股間を凝視する。
もしかして、ペニスも雅樹と同じなのかな?
はぁ、はぁ。
やだな。興奮してきちゃう……。
僕は、そぉっと、着物の裾を掴んで開いた。
あっ。ふんどしだ。
やばい。
ふんどしとか、すごくエッチなんですけど……。
でも、このふんどしを脱がさないと、ペニスを見ることができない。
僕の決心は早い。
よし!
脱がそう!
僕は、ふんどしをいろいろ探り、紐で結ばれている部分を発見した。
ここを解けばいいのかな?
そろり、そろり。
ゆっくりと外していく。
しゅっ、しゅっ、とふんどしを脱がしていく。
やばい、興奮で手が震える。
ゴクリ……。
するとそこには……。
「おい、お前! 一体どういうつもりだ!」
「ひぃ!」
いつの間にか、目を覚まして僕の手首をつかむ小次郎。
「まったく、はしたないな。最近の町娘は。そんなに、男のチンコに興味があるのか?」
「いっ、いいえ、そっ、そんな」
「ほら、見せてやるよ! でも、小便臭い小娘に見られたくらいじゃ、勃起しないけどな。がははは」
小次郎は、ふんどしをサッと取ると、僕の目の前でペニスをぶらぶらさせた。
僕は、目を逸らすフリをして横目で凝視する。
こっ、これは……。
たしかに、雅樹のペニスだ。
ああ、触りたい……。
そして、しゃぶりつきたい。
僕だけの、ペニス君……。
ふぅ。
でも、我慢、我慢。
僕は、エッチな衝動をぐっと抑える。
よし。
僕は、目をギュッと閉じて、大きく息を吸う。
そして、わざとらしく大声で悲鳴を上げた。
「キャー! 変態! そんな変なもの見せないでよ!」
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