8 / 55

2-04 ある冬の日に

今日は久ぶりの雅樹とのデート。 朝から気持ちが昂ってしかたない。 「いってきます!」 はやる気持ちを抑え、学校へ向かった。 通学路を小走りしながら、デートでしたいことを思い浮かべる。 「今日はいろんな話をするぞ! うふふ」 まず手を繋ぎたい。 あわよくばキスしたい。 そして……。 僕はチェリー公園に入った。 珍しくシロの姿をあった。 「やぁ、シロ。久しぶりだね。元気?」 僕はシロの前に座り込む。 「にゃー」 「それはよかった。元気そうでなにより」 僕はシロの脇に手を入れ持ち上げてあげる。 シロはじっと僕を見つめた。 「え、僕が楽しそうだって? それはね」 透き通るような目。 すべてを見透かされているよう。 「えっと、今度教えてあげる。学校に遅れるからまたね!」 僕はシロをやさしく下ろすと、手を小さく振って、駅に駆け出した。 教室に入り、席についた。 雅樹が後から入って来た。 仲の良い友達に挨拶をしている。 僕は雅樹と軽く目を合わせ無言で挨拶をした。 おはよう、雅樹。 めぐむ、おはよう。 雅樹とは、依然として「たまに話をするクラスメイト」の距離間をキープしている。 相変わらず雅樹は、バイトと部活で忙しい。 去年の年末から、まともにデートをしていない。 ちょっと、スマホでメールのやり取りをするぐらい。 学校では、毎日、雅樹とは会えるけど、まったく会話がない日も珍しくない。 でも、それはいいんだ。 心配なのは、雅樹の体。 雅樹は、放課後も毎日のようにバイトのシフトを入れているようだ。 部活もたまに休みをいれているらしい。 最近は、明らかに疲れているように見える。 夜寝る前、雅樹を思うとき、何度もメールに『雅樹の体が心配』と送ろうとした。 でも送信ボタンを押せなかった。 応援するといった手前、言い出しずらい。 でも、今日のデートではちゃんと言おうと思う。 雅樹の身体が心配だから、無理はしないでねって。 でも……。 こんなに頑張らなくてはいけない、やりたいことって何だろう? ううん。 何にしても、僕は応援していることには変わらない。 だから、たまにしか会えなくても我慢しなくては……。 授業が終わり、僕は一旦家に戻った。 雅樹のバイトは夕方に終わる。 その後いつものショッピングモールで待ち合わせだ。 僕は少し早いけど、家を出た。 美映留中央駅に到着した。 時計を見る。 いくら何でも、早すぎたかな? 本屋に行こうかと足を向けかけて立ち止まる。 あっ、そうだ! こっそりと、雅樹のバイト先を覗いてみよう。 雅樹の働くファミレスは、何度か行ったことがある。 ショッピングモールからほど近い。 ちょっと緊張するな。 僕が行ったら驚くだろうな。 僕は緊張半分、ウキウキ半分で歩きだした。 ファミレスに着いた。 どんな風に雅樹は働いているんだろう。 文化祭の時のウエイター姿を想像する。 きっと、どんな制服でも似合うんだろうな。 そうだ。 外から様子を見てみよう! 実は、入り口に立った途端、中に入るのに少し怖じ気づいてしまったのだ。 そうだよ、万一、いなかったら困るし、確認しよう。うん。 僕は、窓の見える方に回り込む。 そして、そっと、中の様子を伺う。 「ずいぶん混雑しているな……」 きっと満席。 店内を見回して制服を着た店員を探す。 席の間をこまごま動く人物に目をやる。 あ、雅樹。 見つけた。 想像した通りホールの仕事。 忙しく動きまわっている。 やっぱり制服が似合っていてカッコいい。 他とは明らかに違う制服を着た女性が目に入った。 あの人がきっと店長さんだ。 その人物からいろいろ指示が飛んでいるようだ。 ふぅ。 僕は溜息をついた。 中に入って、お茶でもしようかと思ったけど、止めておこう。 雅樹にはあとで会えるし、頑張っている雅樹を見ることができた。 今はこれで十分だ。 自分が店に入ったら、ただでさえ忙しいのに、雅樹に余計な気を遣わせてしまう。 僕は、ファミレスを後にした。 雅樹、頑張ってね。また後で。 さて、どこで時間をつぶすか……。 僕は何も考えずに、ふらふらと、ショッピングモールにたどり着いた。 とりあえずは、ということでフードコートに行くことにする。 フードコートはファミレスとは打って変わって空いていた。 そういえば最近来てなかったな。 いつも座る席には、カップルが座っていた。 僕は、遠目でその席が見える席についた。 なるほど、周りからはこう見えるのか。 僕はそのカップルを観察していた。 楽しそうに話をしている。 微笑ましい。 あんな風に僕と雅樹も見えるのかな。 雅樹とのことを思い出す。 しかし……。 しばらくすると、カップルは隣どおしに座り直し、いちゃいちゃし始めた。 むっ! なんか、無償に腹が立つ。 ふぅ。まぁ、いいけど……。 僕は席を立った。 さて、次はどこへ行こうか。 僕はモール内のスポーツ用品店に入った。 そして、バスケットボールのコーナーに向かう。 僕はスポーツに関してはまるで知識がない。 だから、せめて雅樹がやっているバスケのことを、すこしでも知ることができたらと思ったのだ。 バスケットボールのコーナーは売り場面積の多くを取っていた。 へぇ、人気なんだ。 以前、雅樹の誕生日プレゼントを探しに美映留中央の駅ビルのスポーツ用品店に行ったことがあった。 そこに比べると、広さがまるで違う。 商品棚にはいろんな商品が陳列されている。 僕は感心して眺める。 靴とボールぐらいかと思っていた。 でも、ユニフォームやTシャツなどの衣類から、トレーニング用品など関連用品が多数ある。 せっかくだから、何か買おうかと思って、小物に目をやる。 と、その時。 雅樹からメールで連絡がはいった。 『めぐむ、ごめん。今日はいけなくなった。忙しくなってヘルプに入る。この埋め合わせは必ずするから。本当にごめん』 目の前が真っ暗になった。 あぁ……。 そんな……。 高まっていた気持ちが、一気に冷める。 力が抜ける。 目を瞑り、そしてもう一度読み直す。 同じ文面。 はぁ……。 僕は宙を見た。 でも、雅樹は頑張っているんだ。と思い直した。 気を振り絞って、『わかった。頑張ってね』と返信した。 僕はスポーツ店を出て、ショッピングモールの出口に向かった……。 家の最寄駅に着いた。 外はもう真っ暗だ。 僕はとぼとぼと歩いた。 チェリー公園に差し掛かると、街灯に照らされたシロの姿があった。 「にゃー」 僕はシロに近づくと、シロを抱きかかえた。 「シロ、今日のデート駄目になっちゃった」 そう言うと、我慢していた涙が一斉に流れ落ちてきた。 「にゃー」 シロは心配そうに僕の顔を伺う。 僕は嗚咽を我慢しながらしばらくすすり泣いた。 シロはおとなしくそのままでいてくれた。 「ありがとう、シロ。僕を慰めてくれるのかい?」 「にゃー」 僕は思わずシロをほおずりする。 でも直ぐに、シロは嫌がる仕草を見せた。 「いいじゃないか、シロ。僕達は親友だろ?」 「にゃー」 頬の涙はもう乾いている。 「泣いたら少し気が晴れたよ。ありがとな。シロ」 「にゃー」 「じゃ、またね」 僕は、シロの頭を撫でてやり、帰路についた。 「ただいま」 玄関に入ると、お母さんが出迎えてくれた。 「あら、早かったわね」 「うん。友達の都合が悪くなって、中止になったんだ」 「そう、残念だったわね。じゃあ、一緒に夕ご飯たべましょっか」 僕はリビングに入ると、ソファになだれ込んだ。 夕食をすませ、お風呂に入った。 頭を洗いながら雅樹のことを思う。 今日、雅樹が頑張っている姿を見た。 あれを見てしまったら、雅樹を責められない。 でも……。 雅樹と話がしたい。 雅樹と触れ合いたい。 僕は目を閉じて、雅樹がここにいることを想像する。 雅樹なら……。 きっと、こんな風に僕の乳首をさわる。 自分の乳首の先端を擦った。 あぁ……。 お湯が出っぱなしのシャワーが床に落ちる。 雅樹の触り方。 気持ちいいよ……。 そして、固くなりかけたペニスに触れた。 あっ、でも今日はアナルでいきたい。 あの時のように……。 僕はお尻の穴をすこし湿らせ、そしてゆっくりと指を入れる。 うぅ。 切ない。 僕は目を瞑る。 雅樹のペニスをイメージする。 挿入される圧迫感。 あぁ。 だめだ。自然と喘いでしまう。 シャワーの音で誤魔化せているといいけど……。 慣れてくると、指を軽く出し入れさせる。 くちゅくちゅと音が漏れる。 雅樹のピストン運動と同じように徐々に激しくする。 あっ、あっ。 お尻の中の感じるところが刺激されて気持ちいい。 ペニスの先からおつゆが垂れてくる。 雅樹の顔を思い浮かべた。 笑顔の雅樹……。 頑張っている真剣な顔の雅樹……。 指をゆっくりと奥まで入れる。 あぁん、あん。 雅樹、大好き。 雅樹の硬くて熱いの。 もっと、押し込めて。 もうすこし乱暴にしてもいいからね……。 下半身から熱いものが込み上げてくる。 あっ、あっ、あっ。 お尻の中の敏感な部分の刺激。 止まらない喘ぎ声。 はぁ、はぁ、息苦しい。 いきそう……。 雅樹、いっしょに……。 あぁ……。 頭が白くなり浴槽にもたれ込んだ。 僕は絶頂に達した。 ペニスの先からは透明なおつゆが駄々洩れになっている。 あれ? 僕は、涙がでていたのに気づいた。 寂しいよ、雅樹……。

ともだちにシェアしよう!