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2-10-1 アキさんへ相談(1)
僕はある決断をした。
雅樹は、僕との時間を作るためにバイトを決意し、そして行動した。
あの内気なジュンだって、好きな人に近づくために一歩踏み出した。
僕はどうだ?
ただ、めそめそしてただけじゃないか。
何もしてない。
先日、拓海さんに指摘されたことが頭をよぎる。
そうだ!
僕は、雅樹に釣り合うだけの人間になるんだ。
拓海さんにだって、認めてもらえるように。
僕は、意を決して、アキさんに連絡をとった。
すると、二つ返事で相談に乗ってくれると言ってくれた。
僕は、美映留中央駅に到着した。
前に行った時の道のりを思い出しながら歩く。
「たしか、この辺だったはず……」
ムーランルージュの看板が見える。
よかった!
あってた。
裏手の従業員エレベータに乗った。
香水の匂いが立ち込めている。
緊張する……。
エレベータを降りると、スタッフルームの入り口があった。
そうだ……この場所。
僕は呼び出しベルを鳴らした。
「はい!」という声とともに、アキさんが扉から顔を覗かせる。
「いらっしゃい! めぐむ君!」
僕は前と同じように、スタッフルームに通された。
かしこまってソファに座った。
自然とアキさんを目で追ってしまう。
ああ、アキさんってやっぱり綺麗……。
「元気してた? めぐむ君」
「はい。アキさん」
アキさんの目。
優しさを湛えた瞳。
「で、相談ってなに?」
「あの……」
僕は一呼吸入れ、話し始めた。
アキさんは言った。
「そう、女装をしたいのね?」
アキさんは、僕の真剣さを推し量るように見つめている。
僕は、ずっと考えていた。
雅樹との距離をもっと近づける。
そんな方法を……。
そして出した結論。
それは、僕が女装をすること。
男同士の距離と、男女の距離では雲泥の差だ。
確かに、二人きりになれれば、そんなことは関係ない。
でも、簡単に二人きりになれない以上、このままでは、手を握ることはもちろん、触れ合うこともできない。
顔も近づけられない。
見つめ合うことだって無理だ。
女装には二つの目的がある。
一つ目は、まず女の子に見えること。
これができれば、誰の目も気にせずに雅樹との距離を縮められる。
そう、普通の男女のカップルに化ければ、いつでも手を繋いでいられるんだ。
二つ目は、知り合いの目を誤魔化せること。
僕が僕でなければ、雅樹と一緒にいたって不審に思われることはない。
つまり、クラスメイトの前だって腕を組んで歩けるってこと。
僕は、このことをアキさんに話した。
アキさんは言った。
「めぐむ君、つまり別人の女性になりたいってことなのね?」
僕は頷く。
「できれば、なるべく普通の目立たない姿になりたいです」
「だいたい分かったわ……」
「だめでしょうか?」
「そうね。めぐむ君の場合、珍しいケースじゃないかしら?」
アキさんは説明する。
「普通は、女の子のように可愛くなりたいとか、女の子として扱われたい。とか、だと思うの」
「……僕の動機は不純でしょうか?」
「ううん。そんなことないわ。だって、彼と一緒にいられる為なら、何でもする。ってことでしょ?」
アキさんは目を閉じて物思いにふけっている。
そして目を開けると、僕の両手を包み込むように握った。
アキさんの手。
温かい。
「あぁ、感動しちゃった! めぐむ君って健気。協力するわ!」
「ありがとうございます!」
僕は、立ち上がり深々とお辞儀をした。
「じゃあ、さっそくだけど、めぐむ君。体のチェックをするから全部脱いで」
「わかりました!」
僕は、アキさんの言うとおり、裸になった。
「そうね、パンツも脱いでもらえる?」
アキさんは冗談を言っているように見えない。
僕は素直にパンツを脱いで全裸になった。
普通だったら恥ずかしいと思う。
でも不思議とアキさんの前ではそんな感情は沸いてこない。
アキさんは、僕の顔や髪の毛を触り、肌や体つき、手足などの部位を調べた。
メジャーで採寸もした。
「ペニスも見させてね」
アキさんは僕の前に跪く。
そして、僕のペニスを握ったり、大きさを確認した。
「めぐむ君。勃起させてもいいかしら?」
「はい。でも、彼以外では大きくならないかもしれません」
アキさんは、不敵に微笑む。
「あら、本当かしら? 自信たっぷりね。うふふ」
そう言うと、アキさんは僕のペニスをしごき始めた。
優しい手つき。
そして、フェラ……。
ああ、気持ちいい。
でも、アキさん、ごめんなさい。僕、雅樹じゃないと、だめなんだ……。
そんな風に思っていた矢先、僕のペニスははちきれんばかりに勃起してしまった。
「うそでしょ……こんなことって……」
「めぐむ君、自信をなくさなくていいわ。私はどんなペニスもおっきくできるの。だから、彼への気持ちを疑わなくて大丈夫」
そう言うと、アキさんは勃起した僕のペニスの大きさをチェックを始めた。
「へぇ。このサイズなら水着もいけそうね……ふむふむ」
アキさんの独り言が聞こえる。
そして、一通り僕のペニスの確認したところで、僕を見上げた。
「ねぇ、めぐむ君。ちょっと聞いていいかしら?」
「はい」
「アナルでいくことってできる?」
僕は急な質問に赤面する。
でも、アキさんは真面目に質問しているんだ。
真面目に答えなきゃ……。
「……はい。いけます」
「よかったわ。アナルでいけないと彼とするとき辛いもんね」
僕に優しく微笑む。
そっか。
きっと、そういった悩みを抱えた人も多いってことなんだ。
僕は、雅樹との最初のエッチで気持ちよくなることができた。
もしかしたら、それって幸運な事だったのかもしれない。
ああ、僕は、男同士の愛について、まだまだ知らないことばかりなんだ。
アキさんは、言った。
「じゃあ、めぐむ君。服を着ていいわ。ありがとう」
僕は大きくなったままのペニスに目をやる。
ああ、どうしよう?
恥ずかしい。
でもアキさんにお願いをする。
「アキさん。その。僕のペニス、気持ちよくさせてくれませんか?」
アキさんは、はっとした表情をした。
「あっ、めぐむ君。ごめんなさい。ちゃんと責任とらないとだよね」
アキさんは僕のペニスに再び触れようとしたとき、「あっ、そうだ!」と声を上げた。
「めぐむ君。アナルとペニス同時でいってみない?」
「そっ、そんなことできるんですか?」
「ちょっと難しいんだけど。一回体験してみてもいいかもね」
同時にいくなんて……。
だって、絶頂の感じは全然違う。
僕はアナルでいくほうが断然好きだけど、同時に射精できるって……。
一体、どんな感じなんだろう。
恥ずかしい。
でも、興味はある。
「あの……アキさん」
「あぁ、でも、ごめんなさい。考えてみたら、私とエッチすることになるから嫌よね」
アキさんは、「そうよ、彼がいるんだから、うん」と独り言をいうと、
「フェラでいかせてあげるね!」
と言い、僕のペニスにしゃぶりついた。
そっ、そんな……。
僕は、アキさんとならエッチしても全然かまわない!
普通の人としてしまったら、雅樹に対して、浮気みたいな後ろめたい気持ちになるだろう。
でも、アキさんとだったら大丈夫。
そう、だって、僕にとってはアキさんはお姉さんみたいな存在なんだ。
だから、だから、あっ、あっ、いきそう。
どぴゅ……。
そんなことを考えている間に、あっと言う間に射精してしまった。
はぁ、はぁ。
どうして、こんなすぐに……。
アキさんは、口を拭いながら、「たくさん出ちゃったね!」と、僕に優しく声をかけてくれた。
僕は、恥ずかしくなって、「はい……」と縮こまって答えた。
ああ、なんて、すごいフェラなんだ。
アキさんって……すごい。
アキさんのようなフェラが出きれば、きっと雅樹をもっと喜ばせてあげられるはず……。
雅樹の喜ぶ顔が見たい!
そう思ったら、すでに口走っていた。
「アキさんのフェラ、教えてもらえないでしょうか!」
アキさんは僕の言葉に一瞬固まった。
そして、優しい声で僕に言った。
「ごめんね、めぐむ君。それは無理かな……」
「そっ、そんな……」
アキさんは、首を振った。
「めぐむ君。勘違いしないで、意地悪で言っているわけじゃないの」
「えっ?」
「フェラってね、テクニックだけじゃないの。フェラをする二人の関係、その場の雰囲気、そして気持ちの動きなんかもすべて関係するの。だから、これが正解なんてものはないわ。彼とのお付き合いの中で、時間をかけてゆっくりと上手になっていくのがいいと思うわ」
雷に打たれた気がした。
フェラは彼を愛する行為そのものなんだ。
近道をしようとした自分が恥ずかしい。
「はい! わかりました!」
アキさんは、僕を遠回しにたしなめてくれたんだ。
僕は、深々と頭を下げた。
「ふふふ。でも、めぐむ君らしいな。彼のためだったら一生懸命ってところ。大好き!」
アキさんは、そう言うと僕に抱き着いた。
僕は、アキさんの抱擁を受けながら、アキさんのように上手になるんだ、と強く心に決めた。
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