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2-10-2 アキさんへ相談(2)
「さて、体チェックの結果だけど……」
アキさんは、説明し始める。
「そうね、めぐむ君は、もともと女性よりの体つきをしているから、何も問題ないわ」
そう言ってから、「あっ、でも」と言った。
「そうか、めぐむ君にとっては、コンプレックよね。女性っぽいというのは。私にとっては、うらやましい限りだけど……」
あぁ、アキさんって、本当に、お姉さんみたいな存在なんだ。
僕なんかに気を使ってくれる。
僕の複雑な気持ちをちゃんと汲んでくれる。
「肌は色白できめも細かいし、でも張りはある。体毛も薄いから、ちょっとしたケアをすれば簡単に女の子になれるわよ」
アキさんは、独り言をぶつぶつと呟いている。
女装の方針を考えているようだ。
「よし、まずは無理せずに定番でいきましょう!」
アキさんは奥のロッカールームから、お店の衣装を持ってくる。
「まずはこれを着てみて!」
学校の制服風衣装だ。
チェック柄のスカートにベスト。それにリボン。
僕は、アキさんの言われるがままに試着した。
アキさんは僕の姿を見る。
「ちょどいいわね。やっぱり高校生だから、制服をベースにして正解ね」
「じゃ、メイクをしてみましょ。そこに座って」
アキさんはメイクを始めた。
最後にウィッグをつけるまで、ものの10分もかからなかっただろう。
「どう? そこの鏡で見てみて」
アキさんに促されるままに、僕は鏡の前に立った。
一瞬声を失う。
「アキさん、すごいです! まるで、僕じゃないみたいです!」
うん。これは、街中でよく見かける普通の女子高校生。
アキさんは、僕の出来をみて満足そうな顔をした。
「めぐむ君は、もともと女顔だから自然な感じで。ただ変装を意識してアイメイクはしっかり。どう、まつげも上がって目がぱっちり見えるでしょ?」
「はい」
「それに、顔の輪郭をこうやって、少しウィッグで隠せば……ほら! ぜんぜん違った印象になるから」
僕は、ずっと衝撃を受けていた。
見た目を誤魔化すというレベルではない。
その人が持つ雰囲気がガラリと変わってしまう。
メイクだけで、本当に他人になれるなんて。
まるで魔法……。
「本当は、もっと可愛くできるんだけど。アイドルみたいに。でも、嫌でしょ? そうゆうの?」
「はい。これでいいです。いや、これがいいです」
「そうね、バリエーションをいくつか考えておくといいかもね。服装や季節に合わせるもの必要だから」
僕は何度も鏡映る自分の顔、姿を見直した。
振り返ってポーズをとる。
あぁ、これで雅樹と思う存分デートできる。
そう思うと、気持ちが上がってくる。
アキさんは、時計をみた。
「まだ時間はあるわね」
きっと、お店を開くまでのことだろう。
僕の方を向いて言った。
「そのままの格好で、ちょっと外に出てみない? ついでに、足りないものを買ってきましょう!」
そっ、外に……。
そんな。突然。
怖い。
笑われたらどうしよう。
男だってばれたらどうしよう。
でも、いずれは、外に出て雅樹とデートするんだ。
怖気づいていてはだめ。
僕は、自分に鞭をうって勇気を出す。
「わかりました。お願いします!」
外に出た。
アキさんに導かれ、コスメと下着を買いに駅ビルのショップに向かった。
初めてのスカート。
スースーする。
でも、このくらい大丈夫。
雅樹と並んで歩くためと思えば、まったく問題ない。
「歩き方とか注意してね。でも、めぐむ君は大丈夫かな。もともと内股みたいだから」
いろんな人とすれ違う。
前から、高校生ぐらいの男子のグループがやってきた。
やばい。
僕のことをジロジロ見ている。
恥ずかしくて目を逸らす。
ああ、女装を疑っている?
心臓がドキドキしてくる。
間近をすれ違う。
ふと、男子達を横目で見た。
あれ? 僕の太もも辺りを見ている?
ふぅ、そっか。
その食い入るような視線は、男の子が女の子に向けるもの。だよね?
よし! 大丈夫だ。
女装だってバレてないし、女の子って認識されている! 完璧!
ホッして緊張が解ける。
でも……。
男の子のこういったエッチな視線って、正直いい気がしない。
なるほど、こういうことか。実感した。
よし!
雅樹にも気を付けるように言わないと。
ふふふ。
でも、僕をエッチな視線で見るのはいいからね! 雅樹!
「あら、めぐむ君。楽しそうね。慣れた?」
「えっ、ええ。はい。楽しいです!」
中央駅の駅ビルに着いた。
エスカレータでレディースファッションのフロアまで上がった。
普段、僕が足を踏み入れないエリア。
「へぇ。こんなにお客さんが入っているんだ」
僕は、新鮮な気持ちで、ショップを眺めた。
アキさんに連れられ、化粧品を取り扱うショップへやってきた。
「コスメは、私が基本的なものを選んであげるわね」
「はい。お願いします」
僕達は周りからはどう見られているんだろう?
仲のいい姉妹かな?
それとも友達同士?
美人教師とその生徒?
ふふふ。
でも、二人とも男。
ここにいる誰にもバレてないんだ。
なんか、快感!
僕が想像している間に、アキさんはレジに並んでいた。
「これは、私からのプレゼント。最初は色々とお金がかかるから」
遠慮するのは失礼と思い、僕は素直にお礼を言った。
「ありがとうございます。アキさん」
「いいえ、どういたしまして」
アキさんはにっこり微笑んだ。
「次は、と」
アキさんと僕はランジェリーショップの前まで来た。
「そうね。ショーツとブラは自分で選んで買ってみて。サイズは教えた通りで」
「一人でですか?」
「そう、めぐむ君、一人で」
「そんな、不安です。アキさん……」
「全然平気、めぐむ君なら。声だって高いから、すこし話し方を意識すれば大丈夫。ほら、練習だと思って!」
そうだ!
買い物くらい自分だけでできなくでは。
デートの時だって、こんな場面は普通にあるわけだし。
僕は決心した。
「わかりました。アキさん。どのようなものを買えばいいですか?」
「そうね。めぐむ君の場合、ショーツは極端に小さいものじゃなければ大抵大丈夫だから……」
はぁ。
複雑な気持ち。
僕のは小さいから、普通に収まってしまうんだ。女性向けなのに……。
僕は、意を決し、恐る恐る店内に入った。
やっぱり、恥ずかしい。
あまり、キョロキョロせずにうつむきながら、店内をめぐる。
いろいろな色、形、デザインがあるのが分かった。
でも、こんなに種類があったら選び切れない。
一体、どうしたら……。
そうだ!
雅樹の好みに合わせればいいんだ。
雅樹はどんなのが好みだろ?
きっと雅樹は、
「めぐむに似合っていればなんでもいいよ!」
とか言いそう。
僕は、思わずクスクス笑った。
そこへ店員さんが声をかけてきた。
「どのようなものをお探しですか?」
ドキッ!
やばい。動揺を抑える。
受け答え、しなきゃ!
深呼吸をする。
ふぅ。
よし、大丈夫。
無意識に喉の辺りを触る。
ちゃんと、女の子風の声だせるかな?
「あの、あまり派手じゃないもので、おすすめはありますか?」
「普段使いでよろしいですか?」
普段使い? そっか、女の子はシーンに合わせて変えるのか。
「えっと、その、デート用とかで……」
言ってから急に恥ずかしくなる。
顔から火がでそう。
「そうですね……お客様なら、こちらがお勧めです。清潔感があってよろしいかと」
店員さんが手にしたのは、白がベースのパステルカラーのショーツとブラジャーのセット。
レースや刺しゅうが施されていてとても可愛い。
これなら、雅樹もいいねって言ってくれそうだ。
ショーツは、クリスマスプレゼントでもらったショーツと同じような形。
うん。
これならお尻がすっぽり入るタイプだから違和感なく穿ける。
ブラジャーの方は……。
こっちは、僕にとっては、まったくのお飾りだから良し悪しは正直分からない。
でも、きっと店員さんのおすすめだから、間違いはないはず。
よし! これに決めよう。
ふと、ディスプレイされた黒いTバックのショーツが目に入った。
すっ、すごい。
お尻のところ、こんなに細いんだ。
あぁ、これ、すこしずらせばアナルが丸見えになっちゃうじゃん……。
フッと、モヤモヤがやってきた……。
雅樹との熱いキス。
雅樹の手は、いつしか僕の腰からお尻に移動する。
スカートを捲ると、そこには黒いTバックのショーツが現れた。
「へぇ。めぐむ、いやらしいの穿いているな」
「だめ、ジロジロみないでよ。雅樹」
「何言っているんだ? こんなエロいパンツ穿いてきて」
雅樹は、両手で僕のお尻を揉み始める。
「やべっ。パンツ穿いているのに、直接、尻を触れるってすごいな」
「あっ、そんなに思いっきり揉まないでよ……」
雅樹は、しばらく僕のお尻を揉み続け、そしてある事に気が付く。
「あれ? これってもしかして、パンツ穿いたままできるんじゃないか?」
「えっ? どういうこと」
「だからさ」
雅樹は、ショーツのお尻の部分の紐に指をひっけて、すっとずらす。
「ほら、ちょっとずらしただけで、お尻の穴が丸が見えだぞ。うわっ、エロい」
雅樹の指がアナルに触れた。
「ちょ、ちょっと! やめてよ!」
「なんだ? めぐむ! 本当は、このまま入れてほしいんじゃないのか?」
「そっ、そんなこと、あるわけないよ……」
「嘘つけ! じゃ、なんで、こんなにアナルがヒクヒクしているんだ!」
いつの間にか剥き出しになっていた雅樹のペニスがアナルに触れた。
「あっ、あーっ。入ってくるーっ!」
「あの、お客様?」
「へっ?」
あっ! しまった! また、いつもの癖……。
しかも、こんなお店で。
「いかが致しましょうか? そちらのTバックのセットもオススメですよ。ヒップラインが綺麗に出ますし、男性ウケはバッチリなので、彼も喜んでくれると思います」
恥ずかしい。
エッチな子だと思われたかも……。
「あ、いえ。いいんです……これをお願いします……」
僕は慌てておすすめの白いショーツとブラジャーのセットを指さした。
「ブラジャーの試着はされますか? 宜しければ、サイズをお測り致しますが」
「あっ、大丈夫です」
僕は、慌ててアキさんから聞いているサイズを伝えた。
レジでお会計を済ませると、外で待っていたアキさんの元へ戻った。
「うまく買えたようね。気に入ったの買えた?」
気に入った?
頭の中に真っ先に思い浮かんだのは、Tバックのショーツ……。
いやいや。でも、いつかは……。
「……はい。可愛いのを買えました」
「うん、良かったわね」
アキさんのお店に戻ってきた。
「そうそう、めぐむ君。これ、渡しておくね」
アキさんは、スタッフルームのカードキーとロッカーの鍵を僕に手渡した。
「ここ好きな時に使っていいわよ。女装グッズはロッカーを使ってもらえばいいから」
「本当ですか!」
「ええ」
僕は、どこで着替えればいいのか心配していた。
家では無理。
外なら、共用トイレだけど、そうたくさんあるわけではない。
女装用品を保管する場所もそう。
アキさんは、それを見越して、気を回してくれた。
「あと、スタッフ達に説明が面倒ね……そうだ、めぐむ君、私の従弟ってことにしておきましょうか。これからは呼び捨てするね。めぐむ」
「はい、アキさん」
うれしい。
これで本当に僕のお姉さんだ。
帰る時間になった。
「アキさん、今日は、何から何までありがとうございました」
「私も手伝えて本当にうれしい。じゃあ、またね。めぐむ」
帰路につきながら、僕はこれからのことを思い浮かべる。
少しづつ勉強していかなくちゃ。
メイクの仕方や服の着こなし、それに、女性の言葉使いや立ち振る舞い。
でも、大丈夫。
僕と雅樹の二人の時間のためだから、絶対にできる。
よし、かんばろう!
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