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2-17-2 オープンキャンパス(2)
夜遅く誰もいなくなったとある研究室。
僕は、雅樹の連絡を受けて、二人で集合する。
「雅樹、こんな夜になんの実験するの?」
「ん? 言ってなかったか。ちょっとした仮説を思いついたんだ」
「仮説?」
「そう。人間って、自然の一部だろ?」
「何を急に言い出すの? まぁ、そうだけど」
「だとしたら、人間の体と、自然の形と相性がいいんじゃないかって思うんだ」
「形? 相性? なんのこと?」
雅樹は、僕の手首をつかむ。
「痛い……雅樹、どうしちゃったの?」
「めぐむ、悪いけど、脱いでそこに横になってくれないか?」
雅樹は、応接セットのソファを指さす。
「えっ? どうして脱ぐの? 意味わからない」
「これを見てくれ」
雅樹は、段ボールを開く。中に入っているのは、沢山のキュウリ。
いろいろな形をしている。
「キュウリなんて、何に使うの?」
「ん? わからないか? めぐむの、お尻に入れるんだよ」
「ぶっ! どうして?」
「つまり、俺の仮説だと、めぐむの気持ちのいいところにピッタリと合う、そんなキュウリがあるはずなんだ」
「そっ、そんなの、あるわけないよ!」
「いいや、あるはずだ。実験してみなきゃわからないだろ?」
「だからって……あっ、やめて」
雅樹は、僕を四つん這いにさせると、ズボンとパンツをペロンと下ろす。
そして、強引に僕のアナルにキュウリを押し当てる。
「あっ、だめ」
「大丈夫、ちゃんと洗ってあるから。気持ちよかったら言ってくれよな」
そう言うと、雅樹はキュウリをズズッとアナルに入れる。
「あっ、入ってくる……」
すぐに、ぐりぐりと動かし始める。
「あっ、あっ、痛い……ダメっ」
「ん? これは違うか。やっぱり、微妙な形の差があるんだな。データをメモしてっと」
雅樹は、僕の反応を見て、うんうんと頷いたり、唸ったりしている。
何本かのキュウリが僕のお尻の中に出たり入ったりした。
雅樹の言う通り、形や太さで気持ち良さは違うみたい。
でも、そうしているうちに下半身が熱くなってくる。
ああ、雅樹のが欲しい……。
「はぁ、はぁ」
僕は、気持ちがよくて、よだれがつーっと垂れる。
「興味深いな、だいたい分かったぞ」
「はぁ、はぁ、何がわかったの?」
「つまり、一番いい反応したのは、このキュウリだ。どう? 見覚えない?」
「えっ?」
雅樹が手にしたキュウリ。
それって……もしかして……。
「そうだ。俺のペニスの形と似ているんだ。ふむ。よし、俺のを入れてみるか」
雅樹は、いつの間にか、ズボンとパンツを脱ぎ、ペニスをあらわにする。
そして、僕の腰を両手で抑える。
「いくぞ! めぐむ」
「うん……雅樹きて、はぁ、はぁ」
「あのー、でも、研究ばっかりじゃ、遊ぶ時間ないじゃないですか?」
誰かのとんちんかんな質問に、僕は妄想から一機に覚めた。
声のする方を見る。
やっぱり。
あのカップルだ。
女子の方が手を挙げている。
「遊ぶ時間がないと、ぜんぜん楽しくないんですけど。ねぇ、マコトちゃん!」
「おっ、おう! そうだな」
男子の方も、うんうんっと頷いている。
二人の発言に、大学生の先輩も、他に参加している高校生達もあっけに取られた。
しばらくして、大学生の先輩は口を開いた。
「まぁ、そうですね。そんなに遊んでいる時間はないかな……論文をしっかり描かないと卒業できないし」
「つまんなーい」
カップルの女子は、興味無さそうに爪をいじり始めた。
男子の方は、スマホ。
息が合っている。
大学生の先輩は、やれやれというポーズをとった。
グループの他の人達もあきれ顔。
はぁ。
僕は溜息をつく。
この二人は、なんのためにここに来たのだろう。
自分の将来を真剣に考えていないなんて。
と、言うのは建て前。
この二人の将来なんて僕にはどうでもいい。
それより、今日の妄想はいい調子なのに、いいところで、決まってこのカップルに邪魔をされてしまう。
さっきは、せっかく雅樹とエッチができそうだったのに……。
ああ、もうだめだ。
こんなのでイライラしちゃ。
世の中には、こういう人達もいるんだ。
迷惑なカップル。
でも、そうなんだ。
僕と雅樹だって、一歩間違えば同じようになっていたかもしれない。
雅樹は、男同士のカップルは、他人を不快にさせてしまうかもしれない。
そう言った。
だから、これは僕に対する反面教師みたいなもの。
僕達も気を付けよう。同じようにならないように。
お昼になった。
学食で、グループごとで昼食を取る。
僕は、カツカレーをチョイスした。
うん。
美味しそうだ。
一口、口に入れてみる。
美味しい!
少し辛口。
ルーは緩めだけどコクがあってカツの衣によく馴染む。
カツカレーは大正解だった。
これで、目の前にこのカップルさえいなければ良かったのに……。
目の前のカップルは、ここでも、周りの空気はお構い無しに、我が物顔でイチャイチャし始める。
せっかくの美味しいランチが台無し。
ふぅ。
本当にイライラする。
僕は、黙々と食べる。
よし、あのカップルなんて気にせず、妄想しよう!
学食でランチを食べ終わった僕と雅樹。
カフェテリアで、食後のひと時を楽しむ。
雅樹は、コーヒーを飲みながら僕を見つめる。
僕は、ケーキを一口サイズにしてフォークで刺す。
そして、はむっと口に入れる。
「んー。美味しい!」
「ああ、めぐむは今日もデザート頼んだのか?」
「うん!」
「太るぞ、ははは」
「そっ、そんな事無いもん!」
「あれ? ほっぺにクリーム付いているぞ」
「ほんと? ねぇ、雅樹。取ってよ!」
僕は、ほっぺを雅樹に突き出す。
「しょうがないなぁ。めぐむは、甘えん坊なんだから」
「うん。そうだよ、僕は、甘えん坊なんだ。ほら、早く!」
えっ?
僕は、ビクっとする。
雅樹がペロリと僕のほっぺを舐めたのだ。
僕は、顔を赤くして言う。
「雅樹ったら、誰かに見られちゃうよ……」
「ははは。そうだな、悪い、悪い。じゃあ、残りは、俺が食べさせてやるよ。それぐらいなら良いだろ?」
「うっ、うん」
「ほら、あーんして!」
「あーん!」
雅樹が差し出したケーキが口の中に入った。
その瞬間……。
「はい、マコトちゃん、あーん!」
僕は、ハッとして目の前を見る。
カップルの女子が唐揚げをフォークに刺して、男子の口へ運んでいるところだった。
男子の方は、モグモグ食べて「美味しい!」とか言っている。
ああ、まただ。
僕のささやかな妄想をことごとく台無しにして!
しかも、やっている事が被っているのが、余計に腹がたつ。
こっちは、人前でしたくても、我慢しているって言うのに。
まったく!
カップルは、食事を終えて一息をつくと、また周りにアピールするように大声で話し始める。
「ねぇ、マコトちゃん。もう、帰らない? なんか面白くないし」
「えっ? まだ、午後もあるぞ」
「でも、退屈だし。ふあーあ。ほら、センセーに言われたから来ただけでしょ?追試にするからって。遊びに行こうよ。カラオケとか」
「でもよ。最後までいないとレポート書けないだろ?」
「あーあ、つなんない。早く終わらないかなぁ。研究とかまじ興味無いんだけど」
僕の中でプチンと何かがキレた。
僕は、無言で立ち上がる。
だめだよ、我慢して!
そんな、心の声が聞こえるけど、もう止まらない。
イライラの限界を越えた。
「ちょっと、あなた達。迷惑だってわからないの!」
僕の荒げた声に、目の前のカップルどころか、周りの人達の注目が集まる。
「いい! ここは、自分の将来と真剣に向き合っている人が来る所なの。あなた達のように、暇つぶしで、冷やかしで来ていいところじゃないから!」
溜まっていた言葉が次から次へと出てくる。
「真剣に大学を調べに来ている人にとって目障り。第一、大学生の先輩達にも失礼でしょ!」
はぁ、はぁ。
言ってしまった。
こんなのは、僕の柄じゃないのに。
せっかく、このような会を開いてくれている大学側の心遣いと、僕達の一生懸命な気持ちに水を指すのがいけないんだ。
でも、シーンとする中、後悔し始める。
僕は、下を向きながら着席した。
カップルの女子の方は、驚きのあまり声が出せないようだ。
男子の方は、呆然としながら僕の顔を見つめる。
ああ、そういえば。
男子の方は今初めて顔を合わせたのかもしれない。
今更ながら、僕の顔を見て何か驚いているようだ。
きっと、女の子みたいなひ弱そうな僕に怒鳴られたのが、意外だったのに違いない。
しばらくの沈黙を経て、わなわなと手を震わせていたカップルの女子が言った。
「へん、行きましょ! こんなところ。さあ、マコトちゃん」
「おっ、おう……」
カップルの女子は、顔を真っ赤にして怒りをあらわにして、男子の手を取って、席を立った。
男子の方は、手を引かれながらも、まだ僕の方を見ている。
因縁でもつけようとでもいうのか……。
二人が食堂から立ち去ると、小さくパチパチという拍手が起こった。
そして、次第に大きな喝采へと変わる。
「良かった! すごい」
「君、よくぞ言ってくれた!」
「カッコいい! ありがとう」
賞賛する声が僕に向けられた。
僕は、恥ずかしくなって照れ笑いをした。
「本当に、そんなんじゃないんです……」
ただ、妄想を邪魔された事にイライラしていただけだから……。
でも、これで午後は邪魔されないと思うと気持ちはスッキリした。
ホッと胸をなでおろした。
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