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2-18-2 花火大会(2)
しばらく歩くと、人も少なくなり空いたスペースが多くなり始めた。
雅樹が指をさした。
「この辺でどうかな?」
「うん。いいよ」
雅樹が選んだ場所は、裏手が、土手になっていて、寄りかかれるため見やすい。
後ろの人に気を遣う必要もない。
なかなかの場所だ。
雅樹は小さいレジャーシートを引き、先に座った。
「ほら、ここに座って」
雅樹は股を広げ、僕の場所を作った。
「うん、分かった」
僕は、浴衣の裾を気にしながら雅樹に抱えられるようにちょっこり座る。
雅樹は、僕の体に手を回し、体を僕の背中にすこし寄りかかるように密着させた。
「ごめん。おもい?」
「ううん、大丈夫」
雅樹の体温が伝わってくる。
僕は団扇で足下を扇いで、緊張を紛らわそうとした。
そして、肩越しに振り向き「たのしみだね」と言った。
「うん、そろそろ始まるよ」
雅樹がそう言うと、ちょうど、ドーンと大きな音とともに、大輪の花が夜空を照らした。
「きれい!」
「ああ、ほんとうだ! きれいだな」
会場に歓声が上がる。
そして、徐々に、色とりどりの花火が上がり始めた。
花を咲かせた花火は、僕と雅樹の顔を照らす。
そして、次から次へと花開き、それが幾重にも重なる。
ああ、夜空が花畑のよう。
パチパチと音を鳴らすもの、しだれ桜のようになるもの、いろいろな模様になるもの。
沢山のバリエーションが打ち上げられた。
そのたびに、僕達は、
「お、すごいな!」
「あれ、星みたい!」
などと、感嘆の声を上げた。
でも、その煌びやかな花火でも散り際は物悲しい。
はかなさを感じてしまう。
そう、花火大会も終わると、いよいよ夏は終わってしまうのだ。
それを、つい思ってしまう。
雅樹がしみじみ言った。
「今年の夏は楽しかったな」
「うん。そうだね。本当に」
僕が答える。
そう、この夏は二人で一緒にいられた時間が多かった。
雅樹と僕の距離も近かった。
雅樹もきっと同じ思いなんだ。
「めぐむ、いまさらだけど、俺と付き合ってくれてありがとな」
雅樹はそう言うと、僕を後ろから、優しく抱いた。
「こちらこそ。ありがとう、雅樹」
僕は、抱き着く雅樹の頬に自分の頬をすり寄せて答えた。
ああ、なんて素敵な夜なんだろう……。
「ところで……」
僕は雅樹を少し睨みながら言った。
「で、この手はどっから入れているの?」
雅樹は、いつの間に浴衣の隙間から手を入れ、僕の乳首をコリコリといじっていた。
「あっ、あん。もう、せっかくの雰囲気がだいなし!」
雅樹は、
「ついな、つい。ははは」
と照れ笑い。
でも、一向に僕の乳首をいじるのを止めようとはしない。
「ねぇ、だめだから。こんなところで。あっ、あん」
でも、気持ちいい。
雅樹は、僕の言葉には意も返さず乳首を執拗に攻める。
雅樹はずるい。
僕が本気で怒れないようにうまく僕の弱点を攻めるのだ。
「めぐむの乳首、ピンっと立っているよ。エッチ!」
「雅樹がいじるからでしょ。あっ、だめ」
摘まむように、そして擦るように、時には優しく、時には激しく。
そんな触られ方したら、声がでちゃうよ……。
「あっ、あん、だめっ、だめっ」
「めぐむ、声がエロいよ」
「もう、雅樹やめて、お願い。あっ、あっ」
そうこうしているうちに、雅樹は、はむっと僕の耳を咥えた。
ゾクゾクっと背筋に電気が走る。
「やっ、やめてよ……あっ、感じる」
「いや、やめないよ。ちゅっぱ、ちゅっぱ」
「はぁ、はぁ。意地悪……」
その時、雅樹が、あっ、と何かを閃いたような声を出した。
「そうだ! 浴衣の似合う人だけど、心当たりがあるよ」
「えっ?」
「めぐむだ!」
えっ?
僕?
もしかして、夢で見た浴衣の女性は僕?
確かに何処かで見覚えがあった。
そうか。
そうだったのか……。
男の僕は最近、雅樹に全然甘えられていない。
だから、男の僕が寂しく思って夢をみたんだ。
女装の僕をうらやましく思って。
今だってこうやって、女装の僕は雅樹にかまってもらえている。
「雅樹、ちょっと聞いていい?」
僕の真剣な声を察してか、僕の乳首をまさぐる雅樹の手が止まった。
「どうした?」
「雅樹は、男の僕と、女装の僕、どっちが好き?」
「どちらも好き。だって同じ、めぐむだろ?」
雅樹は即答した。
「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「男の僕は最近、話すらほとんどできてないから、イチャイチャできる女装の方が好きかなと思って」
「へぇ、そんなことないけどな」
雅樹は、ポケットからスマホを取り出し、僕に見せた。
チョーカーをつけた男の僕の写真が映し出されている。
これは、以前にフードコートで雅樹と会ったときに撮られた写真。
「恥ずかしいんだけど、最近の俺のお気に入り」
「えっ? どうして、恥ずかしいの?」
「えっ、それを言わせる?」
「ん?」
僕は、雅樹が恥ずかしがるようなことを想像してみた。
あっ。
もしかして、オナニー?
男の僕の写真をみて、雅樹が……。
やばい。
耳が熱くなってくるのが分かる。
うれしいけど、猛烈に恥ずかしい。
「ねぇ、めぐむ。いま、いやらしいことを考えていない?」
「え? そんなことないけど……」
本当はあるけど。
「まぁ、いいや。それにしても、可愛いな。たまんない」
雅樹は、写真をうっとりと眺めて、スマホの画面にキスをしている。
ふふふ。
僕は思わず笑ってしまった。
そっか。
安心した。
男の僕も雅樹に十分といえる程、愛されているんだ。
寂しがることなんてないんだ。
「ありがとう。雅樹」
本当にありがとう。
男の僕も好きでいてくれて。
「よくわからないけど、どういたしまして」
雅樹は、止めていた手を再び動かし始める。
僕の乳首を執拗に攻めながら、耳たぶを甘噛みする。
耳に雅樹の荒い息がかかる。
そして、うなじにキスをすると首筋にかけて 舌を這わせはじめる。
「あっ、あっ……」
「めぐむっ、可愛いよ、めぐむ」
「雅樹、雅樹……」
僕はこのまま、高まりゆく快感に身を任せよう、そう思っていた。
そして、その間にも花火の音が耳の中でこだましていた……。
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