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3-05-2 二人のクリスマスイブ(2)
夕刻になりショッピングモールを出て美映留中央駅の近くまで移動した。
そして、とある建物の前。
「めぐむ、緊張するな」
「そうだね。雅樹」
僕と雅樹はさっきから手をぎゅっと握っている。
ここは、アキさんのお店『ムーランルージュ』にほど近い場所。
とあるラブホテル。
そう、僕と雅樹は初めてラブホテルにやってきたのだ。
高校生とばれないように大人っぽい格好をしてきた。
だから、大丈夫。
緊張しながらホテルに入った。
入ってみると、待合ソファが並んだロビーのような場所。
誰もいない。
どうやら空室のパネルを選んで部屋を決めるしくみになっているようだ。
フロントに立つとルームキーをスッと渡された。
そして、部屋番号を確認してエレベータに乗り込む。
ふぅ……。
雅樹のホッとしたような溜息。
「意外と平気だったな」
「でも、緊張で心臓が飛び出すかと思った」
「俺もだ。ははは」
僕と雅樹は部屋の前まできた。
「入るよ」
「うん」
ガチャ。
中に入ると照明がパッとついた。
木と大理石を基調としたデザインのお部屋。
モダンでもあるけど、高級感がある。
中央には大きなベッド。
壁は鏡張りになっている。
雅樹は、すこしがっかりした口調で言った。
「意外と普通なんだな。もっと、エロ要素盛りだくさんだと思った……」
「あれ、雅樹はがっかり? 僕は大満足だけど。高級リゾートのホテルに来たみたい」
数時間だけだけど、誰にも気兼ねしなくていい二人だけの空間。
いちゃいちゃ、し放題。
僕達の愛の巣。
ああ、夢のよう……。
さっそく部屋の中を見て回る。
「ねぇ見て、大きなお風呂!」
「本当だ!」
ベッドルームからガラス張りで中が見える。
「なぁ、めぐむ。お風呂入って温まらないか?」
「うん。そうしよ!」
「めぐむ、早く入って来いよ。気持ちいいぞ」
先に湯舟に浸かっている雅樹から声がかかった。
ジャグジー付きのようで、ゴーっと音が聞こえてくる。
「うん、ちょっと待って!」
僕は洗面台の前に立ちウィッグを外した。
そして、大急ぎでメイクを落とす。
「いま、いくよ!」
僕は浴室に入ると、さっと体を流した。
そして、「おまたせ」と言うと雅樹にダイブした。
ザバン!
お湯がしぶきを上げる。
「うわ。めぐむ、はしゃぎ過ぎ。ははは」
雅樹はしぶきで濡れた顔をぬぐう。
「ふふふ。いいの、楽しいんだもん!」
「あれ? 化粧落としたんだ」
まじまじと僕の顔を見る。
「うん。もしかして、男モードじゃダメだった?」
雅樹に聞いてから落とせばよかった……。
ちょっと後悔。
僕は目を伏せて雅樹の回答を待つ。
「いや、そんなことないよ。こっち見てごらん」
雅樹は僕の頬に手を当てる。
「めぐむ、とっても可愛いよ!」
そう言うと、僕の唇にキスをした。
んっ、んっ、んっ……。
合わさった唇から息が漏れる。
ぷはっ……。
「はぁ、雅樹。大好き!」
僕は、雅樹の首に腕を回し抱き着いた。
お風呂から上がると、身体を拭き、裸のままベッドになだれ込んだ。
白いシーツが火照った身体を冷やしてくれる。
気持ちいい……。
「ねぇ、雅樹。ずいぶん大きなベッドだね」
「ああ。いいなぁ。この大きさ」
二人で大の字で寝ても大丈夫なサイズ。
もし、二人で暮らすならこのくらいのベッドが欲しいな。
夜な夜な雅樹といちゃいちゃ。
いっぱいエッチをしたあとは、崩れるように寝てしまう。
朝起きるとそこに雅樹の顔。
そして僕にキスをする。
チュッ。
「お寝坊さんだな。めぐむは」
「もう一回キスして。そうしないと起きれないよ」
僕は唇をだして、キスをねだる。
ムフフ……。
雅樹の声が耳に入って、はっとした。
「めぐむ、顔を赤らめてどうした? のぼせたのか?」
「えっ? なんでもないよ!」
雅樹は、僕の顔をのぞき込む。
「ははーん。また、いつものだな? エッチな想像。ははは」
「そんなのしてないけど!」
「へぇー」
疑わしいという目つき。
ふぅ……。
まだ、エッチな想像をする前だからセーフ。
嘘は言ってないから!
僕は自分のほっぺを軽くたたいた。
枕元のスイッチを入れると、天井にイルミネーションが映し出されるようになっていた。
ミラーボールのような、プラネタリウムのような……。
「綺麗なもんだな。めぐむ」
「うん。そうだね」
僕は雅樹の方に手を伸ばす。
「ねぇ、雅樹。手を繋いでいい?」
「いいよ」
雅樹の手を握る。
あったかい。
互いに横を見る。目が合って微笑む。
そして、自然と近づき、唇を合わせる。
僕は、雅樹の下唇を弄ぶように唇で挟み込んだ。
「めぐむの唇って柔らかい」
「雅樹のもだよ」
そのまま抱き合う。
肌と肌が触れ、雅樹の体温が伝わってくる。
なんか安心する。
あぁ……。
僕は、雅樹と裸で抱き合っているんだ。
二人っきり。
うふふ。
ニヤニヤが止まらない。
「めぐむ、すごく楽しそうだな」
「うん、だってこうやっていちゃいちゃするの夢だったから」
雅樹の胸に頬をすりすりとこすりつけた。
そして、唇をつきだし固い胸板にキスをする。
「そっか、夢か……」
「どうしたの?」
僕は雅樹の沈んだ声が気になった。
雅樹の顔を見ると、悲しそうな笑みを浮かべている。
「ごめんな、一人暮らし出来ていたら、いつもこんな生活できてたのにな……」
「ううん、いいの」
「いや、だって……」
「あぁ、雅樹、元気出して。いいじゃない、こうやって二人きりになれたんだから」
「そうだけど……」
そっか、雅樹はまだあのことを気にしていたんだ。
一人暮らしをしようとして諦めたこと。
僕のせいでもある。
でも、今となっては、これでいいと思っている。
あのまま続けたら、雅樹の体がどうにかなっていたかもしれない。
それに、一人暮らしができなかったことで、僕が女装をするきっかけとなった。
僕は、女装をするようになって、世界が変わった。
新しい自分に会えた。
いろんな人との出会い。
いいことだって沢山あったんだ。
雅樹を元気づけたい。
「雅樹、ちょっと待ってて!」
僕はベッドを降りて、アキさんにもらった紙袋を取りに行く。
そして、封を開けて中身を覗いた。
あぁ……すごい!
白のベビードール、ガーターベルト、ストッキングのセット。
手に取ってみると、スケスケのシースルーだけど、レースがあしらわれていてとても可愛い。
さすが、アキさんのセレクション、センスがいい。
僕は、影でこっそりそれを着用すると、恥ずかしがりながら雅樹の前に出た。
「どうかな? 男モードの僕じゃ変だったかな?」
シースルーのおかげで乳首はうっすら透けて見える。
前開きのベビードール。
僕は、さりげなくあそこを隠す。
雅樹はあっけにとられている。
「天使……」
「えっ?」
「めぐむ、天使みたいだ……」
「ちょっと、恥ずかしいよ……天使だなんて。からかわないでよ」
頬がかっと熱くなるのが分かる。
「からかってないよ!」
「だって、僕、男だよ……」
「なに言っているんだ、めぐむ。天使は男の子だぞ!」
雅樹は手を伸ばし、むき出しの僕のペニスをちょんと触った。
「あん……ダメ」
ビクンと反応してしまう。
もう……。
ふぅ、っとため息をつく。
「でも、雅樹が気に入ってくれてよかった」
僕は両腕を頭の後ろに組んで、くるっと一回転した。
ベビードールの裾がフワッと舞う。
雅樹は、優しい表情になると、
「めぐむ、俺を元気づけてくれて、ありがとな」
と言った。
弱々しい笑顔。
もう一息!
「ううん。でも、考えてみて。こんな姿ができたのも、一人暮らしができなかったからだよ!」
「えっ?」
雅樹の顔がみるみるうちに明るくなってくる。
「おお、なるほどな! 確かにそうだ。一人暮らしをしていたら、めぐむの女装姿見れなかったもんな!」
「でしょ? うふふ」
雅樹の目に精気が戻ったようだ。
「めぐむ。俺、なんか、元気が出たよ」
「よかった!」
僕は自然と雅樹の股間を見た。
すごい……。
雅樹のあそこはビンビンに元気になっている。
「雅樹。いつのまに、そんなにおっきくなったの? エッチ!」
「ははは。こっちに来いよ、俺の小悪魔ちゃん」
「さっきは天使って言っていたのに!」
僕は頬を膨らませながら、ベッドに上がった。
「ははは」
雅樹は楽しそうに笑った。
僕は雅樹を跨ぎ、雅樹の固くなったペニスをぎゅうと握った。
そして、小悪魔っぽく甘えた声を出して言った。
「今日はクリスマスイブなんだから、僕をいっぱい可愛がってよね!」
「あぁ、絶対に忘れられないクリスマスイブにしてやるからな!」
雅樹はそう言うと、僕の体をきつく抱きしめた……。
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