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3-13-3 記念日のプレゼント(3)
イチゴパフェがやってきた。
「わぁ、嬉しいな。美味しそう!」
「本当に、美味しそうだな。こっちも美味そうだぞ!」
「うんうん、チョコレートも美味しそうだね。少し取り換えっこしようよ!」
「いいねぇ」
僕と雅樹は、少しづつ互いのパフェを味見する。
「うーん。美味しい! 幸せ!」
「本当に美味い!」
この瞬間が堪らない。
雅樹はお腹が減っていたのか、ペロリと平らげてしまった。
「雅樹、もう食べたの?」
「まぁね」
「でも、あげないよ! へへへ」
僕は、イチゴをスプーンに乗せて見せびらかせながら口に入れる。
イチゴの酸味とアイスの甘味が交じり合う。
うーん。幸せ……。
雅樹は、言った。
「じゃあさ、めぐむ。賭けをしない?」
「どんな? はむ、はむ。おいしいー」
僕は、スプーンを口に運びながら尋ねた。
「今から、スイッチを入れる。めぐむがいってしまわずに全部食べ切れたらめぐむの勝ち、食べきれなかったら俺の勝ち」
「えっ? またスイッチ?」
僕はあからさまに嫌な顔をした。
断ろうかとしていると、雅樹はつぶやいた。
「やっぱり、嫌か?」
雅樹は、また悲しそうな顔をした。
さっき、ローターを買うときに見せた悲しい顔。
そんな、悲しい顔しないでよ……雅樹。
ふぅ……。
溜息をつく。
まぁ、今日は、雅樹の誕生日のお祝いデート。
しようがない、大目にみるか……。
「いいよ。雅樹。で、何を賭けるの?」
雅樹の顔がみるみるうちに明るくなる。
目をキラキラさせる。
クスっ。
もう、単純なんだから。雅樹は。
雅樹は、そうだな、と言って提案する。
「一つ、何でも言うことを聞くっていうのはどう?」
「何でも言うことを聞くかぁ……」
なるほど。
勝ったら、ローターを外してもらえるようにお願いをする。
勝負の結果なら、これは飲まざるを得ないはず。
パフェはもう残り半分もない。
一か八かだけど、やってみる価値はある。
「うん。分かった」
「よし、じゃあ、始めるよ、よーい!」
僕は構える。
「どん!」
ぐっ……。
スタートと同時にローターが振動し始めた。
やばい……。
すごい刺激。
なにこれ? さっきの刺激より強くない?
すぐに、下半身が熱くなり始める。
あっ、あっ……。
スプーンを持つ手に力が入らない。
雅樹を見る。
ニヤっとしている。
もしかして、強モードとか? いままで弱だったんじゃあ……。
ビクン、ビクンと痙攣していくる。
だめ、我慢しなきゃ!
僕は、一生懸命にスプーンを走らせる。
でも、すぐに手が止まる。
気持ちいい。
……でも……だめ。
僕はショーツが少し冷たくなっているのに気が付いた。
あぁ、きっとペニスからおつゆが垂れたんだ。
こんなことをしていたら、スカートまで汚してしまう。
我慢しなきゃ。
あっ、でも……。
頭がぼぉっとしてくる。
「めぐむ? 大丈夫? 降参する?」
「はぁ、はぁ、まだまだ」
体中がゾクゾクしてくる。
快感を抑えられない。
あっ……ダメっ。
いきそう……。
その時、スイッチが止まった。
はぁ、はぁ……。
もう少しでいけたのに。
残念なような、ほっとしたような……。
雅樹が言った。
「俺の勝ちでいいよな?」
「……うん。雅樹の勝ちでいいよ。これ、本当に気持ちいいんだもん」
「ははは。じゃ、いったん店を出よう。そうだな、矢追公園でお願いを言うよ」
「わかった」
僕はスプーンを置いた。
再び矢追公園にやってきた。
もう夕暮れ時。
カップルの姿がちらりほらりと見える。
雅樹が言った。
「今日は、俺のわがままに付き合ってくれてありがとうな。めぐむ」
「ううん。いいよ、雅樹の誕生日のお祝いなんだもん」
「ははは。で、俺のお願いなんだけど」
「うん。なんでもいいよ。言って」
「これを受け取ってほしいんだ」
雅樹がカバンが取り出したもの。
それは、小さな箱。
雅樹はその箱をぱかっと開ける。
中には、きらりと輝く指輪が二つ。
「えっ? どうして?」
「うん。めぐむと俺が付き合い始めて、二周年記念」
「もうすぐそうだけど。そんな、お祝いしようって決めてないよ」
「ああ。実はさ……」
雅樹は、宙を見る。
「去年バイトで稼いだお金の使い道をずっと考えていたんだ。それで、やっぱり、二人の記念になるものに使いたいなって」
「でも、それって、雅樹が稼いだお金でしょ?」
「ううん。違うよ。つらい思いをしたのは、一緒だろ?」
「……うん、だけど……」
「だけど、じゃないよ! はい、これ」
雅樹は、指輪の一つを取り出して、僕に手渡す。
僕は、手にした指輪を光にかざす。
埋め込まれた宝石がキラキラと輝く。
きっとこれは高価なものだ。
「雅樹、これは受け取れないよ。こんな高価なもの」
僕は、指輪をもとに戻した。
「めぐむ、それはダメだ。なんでもお願いをきく約束だろ?」
雅樹は、指輪を取り出す。
そして、僕の左手を手に添えると、すっと、薬指に指輪をはめた。
あっ……。
これって……。
「めぐむ、好きだ。この二年間、ありがとうな。そして、これからもよろしく」
一瞬時間が止まる。
雅樹の優しい笑顔。
あぁ、
「雅樹……雅樹!」
僕は雅樹に飛びついた。
涙が出る。
そして、止まらない。
嬉しい。
雅樹の腕の中。
僕は雅樹の胸の顔を埋める。
ドクンドクンと雅樹の心臓の音。
雅樹も、緊張していたんだ。
僕は、顔を離し雅樹を見上げた。
雅樹の微笑み。
僕は目を閉じて、唇を差し出す。
「雅樹、キス、して……」
雅樹は黙って唇を僕の唇に合わせた。
あぁ、幸せ……。
僕は繰り返し指輪を掲げてみる。
ああ、本当に綺麗……。
なんていう宝石だろう。
ピンク色に輝いている。
リングのデザインもシンプルだけど可愛い。
クスっ。
自然と笑みがこぼれてしまう。
雅樹は言った。
「気に入った?」
なんといっても雅樹からのプレゼントだ。
気に入らないはずがない。
「もちろん、すごく気に入った!」
「よかった。あっ、でも、普段はつけないようにしような。付き合っていることがバレるといけないから」
「うん。分かった。大事に大事にしまっておくね」
僕は、指輪をはめた手を胸の辺りでぎゅっと握る。
そして、いったん外そうとした。
それを見ていた雅樹は、とっさに僕の手を握る。
「ちょっと待って。今日はしていようよ。俺もするから」
「ねぇ、僕にさせて」
僕は、もう片方の指輪を手にする。
そして、雅樹の手を取り、左手の薬指に差し込んだ。
雅樹は、自分の手を伸ばし、指輪の具合を確認している。
僕は、そんな雅樹をうっとりと眺めた。
「あぁ、雅樹の誕生日なのに、僕にプレゼントだなんて……」
「めぐむ、前に、これと同じことなかった? 二人の記念日だろって?」
「そんなことあったね。M&Mでしょ? ふふふ」
「そうそう」
二人、左手を差し出し、手のひらを合わせた。
僕は、雅樹に尋ねた。
「もしかして、僕に指輪を受け取らせるために、ローターを買ったの? 勝負を持ち掛けるために……正直に話して!」
沈黙。
「ちぇっ! バレてたか。でも、めぐむとローターで遊びたかったのは本当」
「もし、勝負に勝てなかったらどうするつもりだったの?」
雅樹は、ニヤリとする。
「それは、絶対に勝てると思っていたさ。だって、最初の時、めぐむはギリギリだっただろ?」
「そっ、それはそうだけど。あっ、もしかして、強モード?」
「ははは。やっぱり分かっていたか。強モードにしたら、めぐむは絶対に我慢できないだろう、って思ったから。それより、勝負を受けてくれるかどうか心配だったよ」
僕は、思い起こした。
ローターを買おうと言ったとき。
勝負を持ち掛けてきたとき。
雅樹にとっては重要なシーンだったんだ。
だから、僕が断ろうとしたとき、悲しい顔をした。
そうだったのか……。
「じゃあ、今日は雅樹の計画通りだったってこと?」
「うん。ほんとうに、よかった」
そうこう話している内に、辺りはすっかり暗くなっていた。
公園の薄暗い街灯が、ぽつりぽつりと灯っている。
雅樹が言った。
「なぁ、めぐむ。この公園ってさ……」
「雅樹、言わなくてもわかっているよ」
僕は、雅樹の膝を跨いで向い合せで座る。
ショーツ越しに雅樹のズボンの感触が伝わる。
雅樹の固くなった股間に、僕のアナルがちょうど当たった。
「こういうことでしょ?」
「そうそう。さすが、めぐむ。エッチだな」
雅樹は、僕を抱きかかえながら、首元にキスをした。
あぁ、感じる。
溜息が漏れちゃう。
「はぁ、はぁ、もう、雅樹がそれを言う? 僕に散々いやらしいことして……」
「そうだったな。ははは」
僕は、お返しに、雅樹のシャツのボタンを外し、首筋から胸元へ舌を這わした。
雅樹は、息を荒くする。
僕は、雅樹の耳元でささやく。
「さっき、僕は中途半端だったから、雅樹、ちゃんと最後までいかせてよね」
「おう。任せておけ」
雅樹はズボンのベルトをガチャリと外した。
そして、僕のスカートの中に手を入れて、ショーツをずらす。
その時、ショーツに挟んでおいたローターの小箱がころっと落ちた。
僕は、はっとして言った。
「あっ、ちょっと待って。ローター入れっぱなしじゃない?」
雅樹が言った。
「そうだ。忘れてた。でも、入れたまま、俺のを入れたらどうなるんだろ」
「ちょっと怖いけど……」
雅樹は、にっこりと笑みを浮かべる。
「やってみるか?」
「うん。してみようよ!」
僕は、満面の笑みで答えた。
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