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3-14-4 拓海からの呼び出し(4)
拓海さんは僕に尋ねた。
「で、どうやって、入れたらいいんだ? 俺の」
僕は四つん這いの体勢のまま答える。
「えっとね、まず、ペニスの先を僕のアナルの所に押し当てて。そうそう。そして、ゆっくりと押し込むように」
拓海さんのペニスがアナルに当たるのが分かる。
僕は、そのまま受け入れたいのを我慢して、敢えてお尻の穴をきゅっと閉める。
「こうか、あれ、入らないぞ」
「うん。いま、閉じているんだ。きっと、その人も最初は緊張してそうなると思う」
「ふむふむ」
「そんな時は、優しく声をかけてあげて。緊張が解けるような言葉」
「なるほど、緊張をほぐすか。ちょっと、練習していいか? めぐむ」
「うん」
そう言うと、拓海は僕の耳元で囁く。
「なぁ、俺のペニスをお前のアナルに入れさせろよ。ほら、力抜けって。心配するなよ、俺がいっぱい気持ちよくさせてやるからさ」
甘く低い声。
えっ……。
なに、このドキドキ。
「ほら、お前、いま、とっても可愛いぜ」
やばい……。
僕は、ドキっとして、お尻の穴が緩む。
それと同時に、ズズっと拓海のペニスが挿入されてくる。
あぅ……。
「おぉ、入ったぞ。どうだった? めぐむ。こんな感じでいいか?」
「うん。まぁまぁ、だね。はぁ、はぁ」
ふぅ。
素で緩めてしまった。
まったく、拓海さんは天然なのかすごい。
油断しないようにしなきゃ……。
「このまま、女とやるようにピストンでいいのか?」
僕は女性とエッチはしたことがないからよくわからない。
でも、きっといつも雅樹がしてくれているのは、同じなんだと思う。
「うん、たぶんそれでいいと思う」
「よし、じゃあ、いくぜ!」
拓海さんのピストン運動が始まった。
リズミカルに、そして、緩急、ぐっと押し込むような動き。
あぁ、心地いい……。
お尻の気持ちいい所にしっかりと当たる。
でも、先ほど、ペニスの刺激を受けたから、そっちに気持ちいい意識の半分が行ってしまっている。
だから、鈍いのだ。
うん、このペースなら大丈夫。
「うっ、うっ、めぐむ。これが男同士のセックスか? すごいな。気持ちいいぜ」
「あっ、あっ、でしょ? 気持ちいいでしょ?」
「あぁ、雅樹はいつもこんな気持ちいい思いをしているのか。うらやましいぜ」
「あん、あん、ほら、でも拓海さんも、お友達といっぱいすればいいよ」
「あぁ、そうだな。俺の方から誘ってもいいかもな。やろうぜって。ははは。うぅ。気持ちいい。イキそうだ」
「あっ、あっ。いっていいよ。拓海さん」
「すまない。うぅ!」
僕のアナルから、圧迫していたものが、すっと抜けた感覚。
拓海さんはペニスを抜いたんだ。
僕は、そのまま、うつ伏せに倒れた。
へぇ、僕の中に出すのだと思ってた。
すごい紳士。
やっぱり大人なんだ。拓海さんって……。
僕は、ティッシュでペニスを拭いている雅樹さんを眺めながら思った。
それにしても……。
油断していた。
ペニスの刺激があるから大丈夫だと思っていたけど、下半身はしびれて、寸でのところでいく所だった。
危ない、危ない……。
僕は拓海さんを見て言った。
「どうでした? 男同士のエッチは?」
拓海さんは、汗を拭きながら言う。
「正直、驚いている。男同士のセックスがこんなに気持ちのいいものだとは」
「うんうん。きっと、親友だったら、もっと気持ちが伝わって気持ちいいかもですね。ふふふ」
「で、俺のセックスはどうだった? めぐむは、気持ちよかったか?」
「うん、とっても! 拓海さん、初めてとは思えなくらい上手でした。きっと、喜ばれると思います」
「そっか。でも、めぐむはイケなかったんだよな?」
「うん。でもほら。僕は雅樹じゃないといけないから」
危なかったけど、これで雅樹に顔向けできる。
「そうか。なら、仕方ないな。ところでさ……」
「はい」
「今度は、正面同士でのセックスのやり方を教えてほしい」
「えっ? まだするの?」
「うん。いつでも、バックからできるとは限らないしな」
僕は返答に困った。
別にエッチするのはいい。
でも、さっき寸でのところでイキそうになったのだ。
このままだと、我慢できるかどうか微妙だ。
僕が返答に戸惑っていると、拓海さんが手をついた。
「たのむ、あいつを気持ちよくさせてやりたいんだ。もう一回だけ」
拓海さんは、本当に真面目なんだな。
僕はその熱意に感動した。
「わかりました、拓海さん。では、もう一度だけ」
「よし! じゃ、さっそくしようぜ」
「えっ? さっき出したばかりでしょ?」
「ほら、見てみろよ。なっ?」
僕は、拓海のまたたくましく大きくなったペニスを見て驚いた。
あぁ、僕に気持ちを冷ます時間もくれないなんて……。
僕は仰向けに寝かされて、拓海さんの大きな体が乗る。
重い。
ベットに押し付けられて、身動きが取れない。
拓海さんの顔がよく見える。
あぁ、雅樹に似てハンサム。大人の男。
またドキドキしてきた。
あぁ、もう!
僕はどうしてドキドキしちゃうんだ……。
顔を逸らそうにも、どうしても見入ってしまう。
その優しい瞳に捕まったら、もう離れられない。
「めぐむ、さぁ、入れるぞ。いいな?」
「うん。来て」
今度は、スッと入っていく。
拓海さんが僕のアナルの形を覚えてしまったのか、それとも、僕のアナルが、拓海のペニスの形を覚えてしまったのか。
きっと、どっちもだ。
ピストン運動が始まる。
「あっ、あっ……だめ……」
本当にだめ・
やっぱり、さっきの続きだ。
下半身の痺れがすぐに押し寄せてくる。
拓海さんが言った。
「今度は、めぐむのしごかないでおくな。めぐむは、しごかない方がいいんだろ?」
あぁ、そんな……。
変なところで気を遣わないでよ。
「あっ、あっ、気持ちいい、拓海さん、だめ」
「うっ、うぅ、やばい、正面からのセックスも気持ちいい。また、直ぐにイキそうだ」
早くいって、拓海さん。
早くしないと、今度は駄目かも。すぐにいってしまう……。
体が、ビクンビクン痙攣をする。
僕は、うーっと唇をかみながら、ベッドのシーツをギュッと握りしめ、気持ちよさに耐えようとした。
でも、拓海さんは、僕がいきそうなのを見て、耳元でささやいた。
「めぐむ……可愛いよ」
えっ?
一瞬、雅樹と被った。
そして、拓海さんは、追い打ちをかけるように上下運動を早める。
あぁ、もうだめ……。
僕は目の前が真っ白になると、ふわっと体から力が抜けた。
あぁ、いってしまった……。
間もなく、先ほどと同じように拓海さんのペニスが僕のアナルから抜かれたのを感じた。
僕は天井を見ている。
ごめん、雅樹。
僕はダメな恋人だ。
目に溜まった涙が目じりから流れる。
「いやぁ、めぐむのお陰で、あいつを喜ばせるのに自信が付いたよ。あれ? めぐむ、泣いているのか?」
僕は涙を拭いて、拓海さんとは逆の方に寝返りを打った。
「ううん。大丈夫……」
「ごめん、痛かったのか? めぐむもイケたのかと思ったんだけど」
「ううん。そうじゃないんだ」
「どうした? いってみろよ」
拓海は、僕の返事を根気よく待ってくれた。
僕は、答えた。
「僕は、大好きな雅樹の為にいってはダメなんだ。それなのに……」
「いってはダメ?」
「そう。だって、ほかの人とのエッチで気持ちよくなったら浮気だと思うから……」
「気持ちよくなったら浮気か……めぐむは、そこまで、雅樹のことを思ってくれているのか?」
僕は無言で、コクリと頷いた。
突然……。
僕は、拓海さんに体を取られる。
そして、拓海さんは、僕を力いっぱい抱いた。
僕の頭を優しく撫でながら言った。
「めぐむ。お前は、なんて、優しくて、かよわくて、そして強いんだ。雅樹は、本当に幸せものだな」
「そんなことない……」
僕は答えた。
「ありがとうな。めぐむは、雅樹の最高のパートナーだ。俺が認めるよ」
「拓海さん、ありがとう……」
僕は、拓海さんの言葉で穏やかな気持ちになった。
僕がいく、いかない、なんて些細なこと。
人の役にたてて、そして、拓海さんに認めて貰えたんだ。
これ以上、何を望むか?
望むべくもない。
それに、考えてみれば不思議だ。
雅樹のお兄さんとはいえ、雅樹以外の男の人と肌を合わせたというのに、全く不快感はなく、体はこの通り、安らぎを得ている。
やっぱり、拓海さんって不思議な人だな……。
僕は、拓海さんの腕の中ですっかり夢心地になっていた。
そして、ウキウキとした弾んだ気持ちが沸き立つ。
「拓海さん」
「なんだ?」
「拓海さんって、不思議な人ですね」
「えっ? そうか?」
「はい。その親友の方の気持ちがわかるような気がします……拓海さんって、癒し系だから……」
「ぶっ。俺のどこが癒し系なんだ?」
拓海さんは、照れてを頬を赤くした。
ふふふ。
可愛い。拓海さんもこんな顔をするんだ。
キュンキュンする。
「拓海さんも、親友の方の気持ちにこたえられるように頑張ってくださいね!」
「ああ、ありがとう。めぐむは、俺の初めての人だからな。期待しててくれ。ははは」
「はい」
僕は、拓海さんの笑顔につられて、クスっと笑った。
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