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サイドストーリー3 会長!相談があります(4)

待ち合わせ場所に急ぐ。 僕は、山吹先輩の姿を見つけ、手を上げて近づいた。 「おまたせしました。山吹先輩!」 「あー、青山君、悪かったね」 山吹先輩は、小さく手を上げた。 山吹先輩について歩く。 「えっと、うちで、夕食でいいかな?」 「えっ? 山吹先輩のアパートですか?」 「嫌?」 「いえ、でも、同棲している彼女さんが……」 駅近くのファミレスかどこかだと思っていたので、少なからず驚いた。 山吹先輩は、少し照れながら言った。 「ははは。大丈夫。うちのが夕ご飯を作ってまっているから……」 そっか、彼女さんが準備してくれているのなら、お断りするのも悪い。 ここは、提案を受けるのが礼儀だよね。 「それではお言葉に甘えて……」 山吹先輩の家は、中央駅の裏駅側を出て少し歩いたところにある。 単身者向けのアパートが立ち並ぶ一角。 山吹先輩は、部屋の扉をガチャリと開けた。 「ただいま!」 「おかえり、|孝則《たかのり》!」 部屋の中から弾んだ声。 彼女さんかな? ちなみに|孝則《たかのり》というのは、山吹先輩の下の名前のようだ。 僕は、山吹先輩に連れられて、部屋に入る。 ワンルームの小さい部屋。 でも、あったかい雰囲気が漂う。 あぁ、これは幸せの空気だ。 僕が部屋に入ると、エプロンをした人物がお辞儀をした。 「こんばんは。いらっしゃい」 僕もお辞儀をする。 「お邪魔します。僕は、山吹先輩の後輩の青山っていいます」 顔を上げて、その人物を見る。 えっ? 僕は驚いて、しばらく声を出せずにいた。 「氷室先輩! どうしてここに?」 僕は、テーブルに着いた。 山吹先輩と氷室先輩は並んで座り、僕と対面する。 山吹先輩は、改めて頭を掻きながら言った。 「ははは。お恥ずかしい。じつは、|敦《あつし》と付き合っててね」 ちなみに|敦《あつし》とは氷室先輩の下の名前だ。 「まさか、お客さんがめぐむとは……孝則も、意地がわるいぜ」 氷室先輩は、山吹先輩を肘で突っつくけど、顔は満面の笑み。 「めぐむ、本当に久しぶりだな!」 「はい。ご無沙汰してました。氷室先輩」 氷室先輩は、僕に会えてよっぽど嬉しいのか、笑顔が絶えない。 僕はというと、なんだか最近オトムサ同好会関連で、氷室先輩の影が見え隠れしていて、あまり久しぶりって感じがしない。 それに、顔を見たのは卒業以来だけど、甘いマスクのイケメンっぷりはそのまま。 いや、大学生になって、さらに男の色香が増したような……。 まぁ、いいや。 久しぶりの再会もいいけど、オトムサ同好会のサイトの件は、それとこれとは別。 後でしっかりと注意しないとな、と心に留めておいた。 山吹先輩は、氷室先輩に言った。 「敦。前に、青山君は、なんでも解決できるって言ってなかったか?」 「そうだっけ? あはは」 それにしても……。 山吹先輩と氷室先輩が付き合っているなんて……。 正直、思ってもみなかった。 氷室先輩の恋の手伝いをしたことすら、忘れていた。 まさか、あの後、付き合うことになっていたなんて……。 「僕もびっくりしました。まさかお二人が付き合っているとは……」 「ああ、俺も、最初はどうして男が、って思ったんだけど、敦って優しくて、思いやりがあって。何より俺を一途に思ってくれて……なんかいつの間にか好きになってて。今じゃかけがえの無いパートナーさ」 「孝則……。お前、俺の事、そんなのふうに思っていてくれているのか? 嬉しいぜ……」 少し涙ぐむ氷室先輩。 「当たり前だろ、敦」 「ああ、うぅ、嬉しいぜ」 二人、見つめあいながら、指を絡めて手を繋いでいる。 あーあ……。 氷室先輩が山吹先輩をものにしたのはいいとして……。 この、氷室先輩の変わりようはいったどうだろう? 見た目はあの頃のまま。 あらゆる男を手玉にとって、男の体を欲しいままにむさぼり尽くしていた。 しかし、今の氷室先輩には、あの妖艶な面影はまったくない。 素直で優しい雰囲気を漂わせている。 なんだろう? これは。 おしとやかで、このカワイイオーラは。 これほどまで変わるとは……。 僕は、思わず氷室先輩に言った。 「あの、氷室先輩。なんか、変わりましたよね?」 「そっ、そう? 俺はもともとこうだったけど……」 「ぶっ! まぁ、いいですよ」 はぁ……。 気が付けば、氷室先輩は、山吹先輩の腕を組んじゃって、すっかりラブラブ。 さりげなく、腕の筋肉をなでなでして……。 筋肉フェチは健在みたいだけど……その点だけは、なんかちょっと安心する。 感動の再会が落ち着いた所で、山吹先輩は言った。 「まぁ、まずは飯をたべよう。敦、飯できてる?」 「おう。できてるぞ、孝則」 氷室先輩は、パタパタとキッチンに立った。 それが、意外や意外。 氷室先輩の料理は、とても美味しかった。 フレンチのコース料理のように品数をそろえ、手間がかかった料理が目白押し。 昨日、今日でできる事ではない。 きっと、毎日、山吹先輩の食事を作っているに違いない。 愛情たっぷりで。 「氷室先輩、ものすごく美味しいですよ。料理できるんですね」 「ありがとう、めぐむ。これでも、俺はやればできる子だからさ。なんてな」 氷室先輩は、ペロっと舌を出して言った。 山吹先輩は、笑いながら答える。 「あははは。そうだよな。最初は、まずくて、とても食べれなかったけどな」 「あ! 孝則! 意地悪いうなよ!」 「ごめん、ごめん」 「ふふふ」 二人で、このやろう! とか言って、ほっぺをつんつんし合っている。 あちゃー! なにこれ? 新婚? お芝居でもしているかのようなラブラブっぷり。 とは言え……。 でも、氷室先輩の本当のところは、こっちなのかもしれない。 そう、思えなくもない。 自分を支える運命の人が現れて、本当の自分を出せるようになった。 なるほど。 そう考えると、頷ける。 食事を終えて、コーヒーをご馳走になった。 いよいよ、本題の話が始まる。 「で、青山君。相談なんだけど」 山吹先輩は、氷室先輩を見つめた。 氷室先輩は、うんと頷く。 「恥ずかしい話、俺、敦の事、いかすことができないんだ」 「へっ?」 つまり、こういうことだ。 氷室先輩は、高校時代、散々、筋肉男子達と関係持った。 でも、実の所、エッチでいったことはなかったのだ。 もちろん、ペニスでいくことはできる。 アナルでいくことができない、ってことだ。 山吹先輩は、そんな氷室先輩が不憫でしかたがない。 自分が、うまくできない、いかせて上げられないのではないか? そう悩んでいるのだ。 そこで、彼とうまくいっている僕の出番。 僕なら、アナルでいかせるためのテクニックを教えてもらえるのではないか? ということらしい。 「あの、僕にそんな事をお願いされても……」 「たのむ! 青山君にすがるしかないんだ。この通り」 二人してお辞儀をする。 「まぁ、お二人の頼みですから……でも、期待しないでくださいよ」 「よっしゃ!」 二人は、寄り添い嬉しそうに目配せをした。

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