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サイドストーリー3 会長!相談があります(7)

僕が家に帰ると、ベランダからトントンと音がした。 扉を開ける。 すると、すっと誰かが入ってきた。 「あっ! シロ!」 「遅いぞ! めぐむ! ずっと、待っていたんだからな! 忘れていただろ? 俺のこと」 シロは、腕組みをして僕を睨む。 「ああ! そういえば……ごめん! シロ。今日はさ、いろいろあって……」 「ん? まぁ、いいか。って! なんで、頭をすぐに撫でるんだよ!」 僕はいつものように、シロの頭を撫でてあげる。 「えっ? いいじゃん。減るわけじゃないんだから……」 「まったく……めぐむは」 シロは、頭を撫でる僕の手を振り払ってベッドに座った。 僕もペタンと床に座り込んだ。 「で、シロ。相談ってなに?」 「うむ……」 沈黙。 僕は、なかなか話し出さないシロを急かす。 「で、どうしたのよ。シロ」 「うん……」 手を落ち着きなさげに組み合わせ、もじもじしている。 そんな姿も可愛くてずっと見ていたくなるけど、話しやすいように質問する。 「ふふふ。シロらしくないな。分かった! クロ君絡みでしょ?」 「うっ……鋭いな。さすが、めぐむ」 「ふふふ。だって、シロが悩むのって、クロ君絡みしかないじゃん!」 「そっ、そうか?」 「そうだよ!」 シロは、照れて頭をかいた。 シロは、ふんぎりがついたのか、ふぅ、と大きく息を吐くと話し始めた。 「実はな……今度、クロの所に遊びにいくんだよ」 「へぇ。よかったじゃん。うしし。また、エッチしまくるんでしょ? 熱いなぁ」 「まっ、まぁ、そうなんだけどさ……」 「シロ! シロがエッチ大好きなのはわかるけど、ちゃんとクロ君の気持ちも考えてあげてよね!」 「ばっ、ばっか! クロがエッチをねだってくるんだって!」 「ほんと? クスっ」 ふふふ。 クロ君の事でシロをいじるのは楽しい。 シロは、我を忘れてすぐにムキになるのだ。 この間なんて、ほっぺをツンツンしても気づかなかったほど。 可愛いったらありゃしない。 でも、いじりすぎには注意。 本当に怒り出しちゃうから。 「それで、何を悩んでいるの?」 「えっと……なった……」 シロは、語尾をゴニョゴニョとさせた。 僕は、耳を突き出し聞き返す。 「えっ?」 「……なった」 なった? 何に? またしても、よく聞こえない。 「ん? 聞こえないけど……」 シロは、僕の度重なるリクエストに少しムキになって答えた。 「勃たなくなった!」 たたなくなった? 僕は、一体何の話か、一瞬頭がハテナになった。 でも、クロ君絡みと言う事で、ようやく理解した。 「ちょ、ちょっと、それ本当? ペニス、勃たなくなったの?」 「ああ、おかしいだろ? 笑っていいぜ……」 シロは、しょんぼりして自嘲した。 僕は、こりゃ大変だ、と思いシロを真っ直ぐに見つめた。 「いや、笑うって……それ、大変なことじゃん!」 「ああ……」 「クロ君の事、喜ばしてあげれないじゃん!」 「ああ、それで、めぐむに相談しようと……」 シロの口から素直に『相談』と言う言葉が出てきた。 プライドの高いシロが僕に相談かぁ……。 いつもは僕が一方的に相談するばっかりだから、何気に嬉しい。 よし! シロの悩みは、僕はずばっと解決してあげるぞ! まずは、一通り情報を聞き出す必要があるな……。 「シロ、そうなったのって、何かきっかけはあるの?」 「きっかけかぁ……実は、一つある……」 「じゃあ、それを話してよ」 僕は急かすように言う。 シロは、少し気が進まない様子だったけど、 「分かったよ。話すよ……」 と、観念して話し始めた。 「この間、レオの弟ってやつがチェリー公園にきてさ……」 今や、チェリー公園のボスはシロだ。 レオというのは、以前にクロ君をめぐって、争っていたライバル。 でも、無事にクロ君を救い、チェリー公園の平和を守った。 なんてことがあったのだ。 その時のレオに弟がいたのだ。 シロの話は、まずはそのレオの弟、リオとの出会いから始まる。 場所はチェリー公園。 その日、シロがいつものようにお気に入りのベンチで日向ぼっこをしていると、紫やピンクの奇抜な色づかいの衣装を身にまとった、見かけない人物が姿を見せた。 シロが警戒してその人物に近づくと、その人物は先にシロに気が付き話しかけてきた。 「あら? あなたがシロ君ね? お兄様から聞いてはいたけど、結構イケメンじゃない?」 「なっ、なんだ。お前?」 シロは、相手の馴れ馴れしい態度に警戒心を高める。 「うふふ……申し遅れました。あたしは、レオの弟のリオと申します」 「レオの弟だと!?」 シロは、身構える。 リオは、おちょくるように大袈裟に怯えたリアクションをとった。 「あら、怖い。大丈夫よ、シロ君。あたしは、あなたと争う気はないから」 「じゃあ、何のために来たんだ?」 「お友達になるためよ。うふふ」 「気色わるいやつ……いいか、何かふざけたことをやったら、ただじゃ置かないからな」 「ふふふ。シロ君、何を怖がっているの? 可愛いわね」 リオは、自分の顔をシロの顔に間近に寄せると、「怒らないでよ、シロ君。またね」と甘え声で言うと、公園を去っていった。 そして、数日後。 ある事件が起きた。 シロは、チェリー公園の近くを散歩していると旧友のトラを見かけた。 「よう、久しぶりだな、トラ! 元気にしてるか? ん?」 トラは、ぼーっとして座り込んでいる。 シロの声に反応せず、すくっと立ち上がると、夢遊病のようにフラッと立ち去ってしまった。 「何か考え事でもしているのか……な?」 また、別の日。 今度は、最近チェリー公園に居つくようになった新参のニケに会った。 「よう! 景気はどうだ? ニケ?」 ニケも何だか様子がおかしい。 こちらに気が付かず、宙を見るような虚ろな目をしている。 トラと同じ症状だ。 なにかおかしい。 こんなことは今まで一度もなかった。 リオが姿を見せるまでは……。 そして、さらに3人目の犠牲が出たところで、リオのせいだと確信に至る。 シロは、チェリー公園でリオを待ち構え、問い詰めた。 「リオ! お前、トラやニケに何かしただろ?」 「あら? 何があったか知らないけど、どうしてあたしを疑うの?」 リオはどこ吹く風で答える。 「お前が来てから、おかしくなったんだ。お前を疑うのは当前だろ!」 「ふふふ。あら、怖い。そうね……トラ君や、ニケ君。そう、あたしのせい」 「なっ、なんだと!」 シロは驚いて声を上げる。 リオがこんなに素直に認めるなんて思ってもみなかったのだ。 シロは、そうと分かれば、とリオに詰め寄る。 そして、拳を固めて構える。 リオは、そのシロの姿を見て慌てて言った。 「あっ、ちょっと待って! あたしは悪いことはしていないから」 「じゃあ、どういうことなんだ!」 シロは、体勢はそのままに問いかける。 「ちょっと、勝負をしたのよ」 「勝負?」 「そう、それで、彼らは負けた。ただ、それだけ」 「きっ、貴様!」 シロは、声を荒げた。 リオも負けていない。 「あらひどい。どうして? 正当な勝負をしたんだから、悪いことなんてないわ」 シロは、じっとリオの様子を観察した。 リオは言い逃れの為に、でたらめを言っているのではないか? そんな疑いを持っていた。 でも、嘘は言ってなさそうだ、と感じ取った。 確かに、ニケはともかくトラは博打好きだ。 勝負の内容によっては、そうなってもおかしくない。 シロは、ふうっ、とため息をつくと、リオに質問した。 「……で、どんな勝負なんだ。それは?」 「あら? 聞きたい?」 「教えろ!」 「教えてもいいけど……シロ君。あたしと勝負するならね」 シロは、躊躇無く即答した。 「いいだろう。勝負してやる。で、その勝負ってのは何だ?」 リオは、妖艶な眼差しでシロを見た。 「セックスよ。うふふ」 「せっ、セックスだと!?」 シロは、驚きのあまり棒立ちになった。 リオは、予想通りのシロの反応に満足そうに微笑む。 「つまり、あたしとセックスをして、先にいった方が負け。どう? 簡単でしょ?」 「なっ……」 動揺するシロ。 リオは、そんなシロを見て挑発する。 「あら、怖いの? あたしに負けるのが?」 「怖いことなんてあるか! いいだろう。その勝負受けてやるよ」 「そうこなくっちゃ! じゃあ、さっそくやりましょう! しょ・う・ぶ!」 リオは、唇を突き出しウインクした。

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