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幼馴染教師×強気生徒②
「……っ」始業から丁度二十分が経過した時、公騎はすんでのところで声を噛み殺した。
どうやらこの機械、時間経過で動きが変化するようプログラムされていたらしい。
竿を撫でるだけだったブラシが上部へと移動し、敏感な括れ部分をこしょこしょと擽 り這いまわる。
先程までの揉みほぐすような動きとは打って変わり、まるで男の弱点を知り尽くしたような機械の動きに、公騎は突っ伏した机の脚に足首を絡め、声が漏れないよう手の甲を噛んだ。
「三島さん、突っ伏してどうしました? 何かありましたか?」
視線を上げると、教壇に立つ柴山が心配そうな様子で、また紺のメタルフレームに触れている。
──本当は興奮してるんだろ? 良い人ぶりやがって、この変態教師が。
左中指で眼鏡のフレームに触るのは、昂ぶった時の柴山の癖だ。一見普段通りなようで、その実昂りを堪え切れていない柴山の様子に、公騎は内心鼻で笑ってやりたい心持ちだった。
「…何でもないです」
上擦りそうになる声で何とかそう答えると、柴山は優しい笑みを浮かべたまま、信じられないことを口にした。
「それはよかった。もしかして体調が悪いのではないかと心配してしまいましたよ。…ついでに三島君、前に出て『大問五』の(一)を解いてください」
「はぁっ!? そんな……」
「おや、何でもないのではなかったのですか? それとも…こんな簡単な問題が解けない、とか? おかしいですねぇ? テストでは、三島君も、問題なく解けていたはずですが…」
前に出たくなかったのはクラスメイトの視線もそうだが、今にも欲望が暴発しそうだったからだ。しかしここまで煽られて引き下がるのは…負けん気な公騎に、端からその選択肢は無い。
「…分かりました、解けばいいんでしょ」
まんまと挑発に乗せられたことを歯噛みしながら、公騎は震える膝に力を入れ、努めて自然に教壇へと歩を進めた。
クラスメイトの視線が刺さる。緊張のせいか身体に力が入り、強張った内股が下腹部の感度を倍増させた。
「ッ……──」
自然体を意識するあまり足が上がり切らず、公騎のつま先がひな壇につんのめった。
「危ない……っ」数歩離れた位置から、焦る柴山の声。
公騎が床との顔面衝突を覚悟した直後、腰に男の腕が回された──と同時に、顔に当たるぱりっとしたスーツの感触と、嗅ぎ慣れた男の匂い。……これは、ヤバイ。身体が『思い出してしまう』。
気付いた時、公騎はその場に頽 れていた。
──立ち上がれない。柴山の香りが脳内に充満し、それが靄が掛かったように思考を阻害する。…手足が言うことを聞かない。
これまで我慢していた官能が、嗅覚を皮切りに一斉に襲ってきたような。下腹部の湿った生暖かさと共に、公騎はついに壇上で座り込んだ。
「ゲームオーバー……君の負けだね、公騎」
一人にしか聞こえない声で低く囁かれ、公騎は項垂れたまま「クソッ」と小さく悪態を吐いた。
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