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弁当スタート!(1)
そして月曜日…
少し気合を入れて作った弁当が2個。
真新しいランチバックを目立たないように紺色のトートバッグに入れた。
これでよし、と。
時計を見ると、家を出る時間が迫っていた。
慌てて掴んで玄関に走って行った。
新入なんだから皆んなより少し早く着くように、と2本早い電車に乗っている。
1番に部署に入るから誰にも見られず、言われた通りに部長のデスクの下に置くことは可能だ。
卵焼きも2個入れてみた。
味付けはいつもと同じだ。
美味しい、と喜んでくれるだろうか。
到着駅に着く時間が、何故かもどかしい。
小学生の頃、遠足の当日にワクワクしていたのと同じ気分だ。
俺、何を求めているんだろう。
部長にどんな反応を求めてるんだろう。
これじゃあ、まるで…
「おはようございますっ!」
誰もいない部屋に大きな声で挨拶をする。
キョロキョロと辺りを見渡して誰もいないのを確認すると、部長のデスクの下の籠にそっとトートバッグを置いた。
ふぅ…
1日の任務が終了した気分だ。
「おはよう!若林君、今日も早いね。」
突然声を掛けられて飛び上がった。
「かっ、係長、おはようございますっ!」
「どうかした?」
「いっ、いえ…あの…結局、部長のお弁当を作ることになりまして…」
「そうなんだ。公私混同なんだし負担になるようなら断っていいんだからね。
甘やかす必要なんてないから。」
「はい、分かりました。」
係長は俺をじっと見ている。
うーん…やっぱり綺麗な人だな…
「あの、係長、何か?」
「いや…若林君、可愛い顔してるな、って。」
「えっ、可愛い顔!?ですか?」
「うん。草食系というか、愛玩系というか…ふーん、なるほどねぇ…」
最後の方は笑いが混ざっていた。
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