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弁当スタート!(2)

係長の言葉の意味が分からず、目を瞬かせながら見つめ返していると 「ほら。そんなところも可愛いと思ってるんだよなぁー、きっと。」 “誰が”ですか、と問い返そうとした、そこへ 「おはようございまーーす!」 女性陣の一人、ボス格の岡田さんが入ってきた。 「おはよう。」 「おはようございます!すみません、今朝まだ掃除終わってなくって」 「いいのよ!私達も今まで通り順番に朝当番することにしたから。 若林君良い子過ぎて甘えちゃってたわ。 流石にそれはマズいでしょう、っていうことになったの。入社早々意地悪みたいなことしてごめんなさいね。」 「いえ、そんなこと思ってないです。 新入りですから当たり前だと…」 「はぁ…そこら辺の女子より余程奥ゆかしいわぁ…あなたが入れてくれるお茶だって、悔しいけど私達より美味しいしね。 『女子力の高いデキる子が配属になった!』って皆んな大喜びなの。 そんな訳で、改めてよろしくね。」 八重歯を覗かせてニコリと微笑んだ岡田さんは、係長に一礼すると雑巾を取りに行ってしまった。 「あの小難しい女性陣に気に入られるなんて大したもんだよ。 あの調子じゃあ、うちは他の部署の女性陣から羨ましがられてるな。 まぁ、今夜の歓迎会も女性セレクトだから、美味しいもの食べれると思うよ。 楽しみにしててね。」 ポンポンと労うように肩を叩かれ、ぼんやりしていた俺はハッと気持ちを入れ替えると、一礼して岡田さんの後を追った。 よく分からないけれど…褒められた…のかな。 係長の『可愛い』発言は別として… でも、あの言い方では係長本人の思ってることじゃない気がする。 じゃあ、一体誰が?

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