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歓迎会(3)
本当に『無礼講』という言葉は存在するんだ。
日頃は楚々とした雰囲気を醸し出している女性陣は、アルコールが入ると徐々にその本性を表してきた。
「せんぱぁーい…私のコーヒー、いつも少なめじゃないですかぁ?なーんか…美味しくないし…はっきり言って下手くそ!?」
「なーに言ってんのよ。どっちがぁ?
私へのお土産だけショボい物買ってくるくせにぃ。」
「あっ、若林君!好きな女性のタイプは?」
「部長!係長!いい加減に奥様の写真見せて下さいよぉ!」
「あっ、こっちにワインボトルでー!」
「ねぇ、そんなに食べたらまた太るわよぉ。」
あちらこちらでプチ喧嘩が勃発しそうになったり、入り乱れては絡んでくる。
タチが悪い。
俺の大学時代のサークルでも、男ですらこんな酒癖の悪い人達はいなかったぞ。
社会人の女は怖い…この中で誰かと付き合えと言われても絶対無理。というか、女、怖い…
部長と係長は慣れているのか、どこ吹く風で飄々とし、のらりくらりと酔っ払いの相手をしている。
お見事!大人の余裕ってか?
そっと抜け出して部長の元に辿り着いた。
「部長…止めなくていいんですか?」
「あれが彼女達のストレス発散だから気にしなくていい。
全部『酒の場での戯言 』で済ませてるらしいから。後もう少しでお開きになるから、それまで我慢だ。
ここの料理は美味いから沢山食べるといい。
…覚えたら、また作ってくれるとありがたいな。」
最後にサラッと胸キュンする台詞を耳元で囁かれた。
部長のフレグランスが纏わりついてくる。
ぶわっと身体中の血液が沸騰しそうだった。
今ここで言いますか!?
俺、男ですよ?
…勃ちそうになった自分が恥ずかしかった…
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