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俺、ソッチ側のヒト!?(2)
…部長の弁当も続行中だ。
毎日こっそりと部長の机の下に置き、こっそりと返してもらう。
今のところ、カムアウトした係長以外に見つかってはいない。
危ない場面もあったが、部長や係長が上手くフォローしてくれてバレなかった。
あの女性陣に見つかりでもしようものなら、あらぬ疑いを掛けられ、結婚相手を内緒にしている係長にまで飛び火する。それは絶対避けなければならない。
毎日冷や汗ものだが、それ以上に部長の喜ぶ顔が見たくて頑張っている。
事前に外食の予定が入っている時には、前日までに連絡をくれる。
きっと、食材が無駄にならないよう手間がかからないように、気を配ってくれてるんだと思う。
急な用事で食べれなかった時は「晩ご飯ができた」と嬉しそうに持ち帰ってくれる。
それ程までに俺の料理を気に入って貰えてるのか、と思い出す度に顔がニヤけて止まらなくなってしまう。
それに、毎食メモが添えられているのだ。
『今日も美味かった。ありがとう。
煮物も俺好みだった。』
『唐揚げ、生姜が効いてて美味い!』
『卵焼き、明日は2個入れてくれ。美味い!』
等々…
嬉しくって、そのメモは全部取ってある。
こんなことされたら勘違いしそうになるよ。
何かこれ…秘密の社内恋愛みたいで擽ったい。
名前を呼ばれただけで胸がキュンとする。
姿を見ただけで幸せな気持ちになれる。
…俺、物凄く部長のこと意識し始めてる。
この気持ち、何なんだろう…
まさか、恋?
いや、そんな、馬鹿な。
いくら優しくされてるからって、それはない。
勘違いも甚だしいじゃないか。
頭を振って浮かんだ『恋』という言葉を否定する。
俺は、ノーマルだ。
そう、異性が好きなただの男だ。
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