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俺、ソッチ側のヒト!?(3)
それでも――
気付けば、部長の姿を目で追っている。
部長が誰かに指示したり、電話をしている声に耳をそば立てている。
お弁当も、部長が喜ぶようなアレンジメニューを考えている。
…そんな自分に驚きを隠せなかった。
密かに芽生えた淡い恋心らしきものを“単なる憧れ”だと思い込もうとした。
部長みたいな大人の男性になりたい、と。
その憧れが思いを募らせているのだと。
でも、日毎募っていくこの不思議な思いは『これは憧れではなくて恋だ』と認識するのに十分だった。
正直認めたくなかった。
同性を愛する、そんな人間だと認めたくなかった。
……よくよく考えてみると…女の子と付き合ってデートするよりも、男の友人達とつるんで遊ぶ方が楽しかった。
女の子とそれなりにエッチなことをしても、欲を吐き出してスッキリするものの『愛おしい』とか『ずっと一緒にいたい』なんて感情は沸いてこなかった。
冗談半分で友達同士で『抜き合い』した時は、滅茶苦茶興奮したというのに。
そうか…俺ってソッチ側のひとだったのか…
愕然とした。
認めたくなくても、そうなんだ。
格好良くてイケメンの部長に惹かれるのは当然か。俺って面食いだったんだ。
だからと言って、部長に告白なんてできやしない。
不毛な恋心。
はあっ…
ため息ばかりが出てくる。
部長のことを『好き』と認めたら、部長のことばかり考えてしまう。
初恋を知ったばかりのガキじゃあるまいに。
どうしよう。
自分の気持ちがはっきり分かった以上、どんな顔して毎日合えばいいんだろう。
弁当だって渡さなきゃならない。
いつまで続くんだろう。
部長が結婚するまで?
いやいや、やっぱり勘違いだ。
大人の男の人に優しくしてもらってるから勘違いしてるだけなんだ。
左右に揺れ動くココロを持て余していた。
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