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俺、ソッチ側のヒト!?(4)
鬱々とした気持ちを抱えながら、今日もパソコンに向かっていた。
そんな気持ちと裏腹に指は踊るように動き、気が付けば殆どの入力を終えていた。
昼も食べず全く休憩していないことに気付き、やっと手を止めて凝った首を回していると、係長に突然声を掛けられた。
「若林君、一区切りついた?」
「あ、係長…はい、一応…」
「いやぁ、うちの課に仕事のできる子が来てくれて本当助かるよ。
でも、根を詰め過ぎだよ。ご飯食べたの?
ちょっと休憩しないか。一緒にコーヒーでもどう?」
「はっ、はいっ!」
そのままコーヒーカップを手渡され、パーテーションの裏ではなく会議室へ連れて行かれた。
溢さないように気を付けながら係長について行く。
対面に座るように促され、ひと口飲んだ。
適温の液体が喉を通ってお腹の中にじんわりと入っていく。
はあっ…思わずため息が溢れた。
喉もカラカラに乾いてるのも気付いてなかった。
少し冷めたそれをごくごくと喉を鳴らして、一気に飲み干してしまった。
「…美味しかったです。ありがとうございます。」
「良かった。
若林君、あんまり頑張りすぎないで。
一生懸命やってくれてるのは分かってるから。
身体壊したら何にもならないよ。」
「…はい。そんなつもりはないんですけど。」
「仕事の他に何か悩んでるだろ…例えば、恋愛。」
え…
カップを落としそうになってオタオタし、テーブルに置いてから係長を見た。
じっと見つめられて、心の中を見透かされてるような気がして、視線を逸らすことができなくなった。
「係長、どうして…」
ぶわっ、と体温が上がるのが分かった。
気付いてる?
俺の、部長への思いを?
どうして?
態度に出てた?言葉に出てた?
マズい、どうしよう。
ぐるぐると取り止めのない思考が渦巻いている。
今、否定しなければならないのに言葉が出ない。
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