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俺、ソッチ側のヒト!?(6)

係長はコホンと咳を一つすると 「いや、俺のことはいいんだけど。 それで?君は部長のこと、どう思ってるの? …とは思ってないんだろ? 毎日嬉しそうに弁当置いていくもんな。 口元緩んでるよ。 部長と話す時には目が少し潤んでキラキラしてるし…デスクからも時々熱い視線で追っ掛けてるもんな。 自分でも無意識だろ? あ、心配しないで大丈夫だよ。気付いてるのは俺だけだから。」 え…俺、側から見たらそんな感じなの? マジ!? 「…そんな…私は……」 俺はすぐに返事ができなかった。 ただ、一気に熱を持ち赤くなる顔と耳が、その答えを係長に伝えていた。 係長は俺の頭をぽんぽんと撫でると 「。俺は応援してるよ。 あの人もああ見えて奥手っぽいから…君からグイグイいってもいいんじゃない?」 「え?“相思相愛”って?…“グイグイ”って…」 「あははっ。それは…俺が言うことじゃないな、失礼。 まぁ、とにかく。 何か聞きたいことあれば何でも言って。 君より年令もソッチの方も先輩だから。 何ならウチの奴に『押しの仕方』伝授させるよ。」 ん?ということは…係長はお相手にグイグイ押し切られた、ってことなのか? 係長はによによと笑っている。俺は仕方なしに曖昧な返事をした。 「…あぁ、はぁ…」 「そうか、そうか…やっぱりな…」 と呟く係長。 いやいや、何が『そうか、そうか』なんだよ! 勝手に俺の気持ちを確定しないでほしい! …ん? でも…やっぱり、なのか…? 突然、部長の顔が目の前に浮かんだ。 うわっ、イケメンの破壊力半端ないっ! またまた“ぼふっぷしゅーっ”と湯気が出そうなくらいに身体が熱くなり汗まで出てきた。 係長は思わせ振りな笑顔で俺の肩を叩くと、俺を残し軽い足取りで出て行った。

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