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動揺と肯定(3)
とぼとぼと係長の後をついて部屋へ入った瞬間、部長と視線が合ってしまった。
(どうした?何があった?)
その目はそう語っているようだった。
それに答えるように小さくふるふると首を振り、部長のデスクの前に立ち頭を下げた。
「部長、お忙しいところ申し訳ありませんが、体調不良のため早退させて下さい。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」
部長はちらりと、俺の横に立った係長を見上げたが、すぐに
「分かった。すぐに帰りなさい。
明日も具合が悪いようなら、遠慮せず寺橋に連絡するように…お大事に。」
「…はい、申し訳ありません。
お先に失礼致します。」
まるで逃げるようにして自席に戻ると、岡田さんに早退する旨を説明して謝罪した。
「あら…本当、顔色が悪いわ。
仕事のことは気にしなくていいから、明日も休むといいわ。
きっと頑張りすぎて疲れちゃったのね。
ゆっくり休んで体調を整えてからまた頑張ってよ。」
岡田さんに労うような言葉を掛けられたが、理由が理由だけに申し訳なさ過ぎて、下げた頭を中々上げられなかった。
ドアの外まで送り出してくれた係長に、こっそりと耳打ちされた。
「明日の休暇申請しておくからゆっくり休みなさい。
勿論、部長の弁当もお休みだよ。
じゃあね、お大事に。」
にっこりと微笑まれドアを閉められた。
物凄く、気を遣われてるのが分かる。
係長のせいではないんですよ。こんなことで休むなんて、社会人として最低だ。
落ち込む。凹む。俺ってこんな情けない奴だったなんて…自分でもショックだ。
はい、分かりました…何か美味しいもの食べて、ゆっくり寝よう…
半ばよろよろしながらエレベーターに乗り込むと、ほおっ…と息を吐いた。
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