39 / 280

動揺と肯定(3)

とぼとぼと係長の後をついて部屋へ入った瞬間、部長と視線が合ってしまった。 (どうした?何があった?) その目はそう語っているようだった。 それに答えるように小さくふるふると首を振り、部長のデスクの前に立ち頭を下げた。 「部長、お忙しいところ申し訳ありませんが、体調不良のため早退させて下さい。 ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」 部長はちらりと、俺の横に立った係長を見上げたが、すぐに 「分かった。すぐに帰りなさい。 明日も具合が悪いようなら、遠慮せず寺橋に連絡するように…お大事に。」 「…はい、申し訳ありません。 お先に失礼致します。」 まるで逃げるようにして自席に戻ると、岡田さんに早退する旨を説明して謝罪した。 「あら…本当、顔色が悪いわ。 仕事のことは気にしなくていいから、明日も休むといいわ。 きっと頑張りすぎて疲れちゃったのね。 ゆっくり休んで体調を整えてからまた頑張ってよ。」 岡田さんに労うような言葉を掛けられたが、理由が理由だけに申し訳なさ過ぎて、下げた頭を中々上げられなかった。 ドアの外まで送り出してくれた係長に、こっそりと耳打ちされた。 「明日の休暇申請しておくからゆっくり休みなさい。 勿論、部長の弁当もお休みだよ。 じゃあね、お大事に。」 にっこりと微笑まれドアを閉められた。 物凄く、気を遣われてるのが分かる。 係長のせいではないんですよ。こんなことで休むなんて、社会人として最低だ。 落ち込む。凹む。俺ってこんな情けない奴だったなんて…自分でもショックだ。 はい、分かりました…何か美味しいもの食べて、ゆっくり寝よう… 半ばよろよろしながらエレベーターに乗り込むと、ほおっ…と息を吐いた。

ともだちにシェアしよう!