25 / 280

一目惚れ:side赤石(3)

「そんなこと言っても、履歴書の写真で一目惚れしたんだ。 絶対俺のものにする!…もう、うちに配属になるように手は打ってきた。」 「これだから人事を掌握する奴はえげつないんだわ…でもまぁ、良かったですね、どストライクっぽくて。」 「何とでも言ってくれ。 なりふり構ってなんかいられない。 こんな理想の相手に出会えるなんて、一生にあるかないかの出来事なんだぞ!!」 「…まぁ、仰るとおりですね…陰ながら上手くいくように祈ってますよ。」 「何かあったら協力してくれるよな?」 「ふふっ、当たり前じゃないですか。 give & take。 入社式が楽しみですね…でも、正直引くわー。」 「…ドン引きするなよ…あの字体は間違いない! 性格も従順で明るくて絶対良いはずだ! 顔も俺のモロ好みだし。」 「…社長の影響、物凄いですね…何かの新興宗教みたいですよ、ぷぷっ。 …俺もペン字教室に通おうかなぁ…」 「今更だろ? 今にお前にだって、素で愛し合えるお相手が現れるよ。 ひがむな、ひがむな。」 「慰めはいりませんよ。 俺はマイペースでいいんですって。 やっと、部長にも春が来たんですね。」 「あぁ…長い冬が終わりを告げそうだよ…」 「あの、妄想に浸ってるところ申し訳ないんですけど…そのコ、ノンケじゃないんですか?」 「ん?」 「だーかーらー…そのコ、なんですか?」 一瞬の沈黙の後 「…分からねぇよ…でも、絶対に俺のモノにする。」 「…はあっ…やっぱり陰ながら応援させていただきます…あっ!ヤバい、時間だっ! じゃあ、部長、また!」 ひらひらと手を振りながら、白瀬が行ってしまった。

ともだちにシェアしよう!