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一目惚れ:side赤石(4)

そうだよ、そうなんだよ。 どんなにかわいくっても、付いてるモノは付いてる立派な男性なんだよ。 俺がノーマルだったら…何度も何度も考えた。 でも仕方ないじゃないか! 女には1ミリも勃たないんだから! 物心ついた時から、同性に惹かれていた。 それは認める。 うちの家系は、どうやら代々が多いらしい。 伯父貴や従兄弟もソッチ系だ。 多産の一族だから、中に何人か“そういうの”がいても、ちゃんと家系は受け継がれていくらしい。 だから親戚関係なんて、は当たり前のことだと受け止めている。 だから、俺も…カムアウト済みだ。 お陰で結婚だ何だとせっつかれることもなく、悠々自適に暮らしている。 これは本当にありがたい。 自分で言うのも何だけど、なまじ俺がイケメンで文武両道だったのがいけないんだ。 おまけにずっと寮暮らしの男子校で。女っ気なんてミクロン単位で存在しなかった。 いたのは数学と古文、事務職に寮の…全員オバちゃんだけだったし。欲情する訳ない。 キャーキャー騒ぎ立てるのが、ジャニーズ系のかわいい男子ばかりだったし、あの十代のはち切れんばかりの欲望を満たすには、十分な環境だった。 お互いに割り切って身体の関係も持った。 取り巻きだった奴らとは、卒業と同時にお互い納得づくで綺麗さっぱり別れたから、その時の黒歴史は、若気の至りで、と心の奥にそっと忍ばせている。 ここ最近、『Bacchus(バッカス)』に行っても、軽く飲んでマスターと冗談を言い合って帰るのみ。 時々、白瀬と鉢合わせては飲んで愚痴を言い合う。 自分に甘く、努力しなかったから自炊もできない。必然的に外食ばかり。 『いつかパートナーと暮らすために』と早々に用意した、一人で暮らすには広すぎるマンション。

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