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一目惚れ:side赤石(5)
入社当初は営業に配属された。
俺の希望通りだった。
トップになろうとガムシャラに働いた。
そのうち、成績だって先輩達を追い越すくらいになり『エース』と呼ばれるようになっていた。
念願の海外勤務だって秒読みだったんだ。
ところが…訪問する先々で俺の言動や思いに関係なく、女共が勝手に俺を奪い合うような事態が多々発生してクレームが相次ぎ、上と相談の結果、俺は内勤になった。
そいつらを相手取って裁判を起こし、俺の全面勝訴で慰謝料も手に入れた。
けれど、俺のこれからの輝かしくなるはずだった人生に比べたら、そんな端金なんてクソだった。
悔しかった…本当に悔しかった。
就職してからは、一応結婚せねばならんか…という思いにもなったことがあったけれど、そんな気持ちは粉々に砕け散って消え失せた。
それで余計に女のことが大嫌いになったのかもしれない。
社長や幹部達は気の毒がって何かと目をかけてくれた。
俺もそれに応えるように社内業務の改革や効率化を進め、それらが認められて若年ながらも部長という地位になった。
『海外に送り出してやりたかったんだが…イケメンは何かと気苦労が多いなぁ』
との副社長の言葉に、永久に外に出ることはない、と悟った。
こんな枯れた生活だった…それがたった1枚の履歴書で、こんなに鮮やかな日々が送れるなんて!
早く実物に会いたいよ…
どんな声なんだろう。
どんな匂いがするんだろう。
抱いたら…どんな乱れ方をするのだろう。
目を閉じれば、彼が話し掛けてくる。
『部長!ご飯いかがですか?』
『2人でドライブに行きたいなぁ…』
『あっ、そんなこと…ダメですっ』
『やっ、あんっ、ああっ』
段々とエロい妄想になっていくのはご愛敬だ。
自然と股間に伸びていく右手は、本能の赴くままに上下運動を始め、そして…俺は白濁の液を吐き出す…そんな日々が続いた。
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