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一目惚れ:side赤石(6)
遂に迎えた面接日。
俺は朝からシャワーを浴びいつも以上に髪を整え“勝負下着&スーツ”に身を包み、気合いを入れまくっていた。
「おはようございます。」
「おっ、赤石君、おはよう!
何だか今日はやけに男前度が上がってるなぁ。」
「…社長…揶揄わないで下さい。」
「いやいや、ホントにそう思ってるんだよ。羨ましいなぁ。」
「そんなことより、未来の社運を担う大事な人材を見極めなくてはならないんですから。
今日は、おちゃらけはなしですよ。」
「はいはい。君には敵わないなぁ。」
社長と軽口を叩いていると、面接担当者が集まってきた。
「おはようございまーす。」
「おはようございます!」
営業と経営企画の部長達だ。
拳と拳を合わせてお互いに気合いを注入する。
こんなことができるくらいに、俺達は仲が良い。
出世を巡って足の引っ張り合いが横行する企業が多い中、中々珍しい光景だと思う。
気のおけない彼らとの面接担当で、気分的にも楽だった。
今年は社長を含めて4人で行う。
とはいえ、その中でも書類選考でほぼ決定している学生もいるから、後は本人を見て確定するのと、その他の面接者の合否を進めていけば良い。
さぁ、来い。若林弘毅。
顔では平静を装いながら、内心はドキドキが止まらない。
俺が緊張してどうするんだ。
…こんな俺を見たら、白瀬は喉を鳴らして笑うんだろうな。
『どんなコだったか後で知らせろ』なんてラインがあったから、返信するまで五月蝿く着信があるかもしれない。
「失礼致します。
面接希望の方、全員お揃いです。
よろしくお願い致します。」
社長秘書の黒原君の声にハッと我に返り、よそ行きの顔に切り替えた。
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