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一目惚れ:side赤石(8)

綺麗なお辞儀をして、彼が出て行った。 はあっ…思った以上の破壊力だった… 本物はやはり本物だ。 こっそり録音していたレコーダーの電源を気付かれないようにオフにした。 これで入社まで何度でも彼の声を聞くことができる! 寺橋や白瀬にバレたら『変態ですか!?』と罵倒されそうだ、いやきっと罵倒される。 あんな俺好みの理想の人間が現れるなんて… 入社式まで我慢できるだろうか。 それまで俺の理性が保てるだろうか。 それにしても何てキュートなんだ! あの瞳にずっと見つめられたい… この腕に抱きしめて愛しみたい… 余韻に浸る間もなく、社長が 「皆んな、お疲れ様! さてさて…じゃあ20分後に第一会議室に集合!」 その号令で俺達も一斉に立ち上がった。 経理の小島部長が 「今年の子は中々いいねぇ。 メンタル的に自立したしっかりした子が多かったように思うんだけど。」 それに答えるのは営業の中原部長。 「うんうん。 俺が推した池本君、やっぱり良かったよー。 5年待たずにこっちに帰してよ、ねぇ、赤石部長。」 「そうですね、考えときます。 俺のイチオシの若林君もいいですよ。 あの子は事務方向きです。絶対うちにもらいますから。」 何だかんだと主張しながら移動して、ついでに連れションもして、会議室へと向かった。 社長と俺達の意見を擦り合わせてみると、モノの見事に合否が一致した。 良かった…これで彼はだ。 知らずニヤける口元を引き締めながら、春の訪れを心待ちにするのだった。 後日…嬉々として採用通知を郵送した俺の元に、丁寧なお礼文が届いた。 今時の風潮なのか、内定を出した段階で届くようになっている。 相変わらず彼の人柄を表すような筆跡に、心躍らせる色ボケの俺なのだった。

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