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思いを告げる(13)
でも認めてしまったからなのか、俺は達也さんと思いを確かめ合って結ばれたことが嬉しくて、すっきりと爽やかな気分になっていた。
思いを寄せていた人も、自分のことを思ってくれていたなんて。
本当に好きな人と結ばれるなんて、何て幸せなことなんだろう。
同性だから、とか、上司だから、とか、そんなことどうでも良くなっていた。
達也さんだから惹かれて、達也さんだから身体も繋げ合えた。
これで一生分の運を使い果たした気がする。
そういえば…履歴書を見た時から、って言ってたよな…
ということは、達也さんの方が俺を見初めて思ってくれていたってことだよな!?
嬉しい。それは素直に嬉しい。
ん…待てよ…係長が『草食系』『愛玩系』って笑っていたけど…達也さんは俺の顔に恋した?
何か複雑だけど…こんな顔に生んでくれた親に、取り敢えずは感謝しよう。
逆上せかけて、身体を引き摺るようにして洗面所に出て、ふと鏡を見た瞬間ぎょっとした。
「ひえっ…何だ、これ?」
濃淡織り交ぜた赤いシルシが身体中に散らばっている。
くるりと振り向いて背中を映すと…はあっ…ため息しか出てこなかった。
健康診断終わってて良かった…頭に浮かんだのはまずそれだった。
「ワイシャツで隠れるかな…」
襟で隠れるギリギリのラインに、見えるのを避けるようにびっちり付いている。
これも愛されてる証拠かとひとり納得して、湧き上がる笑いに顔が緩んでニヤけるのを止めることができずにいた。
昨日着ていた下着はドロドロ、スーツもシワになって着るものがない。
洗濯、勝手にしてもいいかな。
それまで取り敢えず何か着るものを借りよう。
『ゴメンナサイ』とクローゼットを開け、サイズが違うけどスウェットの上下とボクサーパンツを取り出した。
それらを身につけて、もう一度俺は布団に潜り込んだ。達也さんの匂いに包まれながら。
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