58 / 280

思いを告げる(16)

あれから材料を無事手に入れた俺は、達也さんにメッセを送った。 『お疲れ様です。 晩ご飯、用意しますから夜のお弁当はいりません。 “いい子で”お待ちしています。』 ふふっ。どんな返事が来るのかな。 携帯をテーブルに置いて2、3分…着信音が響いた。 ふえっ、直電!? 「はい、もしも」 『弘毅っ!起きちゃダメじゃないかっ! 身体は?無理したらダメだ!』 「大丈夫ですって。 シップのお陰で随分楽になりました。 ありがとうございました。 あ、外には出ていませんよ。 材料はコンビニの配達を利用しましたし、流石に簡単にできるものしか用意できませんから。」 『…かえって気を遣わせたな…すまない。 無理だけはしないでくれ。』 「いいえ!俺がしたくてやってる事ですから! お仕事頑張って下さい!」 『おっ、おう…ありがとう。 今日は定時で帰るよ…じゃあ。 弘毅…愛してるよ。』 電話が切れた。 最後の『愛してるよ』の言葉が耳元に残っている…反則だ。後出しジャンケンだ。 俺、本当に部長に愛されてるんだ。 どうしよう。これ、マジだ。 嬉しいけど…幸せ過ぎて、怖い。 『愛してるよ』 『愛してるよ』 『愛してるよ』 何度もリピートする甘い言葉… 「俺だって、愛してます。」 口に出して急激に恥ずかしくなった。 今まで誰かと付き合っても、こんな甘くて切ない…相手を慈しむ気持ちにはならなかった。 「あーーーっ、恥ずかしいっ!」 大声を出して立ち上がると、腰がまだ痛かった… それでも今朝より少しマシになった身体を引き摺り、達也さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら、キッチンへといそいそと足を運んだのだった。

ともだちにシェアしよう!